■「シオルは?シオルも、どうしても声が治らなかったら、神様なら治してくれるかもだよ?」
すっかり明るくなった室内に、ご機嫌なリカロの声はよく響いた。食事を終えて、彼女まで仲間に誘っている。
「あのね、『神々の涙』を全部集めるとね、神さまへの道が開いて、神様が願い事を何でも叶えてくれるんだって!」
「はぁ・・・・?」
ユイジェスは胡散臭そうに返事する。
「本当だよ。私信じてるもん!私だって、お願いずっと考えてるんだから」
見ると、ルーサスは無関心そうだった。目を伏せて腕組みしている。

勧誘されるところの、シオルは考え込んで固まっていた。
ためらって、ゆっくりと手書きで質問する。
[なんでも?誰か一人の願いだけ?]
「えっとね、石に選ばれた人たちの・・・だと思う。八つだから、八個かも知れないけど。どうかな?どうせ旅してるんなら。シオルいたら助かるし」
深刻な顔で悩む彼女。
ルーサスも気難しそうな顔をしていた。
「危ない目には・・・会うかも知れないけど・・・でも、ちゃんと守るよ!」
「・・・・」
シオルの顔は険しい。今日あった出来事を思えば、来ない方がいい。ユイジェスはそう思ったが、どこかで期待してもいた。
深刻な顔をして、ユイジェスの顔を見つめるシオル。
「おい。返事は明日また聞け。一晩くらいゆっくり考えさせてやれ」
ルーサスは急くリカロを止めた。
シオルの答えは、お世辞にもすぐ出そうに見えなかったからだろう。
すまなさそうに、シオルは俯いていた。


■男部屋と女部屋と借りて、女二人、リカロは嬉しそうに一人で喋っていた。
「ごめんねっ。一人で喋っちゃって。でも、女の子一緒で嬉しいんだぁ〜。前は友達いっぱいいたけど、もう離れちゃったし、ずっとルーサスと二人だったから。新しく友達できてすっっごく嬉しいの!」
(友達?)
シオルは目をぱちくりした。



「えっ?何々?」
リカロはシオルの口の動きを読んでいた。
「いいの?って何ー?いいよー!仲良くなりたいよ!シオル綺麗だし魔法はすごいし、優しそうだし!年上で大人っぽいし!」
ベットに腰掛け、口の前で指を合わせてニコニコ笑う。目の前の少女は静かに涙をじんわりと浮かべようとしていた。息も出来ない様子で震えている。
「ええええっっ!!??なんで泣くのっ!?なんで!?友達いなかったとかまさかそんなことないよね!?」
無音の唇は、「いないよ」と淋しいことを教えてくれる。
「そんなこと言われたの初めて」
と、両手で顔を覆って彼女は本格的に泣き始めた。リカロはおろおろして、
「えー・・・・、なんで?あっ、喋れないからとか?そんなのどうにでもなるのにね」
必死に慰めようとする。
シオルの手を取って、「ほら。ちゃんとこうしてシオルの気持ちわかるのに」眩しいばかりに笑って言った。
こんなに、いつも明るく笑っていられる人を見たことが無い。
シオルはそれだけで涙が止まらなくなりそうだった。
「私、じゃあ、1番最初の友達になるね!何でも話してね」
「・・・・」
リカロの顔を見つめ、涙を拭いてシオルは頷いた。
「ありがとう」声にはできないけれど。

「でも・・・、あ。シオルって白魔法使えるじゃない?神官様の娘さんとかなのかな?だから家がちょっと厳しいとか」
「・・・・」
シオルは自虐的に少し笑う。
「・・・・神官様達って厳しいよね。そうか・・・、ルーサスもそうなんだけど・・・。友達はいないと思うんだよね。って言うより敢えて孤独と言うか・・・。ユイジェスなんか、いい友達になってくれたらいいのにな」
軽くため息。
「リカロがいるじゃない」と指差して促すと、リカロは何秒か固まっていた。
「・・・・・え、えっと・・・・。そ、そうなんだけど・・・・。それはその、友達というか・・・勝手についてきたと言うか・・・。私は友達・・・。友達・・・・、かな・・・」
元気なはずの彼女の、肩が弱気に落ちてしまう。とても分かりやすい、可愛らしい反応だった。
「できれば、友達じゃない方がいいな・・・」
聞こえないような声でぽそり。今度はシオルが慌ててフォローしていた。そんなつもりで言った訳じゃない、応援するよ、と・・・。


リカロは見ていてすぐ気持ちがわかるし、とても素直で明るくてかわいいと思う。
ルーサスが孤独なら、リカロにどれだけ救われているか。リカロがこんなに明るく笑っていられるのは、好きな人が傍にいるからかも知れない。
彼と離れても、これだけ明るくいられるかしら・・・?
(私は?)

リカロと話しながら、自分の心の中には常に疑問符が浮かんでいた。

「うん。ありがとう。がんばるよ。まずはザガスを倒してから!」
「ユイジェスとルーサスも、いい友人になれると思うわ」
これも本心だった。
「そうだね。もう1回ケンカしちゃったけどね」(笑)

「俺は特別じゃない!」
そう言った彼の姿が思い出された。

「あなたは特別よ」シオルは断言できると思っていた。
あなたにとって『特別』な人がニュエズ王子だと言うのなら、あなたも何も変わらないと。
あなたにとってニュエズ王子が『完璧』だと言うのなら、そんなことはないと。
(私には、何が劣っているのか解らないわ)

強さ、弱さ、剣?、魔法?

優しさ。

きっと同じ。

(貴方の方が身近に感じるわ)

「あなたは特別な人よ」 
いつか自分の声で言いたい。シオルは強く想っていた。

いつの間にか考えに没頭して、リカロが覗き込んでいるのに今頃気がついた。
「ナニナニ?なんだか今熱い目だったよ」
(熱い?)
「シオルも好きな人のこと考えてた?」
シオルの体が思わずビクリと揺れた。本人もリカロも驚いて止まる。

「・・・・・」
「・・・・・」

「え?何かまずいこと言っちゃった・・・?」
汗をかいて聞いてみるリカロ。シオルは首を振る。激しく首を振る。
「う、うん。そんなに首振らなくていいから・・・。ごめんね」
それでもまだまだ首を振ってシオルはベットの中に潜り込んだ。布団の中で更にまだ頭を振っている。
(違うの。今は彼の力が必要だから・・・。ここが、ここが居心地がいいから・・・。離れたくないから今は・・・ただそれだけ!)

少ししてから、いきなりがばりとシオルは起き上がり・・・。
寂しそうにしていたリカロに、仲間として一緒に行くことを伝えた。
リカロは喜んだが、何かシオルの心は殺伐としていた。
心の中にある疑問符に、自分で強引に決別したようだった。


■一方、男部屋の方は、どこかぎこちない空気が流れていた。
今日会ったばかりなのだから、当たり前と言えば当たり前だが・・・。
ルーサスは地図や本を片手に、これからの行動などを模索していた。その顔はムッツリとしていて、「触らぬ神に祟りなし」と思わせた。

でも、誰かと同じ部屋で寝泊りしたこともなければ、こんな旅もしたことがない。ちょっとどきどき、ワクワクしてくる。
邪魔をしたら一喝されそうな雰囲気なのだが、どうしても我慢できずユイジェスは質問していた。聞きたいことはいっぱいあった。
「ルーサスってどのくらい旅してるの?」
「宿屋とかじゃなくて、野宿とかもしたことあるの?」
「これから何処に行くの?何をしたらいい?」
面倒くさそうにジト目で見てくるルーサスに、おかまいなしに犬みたいになつくユイジェス。
手の甲でべしっと頬を叩かれてさすがに黙る。
「うざったりぃ。お前」
「う、うざっ・・・!たりぃぃ〜〜!?ナニそれうざくてかったるいってこと!?」
「正解」
むっかー!ときて両手を握って震える。しかもそのまま何事も無かったかのように作業に戻っていたりする彼に納得いかずグーで殴る。
「ちょっとくらい相手してくれたっていいんじゃない?」
「俺はお前のお守り役じゃないんだよ」
と言って殴り返し。
「偉そうにでいいからいろいろ説明してよ」
「偉そうだ!?」
二人顔を合わせて口だけで笑う。売り言葉に買い言葉で、また言い合いになっていた。
毒を吐いて嫌味の応酬。立ち上がってお互い仁王立ち。
そこへリカロが報告へやってくる。
「ねえねえ、シオルがねー・・・、って、また喧嘩してるの〜?」
「そうか。それは良かったな」
まったく感情の入っていない返事なルーサス。リカロはふくれて「もう!」と怒る。
「どうせルーサスがなんか言ったんでしょ!」
「なんで俺なんだよ」
「ルーサスは俺がどうも
嫌いみたいで」
憎々しげに言ってやる。
「そんなことないよね、ルーサス」
「いいや。俺は
甘ったれな王子様は嫌いなんだ」
「ちょっと、ちょっと」
「・・・・そう。俺も
知ったり顔の冷徹な魔術士は嫌いなんだ」
「ちょっとぉーーー」 





リカロは呆れて、二人の間に入って交互に宥めようとした。ひょっとしたら仲がいいのかも知れないけど、仲良くして欲しいのに・・・半分泣き顔。
シオルも様子を見に来て、くすくすと笑った。
言うにことかいて、「羨ましい」と言われてしまって、二の句が告げなくなってしまう。
言いたいことを言える関係は羨ましい、そう彼女は言うのだった。

「シオル一緒に行くんだ?いいの?リカロに押し切られたの?」
彼女は首を振る。そしてふっとユイジェスを見つめる。
そして彼女は懇願したのだった。
「あなたの力を貸して下さい」と。


■彼女には長い夜になった。
自分の国、シャボールには『風の精霊』が幽閉されている。廃塔とも言える、もの寂しい塔に、忘れられたかのように封印されていたのだと言う。
その封印が先日解かれた・・・。
正しい者の手によってではない。これからシャボールは混乱する。それを止めたいのだと言う。
そして・・・。それよりも彼女にとって大事なことがある。

「妹を助けたい」 

国よりも大事だと言わんばかりに、シオルはユイジェスに頭を下げた。それにはどうしても『風の精霊』を抑えなければならない・・・だからどうしてもユイジェスが必要なのだと。
<風の剣>に選ばれたユイジェスにしか、『風の精霊』はきっと抑えられない。

ルーサス達には、『風の石』を手にするのは当然通過道だったし、すぐに協力を約束した。
当のユイジェスは、そこまで懇願されて、断るはずも無い。
自分にしかできないなら、もうやるしかないだろう。
「大丈夫。そんなに泣かないで。必ず妹さんは助けて見せるから」
(ありがとう・・・)

彼女はそれ以上詳しいことは言わなかった。でも、3人は聞き遂げるつもりだった。
そこに行けばおのずと解ることなのだろうし。

(聞けるだろうか。いつか話してくれるだろうか。自分から)
ユイジェスでも感じることがある・・・。
みんな真剣で、どうしても果したい目的があること。そこには色んな想いや悩みや、悲しみがあるんじゃないかと。

心に決意を刻んで、その日ユイジェスは眠りについた。

シオルは眠れず、闇の中一人黙祷していた。
どこかその姿は祈るというより、懺悔人のようだった。


シオルは、隣の部屋からルーサスが夜中出かけたことに気づいた。
彼が戻ってきた時、窓から覗いて彼と目が合う。
「・・・。起きてたのか?・・・さすがに寝れないか」
ルーサスは静かにこっちの部屋に入ってくる。「何処へ行っていたの?」と言いたそうな顔は無視して、リカロが寝てるのを確認してから、声を低くして呟く。

「その声も『風』に関係あるのか?お前」
「!」
さすがだとシオルは思った。何でも彼はお見通しだ・・・。
「呪いはかけたものにしか解けない、って知ってるか」
シオルはうなだれる。知っているようだと、それならいいとルーサスは言う。
「先に近いとこから、『大地』から行くけど、すぐに『風』も行く。俺も急いでるしな。そんな死にそうな顔してないで、もう寝ておけよ。持たないぜ」

リカロの布団を直して彼は出て行った。
ますます、彼女は眠れなくなった。


■ユイジェスが寝てから、ルーサスは一人身支度をして出かけていた。
念のため部屋二つに結界を敷いて。
目的地は昼間も侵入したミラマの王城。会っておこうと思った人がいる。

城に入るのは容易いもので、見つかっても絶対に捕まらない自信は彼にはあった。相手はこの深夜に部屋にいない。探して城を回れば、相手はなんとも意外な場所に居た。




第二王子の部屋だ。
(なんでこんなとこに居るんだ?)
彼は何をするでもなく、部屋の中央に立ち尽くしていた。
窓の外、テラスにルーサスは影を落とす。
「ユイジェス・・・?」
彼は弟が戻ってきたのか?と思ったのか、窓を開けた。
「・・・失礼します。ニュエズ王子」
身を低くし、ルーサスは挨拶した。
「失礼ながら、伝えたいことがあって参りました。その第二王子のことや、貴方のことです」
第一王子は驚いた様子もなく、彼を中へ招き入れた。
「君だね。ユイジェスといるのは」
「はい。ルーサス・ディニアルと申します」
「・・ディニアル?」
王子はルーサスを見やる。その容貌は確かにその名を思い出させた。何よりそのサークレットだ。実際に見たことはないが、その宝石のなかに映る『印』は見間違うはずもない。

「そうか。サーミリア・ディニアルのご子息か・・・。いずれ、必ず、ユイジェスの前に現われると思っていた・・・」
さすがに、兄の方は物事を知っているらしい。しかしどうにも深い、深い悲しみを全身から感じさせる。ルーサスは続けた。
「ユイジェス王子は私と共に<神々の涙>を追います。<石>を追う盗賊がいるからです。ザガスの名は知っていますか」
ザガスの名は知れていた。国を一つ乗っ取り、世界各地の盗賊団を支配下にしている前代未聞の大盗賊だ。
「奴は<変化の石>を持っています。充分な警戒をしてください。奴は自由に姿を変えることができるんです」
「<変化の石>!?」
彼はこれには驚愕した。何処にも所在の知られていなかった、実在するのかさえ怪しまれていた神の石だ。人に従うのだろうか<変化の神リモルフ>が。
変化の神に関しては、伝承もほとんどなく、知ってる者さえ少ない。
破壊神と罵る者もいる・・・。 
「ザガスは・・・『ミラマの王子』を邪魔に思っています。第一王子の命も狙ってくるでしょう。ユイジェスは俺が守ります。貴方も充分にお気をつけ下さい・・・」
「忠告感謝する・・・。弟をよろしく頼むよ」
「はい・・・」


「まさか<変化の神>とは・・・。本当に、ユイジェスはもう、『出て』行ってしまったようだね。まだ、もう少し先の話だと思っていた」
「・・・・・だからこの部屋に居たんですか」
背を向けた、王子に恐れも知らず聞いている。おそらく誰よりも、知っていたはずだ。彼が一番、弟の旅立ちを。必ず来るその時を。

「剣は抜けなかった・・・、私には。周りの落胆が、更に絶望させた・・・。いつか、ユイジェスは自分を越えて行く。それはいい。ただ・・・・」
部屋を見渡す。今は主不在の第二王子の個室。
深夜であるのを除いても、ただひたすら寂しさだけが今は暮らしているようだった。

「ここに居る限り、安心していた。ずっとここに居て欲しかったよ。自分のことを嫌いでいても、それでも」
(アイツはほんとに馬鹿だな・・・)
ルーサスは悲しみにくれる王子を見て、どうしようもなくいたたまれない気持ちになっていた。
昼間公園で見かけた彼は立派なもんだった。毅然として下の者に的確な指示をしていただろう。こんな顔は見せないに違いない。
誰にも見せないのかも知れない。

「そうだ。忘れ物を届けてくれないか」
彼は自室に戻り、ユイジェスの帽子をルーサスに渡した。弟がいつも被っていた帽子だ。
かしこまって、ルーサスは宿に帰った。

シオルと話した後、恨めしそうにユイジェスの寝顔を見る。
(コイツだけなんじゃないのか。こんなにお気楽なのは・・・)
「せっかくの兄弟。仲良くしとけばいいものを・・・」

(まあいい。明日からそんなお気楽にもいられないさ。否が応にも)
今日はけたたましい一日だった。
帽子は彼の荷物の上に置いておく。
横になれば、彼もすぐに眠りに着いていた。


■世界の中心にあるその島は、聖地と呼ばれていた。
聖地ライラツ、<命の神アリーズ>を信仰する聖王国ジュスオースの神殿が鎮座している、一日もあれば一周できる小さな島。
厳かに、深遠たるはずの白一色の神殿内に、けたたましい声が響いている。

「どうしてですか!私に<命の杖>を渡してください!お母様!」
声を張り上げていたのは皮鎧を着た金の髪の少女だった。金髪を後ろで一つに縛りあげ、旅支度は万全と終わっている。
たった一つ足りないものがあるならば、それは彼女が今求めて叫ぶもの。

「なりません。封印はこのまま。貴女には解けません」
「・・・お母様が言いましたよね。下された神託を・・・。それでもまだそんなことが言えるのですか。世界に迫っている危機を。もう、<石>はいくつか世に現われています。神々は復活するべき時に来たんです!」
強い声で主張する娘に、母親、最高司祭は冷静だった。
「レーン、城にお戻りなさい。貴女が戦う必要はないのです。ミラマの王子に全ては任されることなのです」
(だからなのに!!)
彼女、聖王国の王女レーンは歯噛みする。
「解りました。また頼みに来ます」
踵を返し母親に背を向ける。彼女の心はもう決まっていた。母も何も言わない。
娘は止めても聞くような娘ではない・・・。

「ニュエズ様・・・」
レーンは一人呟いた。
貴方のために何かしたいと思うのはいけませんか。貴方にもう婚約者がいることも知っている。
でも、だからこそ自分にできることがしたい。
こんな時に、黙って城で無事を祈っていたりしていたくない。
少しでも貴方の役に立ちたいと思うことはいけませんか。
城を旅立って、一人船に揺られる。
前に彼に会ったのは何ヶ月前だろうか。とても遠い日ことのように思える。
それなのに、目をつぶれば鮮明に思い出せてくる。
忘れられない、あの人の言葉。

「結婚するんだ」

どうして。
どうしてそんなに優しく笑うのですか。
会ったこともないシャボールの王女。小さな砂漠の国。
悔しいです。逢ったのは私のほうが早いのに。

そして嫌な事まで思い出してしまった。弟との婚約話だ。
「冗談じゃない!!!誰があんな奴と!!!」
突然毒を吐く。考えただけで忌々しい。弟の方は大嫌いだった。
いつもニュエズ様にひねくれて噛み付いて。何もできないくせに。
どうしてあんな弟がいるのかしら。
だんだんイラつきがエスカレートしてきて、レーンは息を吐く。そして<神々の涙>のことを考えることに意識を変えた。

(どうしようかな・・・ニュエズ様にも会いたいけど・・・遠回りになるし・・・)
ミラマの地図と相談する。目的地は『大地の霊山』だ。ここに『大地の精霊王』がいるのは誰でも知っている。しかし何処にいるのかなどは不明だが。

首都ミラマの北。船で近くの港町に降りて、そこから馬車でも乗った方が早い。
(<石>を持って会いに行ったら、喜んでくれるかしら・・・)
喜んでくれなくても、どちらでもいい。ただの自己満足なのだから。
レーンは霊山の西、小さな港町に降りていた。



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