BAN 有害廃棄物ニュース 2006年8月8日
プレスリリース

ブルーレディー 解体のためにアラン海岸に乗り上げ
インドは船舶解体業者のビジネスのために
国際法とインド最高裁の命令を無視し続ける

情報源:
Toxic Trade News / 15 August 2006
Press Release
India Continues to Ignore International Law and own Supreme Court Order
to Keep Shipbreakers in Business
http://www.ban.org/ban_news/2006/060815_india_continues.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年8月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/SS_Norway_beached.html


 【2006年8月15日ニューデリー】 かつての外洋船 SSノルウェー(最近ブルーレディと改名)は、環境団体や人権団体による同船の解体を阻止するための継続的なキャンペーンにもかかわらず、インドのアラン船舶解体場の海岸に乗り上げた。同船は1,240トンのアスベストと数百トンの有毒で残留性の高いPCB類で汚染された物質を含んでいると考えられている。アランにはこれらの有害物質を適切に取り扱うための施設がないことはよく知られている。

 インドのグジャラータ州アランの船舶解体場は、労働条件が不安全であることで悪名が高い。これらの解体場では、十分な防護もない労働者が手にした溶断用トーチで引き起こされる可燃性残渣油による爆発や火災で1日に1人の労働者が死亡していると見積もられている。日払いの賃金を手渡しでもらう多くの労働者らはまた、船舶解体作業中に有害な化学物質やアスベストに暴露して石綿症やがんなどの慢性的で末期の疾病により死亡している。

 インドも加盟国であり、有害廃棄物の国境を越える移動を厳格に管理する国際バーゼル条約は、これらの廃棄物の先進国から開発途上国への輸出を全面的に禁止している。この理由のために、インド最高裁は2003年にインドに入港する前に全ての解体用船舶は、まず適切に登録され、事前に全ての有害物質を除去して浄化されなくてはならないと要求した。しかし、今回は最高裁は沈黙を守ったままである。

 ブルーレディの受益船主であるスタークルーズ社は有害な船舶をインドの海岸で解体すると環境及び人権に関わる大災害をもたらすということについて再三再四知らされていた[1]。スタークルーズ社は初めは同船は解体されるのではなく海に浮かぶカジノとして再利用される、すなわち同船はバーゼル条約の下の廃棄物ではないと主張して巧みに同条約を故意に回避したと信じられている。一方、インド環境森林省は国際法を無視しているように見え、アラン海岸への乗り上げを速やかに認めた。同船は鉄材の回収では州政府に530万〜640万ドル(約6億〜7億円)の収入をもたらすと予測されている。

 ”ブルーレディの物語は、貧しい人々を害することでお互いに利益を得る二人の国際的犯罪者の事件として終わる”−と国際的な廃棄物取引の監視団体であるバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)の代表であり、NGOプラットフォームのスポークスマンであるジム・パケットは述べた。”まず第一に、輸出する前にアスベストやPCB類の除去のために金を一切使わずインドの労働者に害を及ぼすスタークルーズ社であり、第二に、グジャラート州鉄鋼ロビーに最も貧しい人々の健康を売り、スタークルーズ社を支援し、けしかけたインドの政治家たちである。”

 ブルーレディの海岸乗り上げは、環境省、中央汚染管理委員会、及びグジャラート海事委員会の担当者からなる技術委員会によって簡単な検査が行われた後、2006年8月1日に許可されたと報告されている。検査チームはPCB類とアスベストの存在は認めたが、それらがどの位の量なのか又は船内のどこにあるのかについて特定しなかった。彼らはさらに、アランがそのような危険な物質を取り扱うために、また労働者を保護するために十分な技術的な能力を持っているのかどうかについて言及しなかった。それどころか同委員会の結論[2]は、アランでは船内に見出された全ての危険物質を取り扱うことができるというものであった。
 NGOプラットフォームは先週この技術委員会報告書についての致命的な欠陥と国際法への準拠の欠如に言及した批判文[3]を発表したが、海岸への乗り上げを急いで、その批判文は2003年10月の最高裁命令とともに無視された。
 ブルーレディは、フランスの空母クレマンソーが輸出の違法性について国際的な非難をを浴びてインドからフランスに呼び戻されて以来、アラン解体場に解体のために来た最大の船舶である。

 ”フランス政府は最後の土壇場でアスベスト汚染のクレマンソーをインドに持ち込むことは悪であり違法であると認めたのに、インド人を守ることが仕事である我々自身の政府がその任務を果たさないということは皮肉なことである”−とアスベスト禁止ネットワーク・インドのゴパール・クリシュナは述べた。”この一時的な後退にもかかわらず、違法的及び非倫理的な行動を許す腐敗した世界の船舶業界や政府らは、目に見えないそして人々が気がつかないよう廃棄するために彼らのガラクタを送り込んだアランやその他の地で数百の人々が死ぬことに対する責任をますます負っているように見える。”

さらに詳細な情報:

Jim PUCKETT, phone + 1 206 652-5555
Gopal KRISHNA, phone + 91 98180 89660
Ingvild JENSSEN (NGO Platform coordinator), phone +32 485 190 920

[1] Open Letter to Star Cruises found at:
 http://www.ban.org/Library/060721_demand_letter.html
[2] TC report found at:
 http://www.ban.org/Library/SS blue lady inspection report by tech commtt India.doc
[3] Found at:
 http://www.ban.org/Library/NGO_Platform_Critique_on_TC_Inspection_Report_Final.pdf



化学物質問題市民研究会
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