CBS News 60 Minutes 2008年11月9日
有害電子廃棄物を追跡
概要の紹介

60 Minutesは、違法に輸出され、いまや中国の汚い秘密となっている
アメリカの有害電子廃棄物を追う

情報源:CBS News 60 Minutes, November 9, 2008
Following The Trail Of Toxic E-Waste
60 Minutes Follows America's Toxic Electronic Waste
As It Is Illegally Shipped To Become China's Dirty Secret
http://www.cbsnews.com/stories/2008/11/06/60minutes/main4579229.shtml

抄訳:安間 武 化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年11月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/e_waste/081109_CBS_e-waste.html

訳注:この記事は、2008年11月9日にアメリカCBS放送の番組 60 Minutes で放映されたビデオ『電子廃棄物の荒れ地(The Electronic Wasteland)(12分40秒)』紹介したものです。
 ここでは抄訳して概要をお伝えします。


 CBS 60 Minutes は地球上で最も有害な場所のひとつ、政府の役人や暴力団が見たがらない場所に皆さんをお連れする。そこは、空気を吸うことも水を飲むこともできない中国のある町、子どもの血液に鉛が添加されている町である。

 汚染の多くはアメリカの家庭、学校、事務所から来るのだから、そこを訪問するだけの価値がある。これは、グリーンであるべきとするあなたの最善の意図がアメリカから廃棄物の汚染場所に流れる地下の排水溝に注ぎ込まれることがあるというリサイクルについての話である。

 廃棄物汚染場所は、消費者がほしがる高価で高機能な製品を焼却した残骸が積み重ねられている。そして60 Minutes と記者スコット・ペレーは、この土地を仕切る暴力団はそのことを秘密にしておきたいと望んでいることがわかった。

 彼らは何を隠しているのか?答えはディジタル世代の第一原則−より新しいものがより良い−にある。テレビ、電話、コンピュータはすべて、いずれは陳腐になり、e-waste と呼ばれる電子ゴミになる。

 コンピュータは、こぎれいでハイテクの驚異のように見える。中には何があるのか?

 ”鉛、カドミウム、水銀、クロム、塩ビ。これらの物質のすべては、脳のダメージから肝臓障害、突然変異、がんにいたるまで毒性学的影響を持つことが知られている”と天然資源保護協議会(NRDC)のアレン・ヘルシュコビッツは説明した。

 ”e-wasteの問題は、それが世界中のどこでも自治体ゴミの中で最も急速に増大していること”であり、また毎年1億台の携帯電話が捨てられていると彼は述べた。

 デンバーのリサイクル・イベントに車が列を連ねて4時間待ちで、使用済みのコンピュータ、PDA、テレビ、その他の電子廃棄物を持ち込んだ。

 ほとんどの人は彼らの廃棄物は、ここアメリカで最新設備でリサイクルされると期待して、正しいことをしていると思っている。しかしこれらが実際にどこに行くのか、彼らは知る由もない。リサイクル産業はパンクしており、リサイクル業者のあるものは廃棄物を海外に輸出し、そこで内部の貴重な金属を求めて解体される。

 デンバーでのイベントを運営したコロラド州エングルウッドのエグゼクティブ・リサイクリング社はウェブサイトで、”あなたの e-waste は、ここアメリカで適切にリサイクルされる。他の誰かとは違い、単に投棄したりはしない”と公衆に約束していた。

 この方針のために、同社のCEO、ブランドン・リヒターはデンバー市から契約を取り、また事業を西部3州に拡大していた。

 この廃棄物を海外に輸出することにどのような問題があるのか問うと、リヒターはペレーに次のように告げた。”彼らは向こうでは低所得の労働者を使っている。したがって明らかに彼らはすべての物質を処理せず、物質のあるものを処理するための安全な設備を持っていない”。

 エグゼクティブ社は自社でリサイクルを行っているはずであるが、 60 Minutesは、同社のコロラドの構内から出る輸出用コンテナーに強い関心を持った。60 Minutes はCRTモニターを満載したひつのコンテナーを発見した。CRTは数ポンド(数キロ)の鉛を含んでいるので特に有害である。特別な許可なしにそれらを海外に輸出することはアメリカの法律に違反する。60 Minutes はコンテナー番号控え、そのコンテナーが船積みされるワシントン州タコマまで追跡した。

 そのコンテナーがタコマを船出すると、60 Minutesは7,459マイル離れた香港のビクトリア港まで追いかけた。

 デンバーを出発したそのコンテナーは、しばしばアメリカの電子ゴミをアジアに運ぶ不法な密輸ルートにある数千のコンテナーのひとつであることがあとでわかった。

 そのルートに同行した我々のガイドは、富める国が貧しい国に有害廃棄物を投棄することをとめることになっている条約の名をとった監視グループであるバーゼル・アクション・ネットワークの創設者ジム・パケットであった。パケットは倫理的なリサイクラーを認証するプログラムを運営している。そして彼は60 Minutesに 香港で何が積み上げられているかを示した。

 ”それは文字通り、膨大なコンピュータ・モニターの山である”とペレーは評した。”これらのコンピュータモニターのすべてを香港に輸入することは合法なのか?”。
 ”合法ではない。香港の法律からもアメリカの法律からも、そして中国の法律からも”まったく違法である。しかし、それが起きている”とパケット述べた。

以下概要を紹介

■かつてパケットが見つけた中国南部にある電子廃棄物のチェルノビルのような町グイユを訪問
  • グイユ市役所に行き、市長にリサイクル現場を見たいと頼んだ。
  • 市長は、我々はここでは本質的には歓迎されないが、コンピュータが解体されているショップを1か所だけ見せると言い、市長は個人的に我々を現場に連れていった。5分間だけ写真を取ることを許された。
  • グリーンピースはすでにグイユ周辺のリサイクル現場を撮影していた。女性が炭火で電子基板をあぶってチップを抜き出し、鉛半田を取り出していた。男性は金を回収するために酸を調合していた。汚染で町は荒廃していた。
  • 科学者らは、グイユは発がん性物質ダイオキシンの濃度が世界で一番高く、妊婦の流産が6倍多く、子どもたちの血中の鉛濃度が高いことを報告していた。
■グリーンピースの案内
  • リサイクル作業者はかつては小作農で、現在は生計を得るために一日8ドルで働いている。
  • グリーンピースは彼らの何人かを我々に紹介したが、彼らは我々に会うのをいやがった。手を火傷しており、空気が悪く肺をやられ咳がいつも出ると言った。
  • ペレーがなぜ仕事をやめないのかと問うと、彼は金のためと答えた。
  • ”先日ある労働者と話したときに、彼は困窮しているのでこの仕事にありつけて幸せだと言った”とペレーはパケットに告げた。
  • ”困窮した人々はどのような仕事でもする。しかし我々は彼らをそのような状況に置いてはならない。貧困か汚染をかという選択をさせてはならない”とパケットは述べた。
■リサイクル現場での襲撃
  • ペレー、パケット、60 Minutesチームはe-wasteを燃やした灰で真っ黒になった河原を通りかかり、テスト用のサンプルを採取した。
  • 数分後突然、数人の男たちが我々のカメラを襲った。市長はこの現場を見せたがらなかったし、ここで利益を上げているビジネスマンもそうであった。
  • 彼らは河原で採取したサンプルを奪ったが、我々はカメラを取り戻した。
  • 彼らは何を恐れているのか?
  • 彼らは見つけられたことを恐れているとパケットは述べた。これは密輸であり、違法である。
■デンバーに戻る
  • エグゼクティブ・リサイクリング社のCEOブランドン・リヒターはまだ、中国への廃棄物輸出の危険性を警告していた。”子どもがこれらの有害物質で死んだと聞いた”。
  • そこでペレーは、我々が彼のコンテナーを香港まで追跡したことを伝えた。
  • ”これは。あなたの会社の構内で撮ったコンテナーの写真だ。そして香港まで追いかけた”。どういうことなのだとペレーは訊ねた。
  • ”私にはさっぱりわからない”とリヒターは答えた。
  • 香港の通関はそのコンテナーを開けて、CRTがびっしり詰まっているのを発見した。あなたも知っているように、香港に輸出することは違法だとペレーは言った。
  • 私は知らない。それは私の施設で積み込まれたものではないとリヒターは答えた。
  • しかしそれは60 Minutesが撮影したものである。この疑問を発したのは我々だけではない。香港通関はこのコンテナーをコロラド州エングルウッドのエグゼクティブ・リサイクリング社に送り返してきたが、その内容物リストには”廃棄物:カソードレイチューブ(CRT)”と記載されていた。
  • アメリカの通関もこのコンテナーをX線撮影し、同じことを見つけた。
  • 60 Minutesはリヒターにこの証拠を見せた。彼の弁護士は我々に、”CRTはエグゼクティブ・リサイクリング社の名前で輸出されたが、同社の許可を得ていなかった”と述べた。
■米会計検査院(GAO)の報告

  • ここにもうひとつの事実がある。米会計検査院(GAO)は、米捜査官が外国の輸出業者を装っておとり捜査を行った。
  • エグゼクティブ・リサイクリング社は、1,500台のCRTコンピュータモニターと1,200台のCRTテレビをGAOの架空の香港ブローカーに提示した。
  • しかし、これはエグゼクティブ・リサイクリング社だけのことではなかった。GAOレポートは他の42のアメリカの会社が同様な意図を示した。

訳注1:関連記事・情報
訳注2:香港とマレーシアの使用済み電子機器の輸入規制


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