BAN 有害廃棄物ニュース 2006年2月8日
コンピュータ利用格差がコンピュータ廃棄物になる

情報源:BAN Toxic Trade News / 8 February 2006
The Digital Divide Becomes a Digital Dump
by Joseph Coomson, AllAfrica.com
http://www.ban.org/ban_news/060208_digital_divide.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年2月9日


 先進国から開発途上国へ輸出される中古コンピュータの大部分は使用することができず、貧しい国で”ガラクタごみ”となり、人々の健康と環境を脅かしている。豊かな国と貧しい国のコンピュータ利用格差(digital divide)をなくすのではなくて、コンピュータ廃棄物(digital dump)を生み出している。

 先進国で使用されなくなったコンピュータを開発途上国に輸出するビジネスが成長している。もし、ハードウェアがまだ使える又は修理の価値があるなら、その取引は双方の国にとって有益であろう。

 ガーナでは、ほとんどの中古コンピュータとその他の電子機器は、この現代的な時代には時代遅れな製品なので、輸入業者の店に2年以上もの放置されたままになっている。

 豊かな国の製造者や消費者は古いコンピュータを処分でき、その上いくらかの金さえ手にすることができる。そして、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの新たなユーザーは、緊急に必要とするハードウェアとソフトウェアを低価格で手に入れることができる。

 これが ”理論” である。しかし、実際にはこのビジネスは豊かな国の廃棄物処理のひとつの便利な形態以上の何ものでもない。

 環境団体、バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)によれば、輸出される機器の大部分は価値のないスクラップであり、貧しい国でガラクタごみとなり、人々と環境を脅かしている。
 BANが調査を実施したナイジェリアでは、毎月、40万台の中古コンピュータが送り込まれてくる。ナイジェリア・コンピュター販売業者協会によれば、これらのコンピュータの75%は使用することも修理することもできない。

 ”コンピュータ利用格差をなくそうとしているところで、我々はコンピュータ廃棄物を生み出している”−とBANの報告書は述べている。
 その報告書は、輸出国が電子廃棄物の輸出に知らぬ顔をし、多くの国際条約、とりわけ、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」に違反していることを非難している。

 1992年に発効したこの国連の条約は、唯一アメリカを除く全ての先進産業国を含む160カ国以上が加盟している。
 しかしBANによれば、たとえアメリカでも、OECD(経済協力開発機構)の枠組みを通じて、有害廃棄物の取引を管理する義務がある。

 BANは、今後数年でヨーロッパからの有害廃棄物の輸出が著しく増大することを懸念している。その理由は、EUのガイドラインが2005年8月から電子機器の製造業者と販売業者に使用済みコンピュータの回収とリサイクルを求めているからである。
 もし、EU加盟国が使用済みコンピュータの輸出をもっと厳しく監視しないなら、そのガイドラインは、”港から港に押し寄せる電子廃棄物のツナミ(tsunami)”をもたらすであろうと、この報告書は指摘している。

 この報告書が提起している最も重要な要求は、輸出国は中古品として輸出される使用済みコンピュターの全てに対し輸出前機能テストが実施されることを確実にすることである。もし機能しなかったり、修理できないものなら、輸出されてはならない
 オーストラリアは既にそのような規制を持っているが、BANによれば、貧しい国は全ての豊かな国がこの様な規制を実施してはじめて利益を受ける。


訳注:関連記事
BANプレスリリース2005年10月24日
ハイテク有害ゴミがアフリカへ輸出−アメリカとヨーロッパは”再使用・修理”貿易でディジタルごみ捨て場を作り出す




化学物質問題市民研究会
トップページに戻る