ザ・ネーション 2007年3月11日 特別報告の紹介
日本との貿易協定論争 緊張が高まる
情報源:The Nation, 11 March 2007
Japan trade frays tempers
Kamol Sukin
http://nationmultimedia.com/2007/03/11/headlines/headlines_30029006.php
http://www.bilaterals.org/article.php3?id_article=7403

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年3月12日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JTEPA/070311_JTEPA_Nation.html


 日本タイ経済連携協定(JTEPA)草案の反対者らは、スラユット・チュラーノン政府は同協定案中の二つの問題点に真剣に対処する必要があると主張している。

 第一に、タイはリサイクリング・ビジネスの出現で電子廃棄物と放射性廃棄物のゴミ捨て場になるであろうこと。第二にタイの農民は微生物特許の実施によって伝統的な有機農法技術にもっと多くの金を払わなくてはならなくなるであろうことである。

 非政府組織であるFTAウォッチは、同協定はタイの環境保護政策に影響を与えるのでタイ王国は被害を受けるとしている。

 ”例えば、もし汚染管理措置が日本の投資に脅威を与えるなら、それらは抑制されることになるであろうし、投資家らはタイ政府を訴えて裁判に持ち込もうとするであろう”とFTAウォッチのバントゥーン・セッタシロージュ氏は述べた。

 しかし、タイ側主席交渉担当官であるピサン・マンワプトは、日本との協定は、すでに締結したオーストラリア、ニュージランド、及び中国との協定よりもっと包括的であると述べた。

 JTEPAは経済協力協定と同様に自由貿易協定(FTA)である。JTEPA草案の下では、二国間で取引される物品の関税削減が数年の間に実施される。

 経済協力の9つの分野は、農林漁業、教育人材育成、ビジネス基盤、財務、情報通信技術、科学技術エネルギー基盤、中小企業、観光、及び貿易投資促進である。

 ”タイと日本の貿易額は年間約300億ドル(約3兆5,000億円)である。日本はタイで最大の投資国であり、年間100万人の優良な観光客を送り込んでいる。タイは日本の自動車産業の製造拠点のひとつである”とピサンは述べた。

 ”日本に輸出されるタイ産物品の約25%が農産物である。このことは重要である。この協定は、農場主を含んで多くのタイの農産物生産者のためになる”と彼は付け加えた。

 FTAウォッチはうまい話には罠があり、タイは綿密なリスク評価をを実施すべきであり、この国が本当にこの協定によって利益を得るのかどうか注意深く見る必要があると主張した。協定草案のいくつかの条項によって、有害廃棄物や放射性廃棄物のタイへの投棄、及び全国の有機農業者への微生物特許の影響等、大きな影響がもたらされると同グループは警告した。

 もしタイ政府が投資に脅威を与える政策を実施したら、投資家はタイ政府を訴えることができるとし、”投資についての我々のこの新たな発見が議論されていない”とバントゥーン氏は述べた。

 ”スラユット首相はJTEPAの内容全体を承認しないか、あるいはこの国を大きなリスクにさらすかの二つの選択があるだけである”とバントゥーン氏は述べた。

 ”最も重要なことは、JTEPAの審議と承認の手続きは容認できないということである。それは透明性がなく、協定発効後にその影響をを受けさせられる公衆の参加がないということである”と彼は述べた。

 FTAウォッチによれば、この協定が承認される前に政府が公聴会を開催したということで最初の段階は容認することができたが、その後の措置は、公聴会は明らかに単なる”ゴム印”であり、2月20日の承認のための”うわべの取り繕い”であることが分ったので、到底容認できない。
 ”一般的な公聴会のように、わずか半日開催されただけであった。公聴会である言われたこの会議の司会者であるチェルマサク・ピントン博士でさえ、この会議は公聴会ではないと述べて会議を開始し、同席した外務省担当官もそのことに同意した”とバントゥーン氏はその会議をふり返った。

 ”外務大臣は後に、この会議は公聴会であったと主張し、政府はこの信頼できない主張に基づいて協定を承認した”と彼は述べた。

 他の容認できない側面は2月15日に国家立法会議(NLA)のメンバーによって行われたJTEPAに関する討議であるとバントゥーンは述べた。

 ”その討議はJTEPA草案の全文が開示されることなく行われた。これは情報公開に問題がある”とチュラロンコーン大学の研究者で国家立法会議(NLA)のメンバーであるスリチャイ・ワンカエウ氏は述べた。

 ”私は、意見を述べる機会を求めて何十回も手を挙げたが、その機会は得られなかった”と他の国家立法会議(NLA)のメンバーであるトゥエンジャイ・ディーセスは不満を述べた。バントゥーン氏は、これは政府交渉団からの工作による結果であったと述べた。

 グローバリゼーション・タイ行動のカニカル・キツウォチャクルさんはFTAウォッチのウェブサイトの論説で、スラユット首相のJTEPAへの取組方法は、タクシン前首相がスワンナプーム空港で犯した過ちの繰り返しであり、それはタイ国民に将来、高いコストを負わせるものであると述べている。

 ”もしJTEPAが多くのリスクを抱えたまま承認されれば、それは第二のスワンナプーム・スキャンダルとなるであろう”と彼女は述べた。

 外務省のピサン氏はFTAウォッチは”心配し過ぎ”であると非難し、同グループはこの貿易協定の影響を”過大に見積っている”と主張した。

 ”我々は、注意深く協定草案を審議し、それはまた、ソムキャット・タンキトバニチ博士によって率いられるタイ開発研究機構(TDRI)チームによっても承認された。そこではなんら有害影響は見いだされなかった”と彼は述べた。

 ”有害廃棄物と微生物特許についての懸念に関し、我々は日本の交渉団と議論し、彼らは我々の理解を共有した。それは解釈の問題である。そこで我々はそれを明確にするよう要求し、彼らはそのことに同意した。”

 ”しかし、このことは我々の最近の交渉に反映するために最終的にはなっていない”と彼は述べた。

 ピサン氏は、本国での同協定に対する強い反対が交渉において彼により多くの交渉力を与えたと認めた。”最終的に日本の交渉者は、我々の論点に根拠があると認めた”と彼は述べた。

 ”しかし、もし日本が有害廃棄物や放射性廃棄物をタイに投棄するつもりがないなら、あるいは微生物特許を強いるつもりがないならば、なぜ単純に草案からこれらの項目を取り除かないのか?”とバントゥーンは問い返した。

 ピサン氏は、日本はこれらを取り除くことを望んでいないが、状況を明確にするよう求めたと述べた。”それは妥協である。交渉においては、我々が望む全てを必ずしも得ることができるというわけではない”とピサンは述べた。

 バントゥーン氏は、タイ開発研究機構(TDRI)のレビューについてのピサン氏の主張を非難した。ソムキャット氏は草案チームの顧問なのだから、彼はTDRIが承認したことには驚かないと述べた。”それは、いわゆる利害の抵触ではないのか”と彼は述べた。

 先月、バントゥーン氏はスラユット首相に議論のある全ての点が解決されるまで同協定に急いで署名しないよう要求した。

 ”私は草案にはタイに損害を与えるような多くのことがまだ隠されていると信じている。我々はそれらのことについて知らなくてはならないし、我々が署名できる最良の協定を求めるために交渉を再開する前にリスク評価を実施しなくてはならない”と彼は述べた。

 ピサン氏は、もし協定が政府が望むよう来月に調印されなければ、タイは貿易の機会を失うであろうと警告した。彼は、日本の投資はベトナムやその他の地域の競争相手に向けられてしまうであろうと述べた。

 国家立法会議(NLA)のスリチャイ氏はバントゥーン氏の意見をを支持した。彼は政府は調印を急ぐべきではなく、この協定についてもっと公衆との議論を持つべきであると述べた。

 ”この政府は暫定的な政府である。その正当性を懸念すべきであり、長期的に国民の生活に影響を与えるような議論ある決定をすべきではない”とグローバリゼーション・タイ行動のカニカル氏は述べた。



化学物質問題市民研究会
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