BAN & Toxics Link 2007年11月14日 プレスリリース
インドの廃棄物法案 インドが世界の廃棄物の行き先になる
健康と環境より廃棄物貿易を推進

情報源:BAN Toxic Trade News / 14 November 2007
Proposed waste law to officially turn India into global waste destination
Draft promotes waste trade over health and environment
BAN & Toxics Link Press Release

http://www.ban.org/ban_news/2007/071114_global_waste_destination.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年12月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/071114_Waste_Law_India.html


電子回路基板からチップを抜き取るインド女性。提案されているインドの法案は世界中からの有害電子廃棄物の輸入への門を開く。
 2007年11月14日(ニューデリー)− 廃棄物に関する法案において言葉のごまかしで、リサイクルの名の下に、インド政府は世界の有害廃棄物の投棄のための道を開き、インドの環境と市民の健康にかつてない被害を及ぼすかもしれない−と環境活動家らは警告した。これは、最近発表された”有害物質(管理、取り扱い、及び国境を越える移動)法案 2007年”に関して、廃棄物問題に取り組んでいる世界的な専門家と市民社会の指導者らによってなされた声明である。

 新たに提案されたインドの有害廃棄物管理法案は、確立され、科学に基づいた廃棄物の定義があるにもかかわらず、有害なリサイクル産業側に味方して、リサイクルされる廃棄物は埋め立てられる廃棄物より有害性が低いと見なそうとしていると環境活動家らは述べている。

 ”廃棄物 (waste)”、”処分(disposal)”、安全なリサイクル(safe recycling)”についての国際的な定義を無視するインド政府の政策により、間違いなく世界の廃棄物が我が国の海岸に押し寄せることになるであろうとトクシック・リンク(Toxics Link)のディレクター、ラビ・アガワルは述べた。
 ”皮肉にもこれは”リサイクル”という名の下に行われている”と彼は付け加えた。
 現在、最終段階にある”有害物質(管理、取り扱い、及び国境を越える移動)法案 2007年”は、”有害廃棄物(hazardous waste)”を”有害物質(hazardous material)”として定義し直すことを提案している。そのように定義を完全に変えることは、インドには順守する義務があるバーゼル条約の国際ルールに違反するものである。

 ”それは不適切であるばかりでなく、インドがバーゼル条約を実施するふりをして同条約の意図を覆そうとすることは違法である”と同条約を監視する国際的な組織であるバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)のジム・パケットは述べた。

 バーゼル条約及び国際法からの逸脱の例のいくつかを挙げると次の通りである。

  • インドは、通過国は有害廃棄物の全ての積荷について事前同意通報(PIC)を受けなくてもよいと決定した。

  • インドは、廃棄物の河川、海洋、及び湖への投棄、又は焼却は処分(disposal)とは見なさず、したがって水環境へ投棄される、又は焼却されるものは廃棄物ではないと決定した。

  • ”環境的に適切な管理”という国際的な定義は、有害成分による汚染が60%以下である限り安全である!という”リサイクルの安全”という新たな定義を持ち出すことにより無視されている。

  • 医療廃棄物および都市ごみはバーゼル条約の対象となるものであるにもかかわらず、インドは上記の法律から免除した。」

  • インドは、リサイクルではなく処分のためのダイオキシン輸入を許可するように見える。

  • 廃棄アスベスト輸入は、他の物質(例えば廃船)を汚染していないかぎり禁止される。
    (訳注:アスベストがインドに輸入される多くの場合は、廃船やそのほかのものに混じって、そのほかのものを汚染して輸入されるのに、その場合の輸入は禁止されず、一方、アスベストをピュアな状態で輸入するケースは滅多にないのに、その場合にのみアスベスト輸入が禁止されているという意味)

  • 先進国からの有害廃棄物の全ての輸入を禁止するバーゼル禁止修正条項を実施していない。

  • アメリカのようなバーゼル条約非締約国との廃棄物貿易が違法であると認めていない。

 環境団体によれば、この法案はまた、既存の有害廃棄物の”管理とリサイクルの規則”を大幅に変更し、最高裁の判決に真っ向から反抗している。この法案はインド国憲法に違反する。(憲法には、州の人々の健康と環境を守る義務を定める条項がある。)なぜなら、この法律は人間の健康と環境を守る環境法ではなく、有害廃棄物の貿易を促進する法だからである。

 このことは、インドが現在、様々な経済連携協定を交渉中であることを考えれば、非常に重要である。例えばインドは現在、新時代の経済連携協定(EPA)と呼ばれるものを日本と交渉中である。

 日本の他のアジア諸国との経済連携協定は一貫して有害廃棄物の貿易自由化を含んでおり、もし、廃棄物が商品であると見なされるなら、それらは自由に取引され、インドは日本の廃棄物の受取人となるおそれがある。

 最後に、環境活動家らはこの法律が公衆が関与しないままに最終段階に達したというプロセスを非難している。

 ”主要な環境法の重要な修正が市民社会との議論や協議なしに提案されている。市民社会と司法は10年間以上、この問題に深く関わってており、彼らの懸念を無視することは、政府が一握りの大きな影響力を持つ産業界だけの代理となっていることを示すことになる”とアガワルは述べた。

 ”インドは国内で発生する廃棄物を処理する能力すらまだ持っていないのに、有害廃棄物と電子廃棄物の輸入のためにその国境を開いていおり、それは歪んだ政府の政策であることを示している”と付け加えた。

 編集者のための注記:BANと Toxics Linkはこれらの懸念を強調した詳細なコメントを環境森林省に共同で提出した。

 この法案へのコメント及び提案は2007年11月28日まで受付られる。

更なる情報 http://www.toxicslink.org 及び http://www.ban.org

連絡先:
Ravi Aarwal 0981007355, Parvinder Singh 9811703798 Jim Puckett, of Basel Action Network, in Seattle, +1.206.652.5555, email: jpuckett@ban.org.



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