2007年2月11日 市民団体共同声明
日本政府は開発途上国との経済連携協定に廃棄物を入れるな
中古品・廃棄物には「国内処理原則」を厳格に適用せよ

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環境・健康・人権市民団体
掲載日:2007年2月11日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JPEA/EPA_Jpn_NGO_Joint_Statement_070211_jp.html


内閣総理大臣 安倍晋三 殿
外務大臣 麻生太郎 殿
環境大臣 若林正俊 殿
経済産業大臣 甘利 明 殿

 私達は環境問題、健康問題及び人権問題に取り組む市民団体です。

 我が国はマレーシア、シンガポール、フィリピンとの二国間経済連携協定(EPA)に調印しており、インド、インドネシア、タイ、ベトナム、その他のアジア諸国とも同様な協定の調印に向けて交渉中です。

 私達は、これらの経済連携協定の関税削減リストに有害廃棄物が含まれており、バーゼル条約でその移動が厳しく管理されている有害廃棄物の途上国への輸出の道を開くものであるという重大な懸念を抱いており、有害廃棄物を経済連携協定に含めることに強く反対します。
 アジア諸国の市民や団体からも特に強い懸念が示され、反対の抗議行動が行われています。

 昨年、我が国の国会で採択された日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)に関し、昨年12月5日の参議院外交防衛委員会の質疑で、「関税削減リストから全ての廃棄物を削除すべきではないか」、「有害廃棄物は絶対輸出しないとの約束が必要ではないか」との質問に対し、政府答弁は「バーゼル条約とJPEPA23条/GATT20条(人・動物・植物の健康・生命の保護に必要な措置)に国際的な約束がある」とはぐらかしました。

 しかしJPEPA第4条の「法令の見直し」は、「・・・一層貿易制限的でない態様で対応することができる場合には、その法令を改正し、又は廃止する可能性を検討する」としており、有害廃棄物の輸入を規制するフィリピンの既存の法を改正して有害廃棄物の貿易自由化をはかることができる仕組みが用意されています。

 日本政府は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(1989年)」には批准していますが、リサイクル目的であっても先進国から途上国に有害廃棄物を輸出することを禁止する「バーゼル禁止修正条項(1995年)」には、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージランドなどとともに強硬に反対しており、批准していません。

 2005年4月に東京で開催されたG8/3R閣僚会議において、"物品・原料の国際的な流通に対する障壁の低減"を打ち出し、資源の国際循環という名の下に、有害物質を含む中古品や廃棄物を開発途上国へ輸出して、製品としての寿命をほとんど終えた中古品や廃棄物の処分を途上国に押し付けようとしています。

 経済産業省の「平成18年度『循環資源の輸出入のための二国間・多数国間協定等の現状及び課題に関する調査委託事業』に係る委託先の公募について」の調査目的の記述は、国が二国間経済連携協定を使って中古品・廃棄物貿易を推進しようとしていることの明白な証拠であり、またバーゼル条約があるために廃棄物の移動が円滑に進まない場合があるとして、バーゼル条約崩しの意図を露骨に示しています。

 バーゼル条約及びわが国の廃棄物処理法においても、廃棄物の「国内処理の原則」を明確に規定しています。それにもかかわらず、わが国で発生する廃棄物の処理を途上国に押し付けることで、自国の廃棄物問題の軽減をはかり、その結果、途上国の人々の健康と環境を脅かすということは許されません。

 大量の廃家電や廃パソコンが再使用の名目で中古品として開発途上国に輸出されながら、実際にはその多くが使用されずに資源回収だけが不適切な作業環境で行われ、作業者の健康と環境を損ねていることは周知の事実です。

 そこで、私たちは日本政府に対して、以下のことを求めます。
  1. アジア地域内を含む途上国との二国間経済協定に廃棄物を含めない。
  2. 3Rイニシアティブから"物品・原料の国際的な流通に対する障壁の低減"を削除する。
  3. バーゼル禁止修正条項を批准し、リサイクル目的を含めて有害廃棄物の途上国への輸出を禁止する。
  4. 再使用を目的とする中古品の輸出については性能基準を設定して輸出前検査を行う。
  5. 廃棄物及び中古品の処理には厳格に「国内処理の原則」を適用し、開発途上国での処理に依存するような政策をやめる。
  6. 廃棄物の発生削減を最優先として、国内循環を基本にした3R政策を推進する。
以上

賛同団体(順不同)

化学物質問題市民研究会
フォーラム平和・人権・環境
脱WTO/FTA草の根キャンペーン実行委員会
全国労働安全衛生センター連絡会議
農民運動全国連合会
化学物質過敏症支援センター
市民がつくる政策調査会
ATTACジャパン
止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク
止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク
関西フィリピン人権情報アクションセンター
ジュビリー関西ネットワーク
フィリピンのこどもたちの未来のための運動 (CFFC)
東アジア環境情報発伝所
ATTAC京都
環境フォーラム市民の会(豊中)
バーゼル・アクション・ネットワーク (BAN) 米国

問い合わせ:
安間 武(化学物質問題市民研究会)
TEL/FAX: 045-364-3123 e-mail: ac7t-ysm@asahi-net.or.jp



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