BAN プレスリリース 2006年3月16日
IMO条約草稿 世界の船舶解体危機に
”驚くべき不適切な”対応
クレマンソー号のような輸出を日常的に許すことになる


情報源:BAN Trade News / 16 March 2006
Draft I.M.O. Treaty Called "Shockingly Inadequate" in Addressing Global Ship Scrap Crisis
Would Allow “Clemenceaus” to be Exported on a Daily Basis
BAN Press Release
http://www.ban.org/ban_news/2006/060316_imo_treaty.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年3月19日

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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/06_03_16_Draft_IMO.html


【2006年3月16日 ロンドン、ブリュッセル】 本日、環境、労働、および人権団体連合が発表した分析によれば、現在、国際海事機関(IMO)が策定中の新たな条約である”安全で環境的に適切な船舶リサイクリングのための国際条約”の草稿をとてつもなく不適切で既存の国際法や原則から後退したものである。

 条約草稿で批判されるべき点は下記の懸念である。
  • 1992年に発効したバーゼル条約の下に確立された原則およびルールを無視している。
  • 船舶が解体用に開発途上国に最終的に輸出される前に、船舶の汚染を除去することを要求していない。
  • 開発途上国で船舶解体と汚染除去の能力が構築されることを促進するようになっていない。
  • 最低限の要求に対する責任すら、汚染者である船主を管轄する国ではなくて、通常、限られたリソースしかない便宜置籍国(訳注:税制優遇措置等の理由で船籍登録されている国)および船舶解体国に課している。
  • アメリカ、フランス、及びイギリスなどの海軍や政府の船舶の大量の有害物質で汚染された”幽霊”戦艦が規制されることなく適用を免れている。
 アスベストやPCBのような有害物質を用いて建造された数千の船舶が今後数十年間にリサイクルされる必要があるが、裕福な先進国諸国は彼ら自身の国にそのような有害廃棄物を取り扱うための技術的な対応力を準備せず、世界で最も貧しい諸国や解体を行う地域共同体に任せて問題を回避している[1]。  ”有害船舶の廃棄の抑止や事前の船舶汚染除去を推進するのではなく、このIMO条約草稿は我々が最近経験したクレマンソー号のような恥ずべき輸出をもっと多く許すことになり、日常的にそれらを法的に正当化するものである”−と”船舶解体に関する世界NGOプラットフォーム[2]”のコーディネータ、イングビルド・ジェンセンは述べた。

 アスベストとPCBで汚染された退役戦艦クレマンソー号は本年1月にフランス政府によってインドに向けて輸出されたが、フランス政府はクレマンソー号の輸出についてバーゼル条約の下に確立されたどのようなルールも守っていないとフランス法廷が判断を下した後、フランスに呼び戻された。この問題に関する新たな条約に関して欧州理事会はもとより、バーゼル条約加盟諸国は、少なくともバーゼル条約と”同等な管理レベル”を要求していた。プラットフォームが発表したIMO条約草稿の分析は船舶解体危機を正常にするために必要とされる24の広範な項目を特定しており、バーゼル条約も20項目をカバーしているが、IMO条約草稿はわずか2項目にしか対応していない。

 ”この条約は、すでに確立されている条約等と’同等な管理レベル’に対して驚くほど不適切であるだけでなく、世界がすでに犯罪行為であると認めていること、すなわち、有害廃棄物を経済的に弱い諸国に押し付けることを意図的に合法化しようとしている”−と有害物質の取引を監視する非政府組織であるバーゼル・アクション・ネットワークのジム・パケットは述べた。”我々は、同条約草稿起草者らが起草委員会に持ち帰り、人権と持続可能な開発に関する既存の原則を改善し、逸脱することがないよう条約を設計することを希望するだけである。

”  船舶解体に関する世界NGOプラットフォーム[2]は、海運業界が国際海事協会(IMO)とこの新たな条約をバーゼル条約の中に体現されている環境正義の原則に従うことを避けるための道具として利用しており、船舶中の有害廃棄物がバングラデシュ、インド、パキスタン、中国のような開発途上国にリサイクルと廃棄のために輸出されることを防ぐことに本当は関心がないのではないかと恐れている。条約草稿は、3月20日から24日までロンドンで開催される国際海事協会I(IMO)の海洋環境保護委員会の議題としてあげられている。


[1] グリーンピースと国際人権連盟(FIDH)及びバングラディシュのYPSA(若い力の社会行動)によって2005年12月に発表された報告書『船舶解体における人命のコスト』は過去20年間に世界中で船舶解体が原因の死亡の合計は数千人に及ぶと推定している。
http://www.greenpeace.org/raw/content/international/press/reports/end-of-life-the-human-cost-of.pdf
BAN 有害廃棄物ニュース 2005年12月14日/船舶解体における人命のコスト(当研究会訳)

[2] 船舶解体に関する世界NGOプラットフォーム(Global NGO Platform on Shipbreaking)は、下記団体からなる。
Basel Action Network, Ban Asbestos, Bellona Europa, European Federation of Transport and Environment, Greenpeace, International Federation of Human Rights, IBAS, North Sea Foundation and The Other Media (India)

For more information:
船舶解体に関する世界NGOプラットフォームによるIMO条約草稿の批判:
“International Convention For Safe And Environmentally Sound Recycling Of Ships”
http://www.ban.org/Library/IMO_Draft_Convention_CritiqueFINAL.pdf

“Obligations and Opportunities for a Mandatory Alternate or Additional Instrument to the Basel Convention for End-of-Life Ships”
http://www.ban.org/Library/BAN_GreenpeaceSubmissionOEWG4.pdf

“The Need to develop a new legally-binding instrument that will build and improve upon existing environmental justice legislation”
http://www.greenpeaceweb.org/shipbreak/

Websites:
Basel Action Network: http://www.ban.org
Greenpeace Shipbreaking site: http://www.greenpeaceweb.org/shipbreak/

Contact:
Ingvild Jenssen, Coordinator of Global Platform on Shipbreaking, +32 2 648 31 22,
Jim Puckett, Coordinator Basel Action Network, Seattle, +1 (206) 652.5555, Marietta Harjono, Greenpeace Team Leader, +31.20.5249.562,


化学物質問題市民研究会
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