BAN プレスリリース 2007年3月7日
透明性と電子廃棄物取引の告発を欠いた
StEP プログラムに関するBANの声明


情報源:BAN Press Release 7 March 2007
BAN Statement on StEP Program's Lack of Transparency
and Refusal to Denounce E-Waste Trafficking
http://www.ban.org/ban_news/2007/070307_refusal_to_denounce.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年6月6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/070307_BAN_Statement_on_StEP.html

【2007年3月7日シアトル、アメリカ】 シアトルを拠点とする有害廃棄物貿易監視団体であるバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)は、新たに立ち上げられたマルチステークホールダ(多数利害関係者)が関与すると称する国連プログラム StEP (Solving the e-Waste Problem)は、電子廃棄物の開発途上国への世界的な投棄を告発していないことに重大な懸念抱いていることを強く表明する。実際、StEP プログラムは、現在世界中で起きている電子廃棄物貿易の大部分は国連のバーゼル条約の下で違法であるということを指摘しておらず、この重大な違法取引を告発していない。BANによれば、このプログラムは多くの優れた面を持っているが、残念ながら、世界の有害電子廃棄物を管理するために、開発途上国における技術的改善を行うという名目で正当化して、安い外国の労働力の利用の継続を推進するよう設計されているように見える。

 さらにBANはこのStEP プログラ創立の一員になることを繰返し申し出たにも関わらず、StEP プログラムは電子廃棄物が世界中で不法に取り引きされていることを告発していないとBANが 批判した後、BANはプログラムへの参加に招かれなかったことを指摘しつつ、このプログラムにはバランスと透明性が著しく欠けていることを非難した。さらにBANは、バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)、コンピューター・テイクバック・キャンペーン、シリコン・バレー・トクシック連合、グリーンピースなど世界中で電子廃棄物の問題に主導的に取り組んでいるNGOsのほとんどが、あてつけがましくもいわゆる多数利害関係者プログラムの一員とされなかったことを指摘した。さらに、世界の電子廃棄物問題に関する傑出した政府間組織であるバーゼル条約は StEP プログラムへに公式に関与していない。

 ”StEPプログラムは世界の電子廃棄物問題への包括的なアプローチを求めると主張しているにもかかわらず、StEP のウェブサイト(訳注1)には一言もバーゼル条約についての言及がないのは全く悲しむべきことである”とバーゼル・アクション・ネットワークのジム・パケットは述べた。”先進国の中でバーゼル条約を批准していない唯一の国であり、途上国への有害廃棄物の輸出を禁止するバーゼル条約の禁止修正条項に反対していることが広く知れ渡っているアメリカの米環境保護庁(EPA)は、このプログラム参加するメンバーの中で、唯一の国家政府環境機関はであるということは非常に注目すべきことである。StEP はバーゼル条約の環境正義原則を損ねようと望む人々の隠れ家であり、環境正義を守ろうとする人々を遠ざけている。我々はいつかそのようなことを言わなくてもすむ時が来ることを望むが、現在のStEPプログラムは解決ではなく、世界の廃棄物問題の一部をなしているように見える。”

StEP プログラム策定プレスリリース訳注2が言わないこと

  • BAN、グリーンピース、及びバーゼル条約事務局は全てぞれの異なる場で、StEPは既存の国際法の義務に反しているにも関わらず、開発という名の下に途上国に有害廃棄物を輸出することを擁護しているように見えるという懸念をもち、StEPに正面から取り組んできた。
  • BANは何ヶ月も前に、StEPは少なくともバーゼル条約とその決議を支持すると表明するよう求めた。国際法を支持することなど議論されるべきことがらではないという事実にも関わらず、StEP それを拒否している。
  • 一年前、BAN は StEP プログラムにBANを参加させることを求め、なぜ開発途上国における電子廃棄物の投棄と有害な管理の問題を最初に提起した組織が招かれないのかという疑問を提起した。我々は答えになっていない回答を受け取り、参加へ招かれなかった。
  • StEP は、参加しようとするNGOはが創設者らによって承認されるべきこと(今、創立者になることは遅すぎる)及び2,000ユーロ(約34万円)を支払うべきことを今になって知らされた。これでは開かれているとはとても言うことができず、関心ある団体を締め出すように設計されているように見えると言わざるを得ない。
  • 国連環境計画(UNEP)の支持があると主張するが、StEP はバーゼル条約締約国からの支持も是認も受けていない。バーゼル条約は電子廃棄物を直接扱うUNEPの組織である。
  • StEPのメンバーである国家政府機関は、先進国から途上国への全ての有害廃棄物の輸出を禁ずるバーゼル禁止修正条項にあからさまに反対していアメリカの連邦政府機関EPAだけである。アメリカはバーゼル条約を批准していない唯一の先進国である。
  • BANは、創立者らにStEPの資金供給源を明らかにして透明性を求めたが、現在までその回答はない。
  • 環境正義の原則は、貧しいからといって人々が世界の有害廃棄物、リスク又は危害による負担を不公平に負わされるべきではないと述べているが、電子廃棄物の管理によって満たすことができるディジタル・ディバイド(情報格差)及び開発途上国での雇用の必要性を持ち出すStEPの美辞麗句は、電子廃棄物の開発途上国への輸出を促進するための仮面であるように見える。
  • 現在の電子廃棄物管理は、開発途上国が不公平に負わされてはならない大きなリスクとコストを伴わずにはすまない。バーゼル条約は有害廃棄物は可能な限り発生した国で管理されるべきことを求めている。

訳注(参考資料)

  1. StEP Website
    http://www.step-initiative.org/

  2. 国連大学プレスリリース 2007年3月7日
    電子廃棄物リサイクル、有価物回収の世界基準策定
    国連と産業界などが協力
    貧困国で焼却されることの多いハイテク廃棄部品へのニーズの高まり
    年間の電子廃棄物量をダンプカーに積むと、地球半周分に
    http://www.yasuienv.net/MRStEP.doc
    http://www.step-initiative.org/getfile.php?id=63&file_id=2

  3. JANJAN 2007/04/01
    E-waste問題解決につながるか?!“StEP”スタート (廣瀬稔也 氏)
    http://www.janjan.jp/world/0704/0703300718/1.php

  4. 国連大学国連環境計画国連貿易開発会議とともにStEP イニシアチブを創立したメンバー

    民間セクター
    . AER ワールドワイド(米国)
    . シスコシステムズ(米国)
    . データサーブ・リミテッド(英国)
    . デル(米国)
    . アースプロテクション・サービシス(米国)
    . エリクソン(スウェーデン)
    . フレクション(オランダ)
    . ヒューレット・パッカード(米国) . マイクロプロ(アイルランド)
    . マイクロソフト(米国)
    . フィリップス CE(オランダ)
    . プロモーションチーム・ウェツラー(ドイツ)
    . ライファー・エンバロメンタル(米国)
    . SIMS-MIREC(オランダ)
    . 台州.合天地(中国)
    . ユミコア・プレシャスメタル・リファイニング(ベルギー)

    政府機関
    . ドイツ技術公社(GTZ、ドイツ) . スイス経済省経済事務局(SECO、スイス)
    . ミネソタ州汚染管理局(米国)
    . 米国環境保護庁(US-EPA、米国)

    学術研究機関
    . 中国科学院エコ環境科学研究センター(中国)
    . 連邦材料試験研究所(EMPA、スイス)
    . フラウンホーファー信頼度・マイクロインテグレーション研究所(FHG-IZM、ドイツ)
    . フランス国立電気通信大学(INT、フランス)
    . GAIKER 財団(スペイン)
    . 韓国地学鉱物資源研究所(KIGAM、韓国)
    . マサチューセッツ工科大学(MIT)マテリアル・システムズ・ラボラトリー(米国)
    . 中・東欧地域環境センター(REC、ハンガリー)
    . ウィーン工科大学(オーストリア)
    . デルフト工科大学(オランダ)
    . カリフォルニア大学バークレー校、グリーンデザインと製造に関するコンソーシアム(米国)
    . メルボルン大学工学部(オーストラリア)

    非政府機関
    . INFORM(米国)
    . 持続可能な管理のための3P コンソーシアム(ドイツ)
    . エコ研究所(ドイツ)

    その他
    . AEA テクノロジー(AEAT、英国)
    . 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所(JETRO-IDE、日本)
    . ライファー・エンバイロメンタル(米国)
    . マイクロインダストリーズ・ディベロプメント・アシスタンス&サービシス、MIDAS(バングラデシュ)
    . タイ電気電子インスティテュート(EEI、タイ)


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る