「そして伝説へ」




「わあああああああっ!」
「勇者様!太陽神さま!」
「ありがとう勇者さま!賢者さま!」

 ラダトーム城下は歓喜に包まれ、人々は勇者一行に盛大な歓声を上げていた。

 予言の通りに、ジャルディーノは老司祭に、太陽の石を返還した。老司祭は涙に濡れ、約束を果たした勇者たちを祝福する。

「光あれ!」



 ラダトーム王は、勇者二人と、仲間たちを大いに労い、その栄誉を強く称えた。盛大にパーティ、パレードを開催し、国をあげて祝福してくれる。
「二人の勇者ニーズよ、よくぞ大魔王ゾーマを倒してくれた」
 勇者二人は、それぞれ青と白の出で立ちで、王の前に、かしこまる。

「二人に、この世界での勇者の証、ロトの称号を与えよう」

「ありがとうございます」
「謹んでお受けいたします」



「勇者ロト!勇者ロト!」
「勇者ロトさま、万歳ーーー!」

 城下へ向かう、城門が開く。
 道の左右には、兵士が勇ましくトランペットを鳴らしていた。

 陽光に包まれ、人々も笑顔に舞い踊る。
 精霊神ルビスが復活し、大魔王が消え、光が戻った世界には、徐々に草木も豊かになるだろう。魔物も少なくなってゆく。

 アレフガルドに平和が訪れた。



=ISSAC=



 ネクロゴンド各地に、慰霊の手は回り、故ネクロゴンド城、テドンの町にも慰霊碑が建てられた。ランシール監修の元、ネクロゴンドは、リュドラル王子を旗印に、ゆっくりと復興してゆく事となる。まずは各地の、傷跡を癒すことから。

 ラーミアの翼を封印した、吟遊詩人シャルディナは、時折お忍びで、町へ出て歌っている。今日はテドンで、鎮魂の歌を、式典において披露した。


「ありがとうシャルディナ。アイザックも、お疲れ様。もう、二人で休んでていいよ」
 式典が終わると、王子は普段通りのくだけた笑顔で、俺たちに手を振った。リュドラルは要人とまだ周囲を視察しているため、俺とシャルディナは、暫しの休憩時間となる。


 魔物も少なくなって、世界も平和になって。
 俺は今日みたいに、シャルディナの護衛をしたり、ネクロゴンドの復興を手伝ったり、イシスでジャルの兄貴を再戦してぶっとばしたり、アリアハンで騎士訓練を受けたりと忙しい。

 シャルディナは基本ランシールで、聖女の手伝いなどをしていた。



 町はずれ、森の入り口で岩に腰かけ、シャルディナ自作の菓子を食べながら二人で休息する。水筒の紅茶も暖かくて、心が落ち着いた。

 ぼんやり景色を眺めながら、俺はここ数日、考えていたことを、シャルディナに話してみる事にした。
「俺さ、世界が平和になって、この先どうしようかって考えてて…」

 普通に考えれば、アリアハンで騎士を目指す。
 ランシールの、騎士に憧れがない訳でもなかった。俺はミトラ信者だし、選ばれたなら、家族も鼻が高いだろう。
 ネクロゴンドを、一人しかいないリュドラルを、助けて行きたい気持ちもある。

「迷ったけど…」
 シャルディナは、真摯に話を聞いてくれている。
「一番俺を必要としてるのは、【ここ】じゃないかって、思うんだ」


 アリアハンも、ランシールも、俺じゃなくてもいい。
 でも、ここ、ネクロゴンドは、リュドラルは、俺が居れば支えになれる。

「うん。そうだね。リュドラルくん、すごく嬉しいと思う」
 肯定する笑顔は、とても綺麗で優しかった。
「…そうだよな」

「あのね、私も、同じこと思っていたの」
 紅茶の入ったカップを、両手に握りしめて。
「私も、この国の、手伝いをしたいって」

 ネクロゴンドは、ラーミア信仰の強い国だったから。神の娘が象徴として存在すれば、大きな加護も、意味も持つ。人心も集まるに違いない。
 今後の発展は、確実なものとなる。
 
 ランシールの保護に生きるのではなく、ネクロゴンドへ根ざす。


「…そうか。すごいな、シャルディナは」
 人の前に立つ生き方だ。怖がりだった彼女は、神々しいぐらい強くなった。
「アイザックが居てくれるって、思うからだよ」
 全然すごくないよ、と、神の娘は笑う。

「…うん、傍に居るよ。心配ない。リューもシャルディナも、苦労させないから。絶対俺が守るからな」
「うん。信じてる」
 隣に座る彼女の、手を強く握りしめる。


 心は決まった。
 まだ傷跡深い、ネクロゴンドの景色を見つめながら。
 二人を守って。この国を支えて、生きてゆく。
 大切な二人の、剣として。 



=JALDEENO=



「ただいま!お父さん!兄さん!」
 家族に、笑顔で抱きついた。ようやく、旅を終え、正式に帰ることができました。
 友達のドエールにも。姫様にも。もう、寂しい思いをさせません。


 イシスに戻ってからは、毎日お城へ通っています。
 短い時間でも、一言、挨拶をする事しかできなくても。

 女王陛下に進言し、僕とナスカ姫様との、婚約が発表されました。
 まだ二人とも幼いため、式は数年後となります。

 喜ぶ声、反対の声、反応は多々ありましたが、僕はもう動じません。
 回りの声を、回りの視線を、回りの感情を、もう怖がらずに生きてゆく。


 姫様とは、主に彼女の部屋で会うことが多いので、時には気分転換にと、今夜は外へ誘っていました。
 砂漠のオアシスへと、ラクダに二人乗りして、移動します。
 夜の外出も珍しい上に、夜の砂漠も姫にとっては初めての経験でした。

 月夜に、遠くピラミッドの影が伺えます。満点の星空と広大な砂漠は、やはり特別な感動を与えてくれます。
 オアシスに着き、ラクダを降り、手を繋いで泉の傍へ。
 泉に星空が映り、それは綺麗なのです。小さなイシスの花、ナスカ様も、初めて見る景色に目を奪われていました。

「ありがとう、ジャルディーノ。とても美しいですわ」
「気に入って貰えたなら、嬉しいです」
 姫の肩が少し震えていたので、僕の外套に入れてあげます。

 至近距離で、見つめ合って…。胸が、ドキドキしてきました。
「あの、姫様。…キスをしても良いですか?」
 小声で、訊ねます。
「そ、そのような事、断らなくても良いのですわ」
 頬を染めた、姫に叱られてしまいました。

「わかりました」
 そっと重なる。…緊張、しました…。
 今後は、断りを入れません。

 小さな花と、この国を、守りながら、生きてゆく。



=NALSES=



 上の世界に戻って来た俺は、まず、ラーの賢者の姿で、アニーちゃんの前へと現れた。青いマントを翻し、カザーブの町へと颯爽と降り立つ。

「じゃーん!見て見て!賢者になったの俺。すごくない?」
「………え。なんで?」
「それは、もう、かくかくしかじかで」
 ツテでなったようなモンだけど。それはもう、自慢しまくった。

「いろんな魔法使えるよ。そーら、アバカムー!」
 鍵もないのに、ドア開けちゃったり。
 雨雲の杖で、軽く雨を降らせたりした。

 でもでも、残念ながら、賢者の力はメルキドに返すんだけどね。
 だから、返す前にカッコイイ姿を見せておきたかった。


「…、ほんと、かっこ良かったよ。賢者」
 褒められて、俺は鼻をこする。

 メルキドのゴーレムへと、宝玉は返還。
 雨雲の杖も、謹んで返却して来ました。

 この世界での俺は、普通の僧侶で、商人で、ナルセスバークの盟主でいい。


 ナルセスバークに戻ると、入れ替わりに、聖女弟のクロード君はランシールへと帰還。騎士に戻って、国のために奮闘しているらしい。

 死神に頼まれた【灰】も、ナルセスバークが見える丘に埋めた。
 ちょうど、グレイさん達兄弟の、母親のお墓の隣。

 墓標はないんだけど、その場所に、クレイモアちゃんが花を植えて、時折、水をやりに行っている。死神の弟ファラ、どうか次生まれてくる時は、もっと幸せであるように。

 グレイさん達も、幸せそうに暮らしている。
 色々あったけど、ナルセスバークは順調に動いていた。

 …がんばろう。誰もが楽しく過ごせる、いい町にするために。
 

「ナルセス、いる?」
 役所で作業していたら、アニーちゃんが遊びに来た。
「いるよ〜。こっちこっち」
 書類や伝票に埋もれながら、恋人を呼ぶ。

「ちょうど良かった。アニーちゃんに渡すものがあったんだ」
 裏の鉱山から、綺麗な石が取れたから、それで指輪を作って貰った。もうちょっと大人になったら、この町で結婚式をあげるんだ。
 婚約指輪を渡す、10秒前。



=SIEVAS=



 アレフガルドから戻って、私はアリアハンで数日を過ごしました。
 父の顛末を、ニーズさんの母親に話したり、四人で墓参りなどをするために。

 哀しいですが、…でも、私たちの表情は穏やかでした。
 もう、父のことで、傷つけ合うことも無い。

 
 その後は、ルシヴァンの暮らす、岬の村へと移動しています。

 岬の村、彼と歌姫オリビアが暮らしていた、小さな家に、私と彼との二人暮らし。

 彼は盗賊をやめて、『なんでも探す屋』、『どんな鍵も開ける屋』を開業していました。真面目な仕事をして、兄に結婚を認めてもらう、そのために。


「わしのメガネが見つからなくてのう…」
「頭の上に乗ってるぜ、じーさん」

「この金庫の鍵が錆びて、どうしても開かなくてねぇ」
「オッケイ。(カチャ)ほらよ」

「山に指輪を落としてしまったの」(泣き)
「仕方ねーな。一日待ってな」
 山でレミラーマを何度もして、発見。

「山奥の遺跡の、扉を開けて欲しいのだが」
 時には、大がかりな依頼もやって来ます。国家の使いが現れ、捜索隊が組まれる事も。

 そんな時は、私も護衛として参加します。


 毎日たくさんのお客様が来て、いろんな場所へ行って、仕事は冒険のように楽しい。村では岬で釣りをしたり、魔法で人助けをしたり、日々がとても目まぐるしいです。
 毎日賑やかで、毎日が新しい。毎日、とても充実しています。


「子供はたくさん欲しいよな。お前が寂しくないように」
 彼は、言いました。彼よりも永く生きる、私が寂しくないように。

 大丈夫です。きっと、たくさんの思い出が、私を包んでくれます。
 永遠に、忘れません。



=SARISA=



 私はランシールに帰って、賢者の額冠を返還しました。ゾンビキラーは、私の傍に。
 聖女ラディナード様も、賢者の力を封印し、要時のみ解放すると宣言された。
 これからは普通に人として、生きてゆく。ラルクさんとも婚約が発表されました。

 私は聖女の傍で戦う、神官戦士の一人として、ランシール神殿へと通っています。

 家に戻って、家族にスヴァルさんを紹介して…。
 家族はアドレス君を推していたから、それは驚いていたりして。


 スヴァルさんは海賊を辞めて、傭兵をしながら、ここランシールで暮らし始めていました。
 聖女から依頼を受けることもあれば、ネクロゴンド復興の手伝いや、地球のへその残った魔物討伐など、依頼は尽きない。
 良く酒場で待ち合わせては、話を聞くのが楽しみでした。


 不満があるとすれば……。
 彼は常に、女性に人気という所。

 今夜も酒場で女の人に言い寄られていて、先日も家の前で告白されていたし、頬を膨らませて隣に座る。
「相変わらず、モテモテですね!」
「そう怒るな。きちんと断っている」
「そうですけど!!」
 膨れながら、ブツクサ言うのは、日常茶飯事。 

 食事を作りに家に伺うと、ポストにまた手紙が入っていました。
 …絶対ラブレターだし。


「あの、……私もここに住んでいいですか」(女よけに)
「なに…?」
 突然の事に、面食らう美青年。
「だって、もう、こうでもしないと…。あの、今日、泊まりますから!明日、荷物持ってきますから!!」
「……本気か?」
「そうだ!こう、ポストに『サリサ』って、下に名前書いておきますね。彼女と一緒に住んでますって分かるように」
「…………」

 強引に決めて、夕食の準備をしながら、ハタと気がつく。
 う。しまった。すごく、大胆なことを、してしまったかも知れない…。
 泊まるって、一緒に暮らすって、つまり、そういう事だし……。
 
 ドキドキして、緊張してきた。初めて一緒に夜を過ごす。
「…無理するな。後で、送ってゆく」
「!だ、大丈夫です。泊まります!」
 ぎくしゃく、体は強張って動く。顔は真っ赤で熱かった。

 離れたくないのは、本当だし。独占欲もあるし、一緒にいたい……。


「わかった。明日、お前の家に、話しに行こう」
「…はい!」
 本当に私は、無鉄砲。猪突猛進。
 スヴァルさんは、優しく受け止めてくれるから…。

 ずっと、ずっと、一緒に居られたらいいな。



=WAGNAS=



 ルビス様より、人としての生を授かった私は、今日も海上に揺られていました。

 海賊団から弟さんは追い出され(彼女と幸せになるために)、私は雑用として、最も下っ端の団員その1になっています。
 全くもって賢者使いが荒い、海賊お頭なのでした。

「ミュラーは海賊は辞めないのですか?普通に陸地で、何かお仕事できそうなものですが」
「えええ?嫌よ。つまらない」
 彼女も年頃の女性、家庭に落ち着いてもいいし、仕事もいくらでもあるでしょうに。

「だって、海の方が楽しいじゃない」
「私は、地上の方が好きなのですけど〜」

「御頭、もうすぐ目的地に着きます」
 弟さんが抜けて、副長となっているチェスターさんが、ピシリと雑談を止めに来ます。

「雑用係は、積み荷の移動お願いします。その後、各部屋の掃除、甲板掃除、船の修繕です」
「何か、恨みがこもってませんか?」
「いいえ。全く」
 絶対、個人的恨みがこもっています。(断言)


 賢者は掃除も、片付けも、お使いも完璧に、こなしますが、一応人並みの体力なのに。便利なルーラ係とか、火起こし係とか、物冷やし係とか、風で乾かし係とか。
 全く、完全に便利屋状態。(泣きマネ)


 目的地の島が見えてきました。
 島の山並みから、朝日が昇る。

 美しい夜明けを眺めていると、横で海賊頭が、満足そうに私を見つめていたのでした。
「いい夜明けね」
「ええ。本当に」
 当たり前にくる朝。いつ、どんな時も、朝日は美しい。
 海賊の姫は、私の肩に寄り添い、共に朝日を眺めます。

 この先何度も、当たり前に『朝』はやってくるでしょう。
 その、幸せをかみしめ、私は、彼女と生きていきます。



=NEEZ=



 アリアハンに、サイカを連れて、家に戻った。
 サイカの父親、翡翠は、ジパングの現状を聞くと、戻る意味もないと、アレフガルドに定着している。
 アリアハン王に、大魔王討伐の報告。世界に、平和の訪れが宣言された。


 兄が、母さんに、オルテガの顛末を説明し、謝った。
 シーヴァスも…。三人三様、罪の意識に謝り合って。でも、これで終わりだと、全員でオルテガの墓参りをして、もう心に区切りはつけた。

 暗い雰囲気を壊すように、サイカが大はりきりで夕食を作って。
 それはそれは大惨事だった。


 兄は、アレフガルドに暮らすことに決めた。
 ちょくちょく、ここには来るし、寂しさはない。

 兄も俺も感じているが、母の命は、長くないと思う。
 俺はその日まではアリアハンにいて、母亡き後、家は売って、どこか田舎で、静かに暮らそうと考えている。


 仲間たちも、それぞれの国や、生活に帰っていって…。
 俺の周りでうるさいのは、ジパング娘だけになった。

 何気ない日々の散歩に、誘って少し、寄り道をする。
 偶然、花が咲いてる場所を見つけた。奴の好きな、白い花だったから。

「わぁ。たくさん咲いていますね。…綺麗です。かわいらしい」 
 小さい花が、足元いっぱいに広がる草原。サイカは嬉しそうに花をつついた。


「…なぁ、サイカ」
 暫く景色に没頭する。意を決して、俺は、話すんだ。
 【俺】 のことを。

「俺はな、実は、……まっとうな、生き物じゃないんだ」
 母によって、造り出された存在であること。ニーズが魂を分けた分身であること。

「…はい」
「……。はいって、もしかしてお前、知ってたか?」
「はい」
 ハートマーク付けて、満面の笑顔。

 俺の緊張の全てが崩れた。
 
「お前、知ってて…。それでも、俺と居るのかよ…?とんでもねぇ奴だな」
 急激に脱力した俺に、サイカは肯定の笑みばかり浮かべる。

 本当に、豪胆な奴だ。肝が据わりすぎてる。
 気を取り直して、俺は、足元の白い花を、数本手に握る。

「あ…。それでも、いいなら…。優しくないし、将来まともな子供とか、できないかも知れないけど、こんな俺と、一緒に居てくれるか…?」
「はいっ!」
 ジパング娘は、胸に飛び込む。
 白い花束を添えた、伴侶の申し込みだった。



=NEEZ=



 大魔王の城は全壊し、巨大な穴はルビス様が土で塞いだため、オルテガの亡骸を見つけることはできなかった。
 仕方なく、父の指輪を、母へ返した。
 約束したのに、僕は父を連れ帰ることができなかった。
 あげく、害したのは僕。

 謝罪を重ね、全員で墓参りもした。
 母は誰のことも責めなかった。
 形見の指輪を、大事に大事に身に着けている。


 僕は、アレフガルドに生きることに決めた。
 
 ラダトームから北へ、町ではなく、僕らだけで小さな家を建てて暮らす。

「ただいまー。大漁だったぜ〜」
 飛竜の生き残り、アドレスが、ちょくちょく旅に出ては、食料や情報を持って帰ってくる。
「おかえりなさい。食事の支度しますね」
 三つ編みの娘が、食材を受け取り、てきぱきと家事をこなす。

「なんか、メルキドで、ゴーレムが動き出したみたいだぜ」
「へぇ、そうなんだ」
 テーブルに座り、旅で見聞きしたことの報告。

「ルビス神は、アレフガルドに、大地を増やしてるみたいだな」
「それは、すごいね」
 アレフガルドは、急速に発展しようとしていた。世界は大きくなろうとしている。

 アドレスが持ち帰った食材で夕食を囲んで。
 旅の話に盛り上がって、彼も疲れて就寝して。


 僕とフラウスも、一緒に寝室に落ち着いた。

 同じベッドの中で、額を重ねて眠る。彼女の存在は、太陽神様が許してくれた。
 僕は長生きは、しないだろうけど、ここで静かに、
 世界を見守り生きてゆく。



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 唐突に亀裂は生まれた。

     ピシ。ピシッ…!

「!?おお、生まれるんじゃ!?」
「なんだって…!?」
 傍にいたエルフ二人は、急いで卵に詰め寄った。
 今まで全く生まれる予兆もなかった、竜の女王の卵が、ひび割れ、中から新しい竜が生まれようとしている。

 エルフ二人は、静かにそれを見守った。
 竜の女王は、静かに息を引き取る。

 新しい時代の始まりだった。



==









そして、二つの 伝説が始まった。












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