JPEPAの発効を阻止する連合 プレスリリース2007年7月16日
元フィリピン副大統領 物議をかもす日比経済協力協定を非難
情報源: Mon, 16 Jul 2007
Magkaisa Junk JPEPA Coalition Press Release
Former Philippine Vice-President Rips
Controversial Japan-Philippine Trade Deal
http://www.ban.org/ban_news/2007/070716_guingona_rips_jpepa.html

掲載日:2007年7月18日(7月19日修正/追加)
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JPEA/press_conference_070716.html


【2007年7月16日】元フィリピン副大統領テオフィスト・ギンゴナ Jr は本日、日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)を批判して、JPEPAを一方的で日本の権益に不公平に有利であると述べた。

 ”JPEPAの不公平で一方的な条項は、自身の運命を決めるべきフィリピン人の権利を侵害するものである”と、JPEPAの発効を阻止する連合(Magkaisa Junk JPEPA Coalition)がミリアム大学で開催した記者会見でギンゴナ氏は述べた。

 ギンゴナ元副大統領は、他の国もまたJPEPAの下に日本に与えられた特権を将来の二国間貿易協定の下にフィリピンに要求するかもしれないという懸念を強く表明した。”JPEPAにならい、他の諸国も世界貿易機関(WTO)の下で同様な不公平な特権を引き合いに出すことになるように見える。”

 フィリピンは現在、アメリカ、中国、韓国、オーストラリア、ニュージランド、インドと様々な段階ではあるが二国間貿易協定の交渉を行っているところである。

有害廃棄物

 有害廃棄物貿易に関する議論ある条項と廃棄物をJPEPAの関税削減リストに含めることに言及して、ギンゴナ元副大統領は、もし実際に廃棄物貿易をJPEPAが考えていないなら、なすべき適切なことは、そのような貿易を認めるような条項を削除することであると述べた。

 ギンゴナ元副大統領は、”日本の3R政策(Reduce, Reuse and Recycle)は、製品の寿命が尽きたらそれを廃棄物としてフィリピンに投棄するものであるとしてJPEPAを非難した。

 JPEPAの中で最も議論のある条項は第29条であり、そこでは廃棄物の関税を削減している。フィリピンへ関税ゼロで持ち込まれる廃棄物には、焼却灰、医療廃棄物、下水汚泥、医薬品廃棄物、及び都市ゴミなどがある。

JPEPAにおける二級職業人

 同じ記者会見で、フィリピン看護協会(PNA)代表のリー・パクイズ博士もまたフィリピン人看護師/介護福祉士は日本では二級職業の地位に置かれるとしてJPEPAを厳しく非難した。
 彼女によれば、フィリピン人看護師/介護福祉士は、日本の厚労省と日本看護協会(JNA)によって作られた条件の下で、日本語の国家資格試験、それを受験する日本人にですら難しい試験、に合格するまでの少なくとも3年間は単なる見習いなので、日本においては二級職業人と位置づけられる。

 パクイズ博士はまた、フィリピン人看護師/介護福祉士の日本への入国に反対する日本看護協会(JNA)のよく知られた敵意を指摘した。

 ”日本の労働市場を開放するということを見せかけに、JPEPAは実際には、我々の看護師/介護福祉士に挫折、差別、そして性産業による搾取をももたらすことになるかも知れない”とパクイズ博士は付け加えた。

 パクイズ博士は、不道徳な日本のナイトクラブがJPEPAの下に性労働者としてフィリピン人の(女性)看護師/介護福祉士を夜のアルバイトに勧誘するかも知れないと懸念していた。

 2005年に日本は「人身取引対策行動計画」の実施を開始した。以前に日本の性産業で搾取されたり紹介された人々を含む海外からの芸能人(OPAs)に厳しい要求を課した結果、同計画は2004年末の74,480人という高い数字から、2005年末の42,586人、そして2006年末には10,615人と海外からの芸能人数は劇的に減少した。

 ”我々の看護師/介護福祉士は、フィリピン経済を支えるためにすでに莫大な送金をしている”とパクイズ博士は述べた。政府は、国内の看護師の尊厳を保ち報酬だけを支給する現在の法律を実施しなくてはならない。”

 パクイズ博士は、公衆衛生労働者の報酬は給与等級15以下であってはならないとする2002年看護師法(RA 9173) )に言及した。また、パクイズ博士によれば、フィリピン人看護師の労働条件を向上させるための公衆衛生労働者憲章(RA 7135)は、発効後15年経過したが、いまだに十分には実施されていない。

不公平な貿易

 同記者会見で、市民行動党(アクバヤン党)のリサ・ホンティバロス代表は、JPEPAの交渉でフィリピンの不利な立場を安売りする重要な糸口は、日本には合計38の関税区分(tariff lines)を除外することができたのに、フィリピンが除外できたのはわずか6区分だけであると述べた。

 ”フィリピンがJPEPAを発効しようとするひとつの主要な根拠は、日本が我々の看護師/介護福祉士に労働市場を開放するであろうという期待である”とホンティバロス代表は述べた。”現在、明るい期待が持てそうなことは日本がフィリピンの看護師/介護福祉士らの入国の制限を開始したことである”。

 ”代替的法サービスによる会話と権限付与のイニシアティブ(IDEALS)”の弁護士タニア・ラットは、JPEPAはせいぜいフィリピンにほんのわずかな利益しかもたらさないと述べた。”最小で投機的で短期間の利益との引き換えに、政府は我が国経済の長期的な発展を安売りした”とラット弁護士は述べた。

 彼女は、フィリピンを外国の直接投資にとって比較的魅力のない地域にしているまだ目の向けられていない問題があり、フィリピンの農業分野の不振、農民の退去、地方産業の閉鎖が全て現実になるなら、JPEPAの下で吹聴されるような投資の流入は不確かであると彼女は付け加えた。

 ”我が国の憲法は、一般福祉を提供し平等と互恵主義に基づき運用する貿易方針を追及すべきとしている”とラット弁護士は述べた。”我々には日本の廃棄物への物乞や召使の以上の価値がある。”

上院の同意が必要

 2006年9月にグロリア・アロヨ大統領及び日本の当時の小泉純一郎首相によってヘルシンキで署名された互恵貿易条約、JPEPAは上院で批准される必要がある。それは、アロヨ政権と、野党が支配することとなった新たな上院との間の関係をテストする第一段階であると広く見られている。

 何人かの上院議員はすでにJPEPAに強く反対すると言明している。上院議員ローレン・レガルダは、”JPEPAの利益は我々の環境の破壊に比べれば、全く無視できるほど小さなものであることは明らかである。もったいぶった言い方をせずに、この条約はお払い箱にすべきである”と述べた。

 上院議員ピア・ケイエターノは上院はJPEPAを討議する前にバーゼル禁止条項をまず批准すべきであると要求した。”バーゼル禁止条項の批准はフィリピンが、日本のみならず他の産業先進諸国からの有害廃棄物の投棄場所になるのを防ぐために大いに役に立つであろう”と彼女は強調した。

 バーゼル条約の補足であるバーゼル禁止条項は、廃棄目的であろうとリサイクル目的であろうと、有害廃棄物の取引を禁止することによって、同条約の抜け穴をふさぐものである。


Richard Gutierrez, JD, Ll.M.
Director
Basel Action Network, Asia-Pacific Region
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http://www.ban.org


参考資料:


化学物質問題市民研究会
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