運河にかかる橋の上で、一組の男女がもめている。「放してよ」「待てったら」そんなやり取りを繰り返しながら、追いすがる腕を振り払ったのは、勝気そうな赤毛を小粋な帽子の中に押し込んだ、若い女性だ。一方、さっさとひとり歩き出す彼女を、「おい!」と声を荒げて追いかけるのは、淡い巻き毛をきっちり撫でつけた、フランドル人らしい長身の、貴公子然とした繊弱な若者だった。
橋から続く石畳の狭い道、その両脇にそびえる建物の陰、やっと追いついた男は「待てよ」ともう一度、女の腕を無理矢理に掴む。
「まだ話は終わってないって言ったろ!」
「あたしにはもう、話すことなんて何もないの。――いい加減にしてよ!」
ふんわりと膨らんだ流行の袖が、しわくちゃにされてしまったことに苛立ったか、女は男の腕を叩いた。
「さっきのことなら謝ったじゃないか。いつまで怒ってるんだよ」
「謝って済む問題だと思ってるの!? あんたはね、か弱い女を置き去りにしてひとりで逃げたのよ!」
一年程前に教会軍の介入を許してから、この四都市同盟の警察力はとみに低下している。つい先刻も、彼女たちはマルクト広場でゴロツキに絡まれたところだった。
問題は、その際に女を置き去りにして――というよりいけにえに差し出して、男がとっとと逃げ出してしまったことだろう。女は広場中に響き渡る声で悲鳴をあげ、ゴロツキどもがひるんだ隙に、ドレスの裾をからげて自力で脱出してきたのだ。
「なぁ、おまえは平民なんだし、あんな目にだって遭い慣れてるだろ? 僕は生まれて初めてだったんだ、ちょっと動転したって――」
「何ですってぇ!」
古来、口喧嘩で男が女にかなうはずもない。それ以前に、男の言い分はあまりにも身勝手すぎて話にならなかった。
金切り声で男の言い訳を断ち切った女は、眉を吊り上げ、男に掴まれていない方の手を振り上げる。渾身の平手が男の頬に炸裂する――かと思われたその瞬間、だが、女の手は空を切り、代わりに「きゃあ!」という悲鳴が取って代わられた。
女の目には黒い旋風としか見えぬ「何か」が、もみあう男女をまとめて地面へ突き倒したのだ。
そして銃声。橋のたもとの地面が、大口径の銃弾に大きくえぐられたが、女は気づかなかった。ただ、砂埃に咳き込むことしかできない。
「……な……何なの、いったい……」
女は身体の下で伸びている男をクッションに、よろよろと手を突っ張って上体を起こし――そこでようやく、自分を突き飛ばしたものが、建物の壁に張り付くように佇むひとりの男だと知った。
「ちょっと、あ――」
あんた、と伝法に文句をつけようとして、女の口は「あ」の形のままに固まる。
「乱暴をしてすまない、マドモワゼル。お怪我をされただろうか」
彼女の方に、斜めに身体を向けて振り返ったその顔――
「い、いいえ……大事ありませんわ、神父様」
跳ね起きて、まくれあがったドレスの裾を直しながら、女はしおらしげに胸に手を当てた。
ともすれば野暮ったい漆黒の僧衣も、均整の取れた長身を包めばすっきりとしてストイックだ。この国ではよく見かける、淡い金の髪も、ここまで優雅にウェーブを描いて流れていれば目立って美しい。無造作にくくっているだけなのが口惜しいほどに。
そして貴族的な顔立ち、涼やかな鼻梁、愁いを帯びた青――いやおそらくは緑の眼。どこかで見かけた顔だ、と思うも束の間、その顔は厳しさを増してそらされると、建物の角から運河の向こうを覗き見た。振り返らぬまま、女に声がかけられる。
「巻き込んで申し訳ないが、あの向こうに狼藉者がいてな……もっと下がられた方がいい」
「まぁ……」
突然の、ドラマチックな展開にときめきを禁じ得ず、女が目を輝かせて両手を組み合わせた時、
「お前か、僕を突き飛ばしたのは」
ときめきを台無しにする震え声が、背中を叩いて彼女をうんざりさせた。
「すまない。だが、今は少し取り込んでいて――」
「うるさい! 神父風情がえらそうに言うな! 僕を誰だと思ってるんだ! ていうかどけよ!」
いまだに身体の上に座ったままの女を、乱暴に押しのけて男は神父を見上げる。助け起こしに来るのが当然、と思っているのだろう。だが、青年神の彫像のような無表情を崩さぬ神父は、世俗の権力にまったく頓着しなかった。ある意味では聖職者らしいと言える。
「お前の名など知らんし、知りたくもない。とにかく、命が惜しかったら後ろに下がるんだ。お前はともかく、そちらのご婦人まで危険に晒すわけにはいかないだろう」
とりあえずの温厚さをあっさり脱ぎ捨てて、むしろ面倒くさそうに、ぞんざいに神父は青年に命令した。
「こんな奴どうだっていい! とにかく僕に命令するな!」
「……何だと?」
声に剣呑さが混じった、と、座り込んだままの男女が認識できたかどうか。身体を半ば運河に向けたまま、神父は肩越しにゆっくりと、斜めに青年を眺めやった。その仕草は、大人しく伏せていたはずの、獰猛な獣がゆっくり首をもたげ、矮小な獲物を検分したかのようであった。
「坊や、お前には連れのご婦人を庇おうという気概もないのか? 男の価値は、愛しい女を守れるかどうかで決まるとママンは教えてくれなかったのか?」
フランドル訛りの、優美なフランク語は皮肉を放つに最適な言語だった。ぎろり、と魔性と謳われる翠の眼差しに射抜かれて、座り込んだままの青年はびくりと身を震わせる。
その様をしばらく眺めやり、やがて美しい神父は眼の端に、やんわりと苦笑をにじませて言った。
「いや……何ひとつ護れなかった今の俺に、言う資格などあるまいな……」
「……神父様?」
突然自分の世界に入りかけた美貌の神父に、「そういえばこの人、命の危険に晒されていたんじゃないかしら」と、今更ながらに女は不安を覚えて呼びかける。外貌の美しさは言うまでもなく、腕も毒舌も立つらしいのに、どうにも危なっかしい印象がほの見える神父だ。
女の声音にひそむ懸念を、矢玉飛び交う現状についてのものだと解釈したらしく、神父は罪作りな翠の眼差しでやんわりと女をなだめ、そしてその視線を運河に戻した。
「不安に思うのも無理はない……だが俺も少し持て余していてな」
「え?」
聞き返そうとして、女は神父が丈の短い上衣を脱ぎ、片手に提げたのを見て言葉を切った。袖のないアンダーウェアに隠れぬ、裸の腕。その無数の傷も、服の下に息づいていると想像できるたくましい背も、神父にふさわしいものとは思えず、……何より鑑賞に値しすぎて眼の毒だ。
それでも、商魂たくましきブリュージュに生きる、性根たくましき平民の女は、貴族のお嬢さんのように「きゃあ」などと扇子で顔を覆ったりはせず、しっかりとその後姿を眼に焼きつけた。すでに傍らの男のことなど眼中にない。
そんな女の熱視線など意に介さぬ聖職者は、片手に捧げた上衣をそろそろと、己が盾とする建物の壁から運河に向けて覗かせる。
一瞬もおかず、その上衣は砲火を浴びて神父の手から弾け飛び、四散した。
「きゃあ!」
「な、なんだよ!」
さすがにこれには悲鳴を上げずにはいられず、女と、へたりこんでいたはずの男は、いっせいに這うようにして後ずさる。
「……あの辺りか……少なくとも刀は届かんな」
あまり背後の反応は気にせず、神父はどこまでもマイペースに、射線の方向を探す。運河の向こうに、ひしめくように建ち並ぶ煉瓦造りの建物、その屋上と階下に狙撃手はひそんでいるらしい。
「神父様、に、逃げましょう!」
「そうしたいのは山々だが、敵を引きつけるぐらいはしておかないと、同僚に説教されてしまうんだ」
やけに嬉しそうにも聞こえる声で――「同僚」は「恋人」の間違いではないのか問いただしたくなるほどの声で――そう言うと、「君たちだけでも逃げるといい」と親切に神父は勧めてくる。
「で、でも……」
先刻まで愛を語り合っていたはずの男だが、今となっては道行とするにあまりに頼りない。未だに腰を抜かしているらしいその男を、うとましげに睨んで女はためらった。たとえ銃弾が飛び交っていようと、この男を引きずって逃げるよりは、この美形の傍に張りついている方が安全なのではないかと思える。
少し困ったように、離れようとしない女と離れられないらしい男を一瞥し、何か言いかけて不意に神父は、己の耳に手を当てた。
しばらく、何かに耳を傾けるように視線を彷徨わせ、口の中で二言、三言つぶやく様子を見せ……その翠の眼が驚きに見開かれる。
「上?」
その言葉を聞き取った男女と、その言葉を放った神父は、言葉の通り「上」を見上げ……およそありうべからざるものを、その場に見出して固まった。
彼らが見出したのは、彼らが盾にしている建物の、ブリュージュ特有の鋭角的な三角屋根。


……の付け根に脚をかけ、雄々しく仁王立ちしたひとりの尼僧だった。








尼僧だと、一目でわかったわけではない。地上から、四階建ての屋根を見上げる角度では、何やら広がるレースらしき白い布と、その白から見え隠れする同色のブーツが判別できる程度のものだった。
そのひらめく白が不意に屋根を蹴り、瓦を叩き落しながら空中へと跳躍するまでは。
突然の尼僧の身投げに、事情のわからぬ男女は息を呑む。
「トレ――!  ……シア」
なぜかひどく不自然に、それでも神父は、身を躍らせた尼僧の名らしきものを叫んだ。勿論、返答などあるはずもない――いや。
身を翻し、ついでにふんわり上品にふくらんだスカートの裾も翻し、落下する尼僧の返答は、その白手袋の右手に握られたモノによって為された。
銃声とはとても思えぬ轟音。
巨大な戦闘拳銃が、尼僧の右手から火を噴いていた。


四階建ての屋根から地上まで、落下する数秒の間に何発の銃弾を打ち込んだものか。石畳を粉々にする勢いで、尼僧は「ズシィン!」という常識はずれな音を立て、神父の眼前に、彼を護る如く背を向けて着地した。それも、銃持たぬ左手で、暴れるスカートの裾を押さえ込むというしとやかぶりだ。
「シスター・トレシア、何てことを……」
あっけにとられていたらしい神父が、ようやく我に返ってそんな言葉をつぶやいた時には、既に、対岸からの銃火は完全に沈黙していた。
それを確認してから尼僧は振り返り、頭巾の下の、気の強い眼差しをまっすぐに神父へと向けた。人形のように表情のない、だが、人形のように端正な顔立ちの、まず美しいと言って良い尼僧だった。歳は十代と二十代の境だろうか。肌は陶器のようにきめ細かい。正シスターであることを示す白い頭巾に包まれて、顔のラインははっきりとはわからなかったが、眼差しの強さのせいか、シスターという社会的立場のせいか、ひどく中性的な――少年めいた印象だった。その視線の先の神父が、女性的にすら見える美貌の持ち主であることからしても、二人の対面はそこはかとなく「いかがわしい」ものに映った。
それは、あまりに非現実的な邂逅に度肝を抜かれている男女――特に女の視線の先に、映る神父の背中がやけに、浮き立っているように見えたせいだったかもしれない。
「戦域制圧(クリア)。常駐戦術思考を狙撃仕様から索敵仕様へ書き換え」
鈴振る声で早口の呪文をつぶやくと、フランドル人とは思えぬ濃茶の瞳の尼僧は、腰をかがめるようにして、己のスカートに下から手を突っ込んだ。驚くべき手際のよさで、レースの襞の奥から引きずり出されたのはもう一丁の拳銃だ。太腿にでも吊っていたのだろうか、二丁に増えたそれを、似合わぬ清楚な白手袋の両手に携え、脅すように掲げて尼僧は己の行動を正当化した。
「狙撃手は屋上より卿を狙撃していた。遮蔽物を破壊せずに、地上から制圧することは不可能だ」
「あんな高いところから飛び降りるなんて! いくら膝にスカートを挟み込んだって、下着が丸見えだったじゃないか! しかも落下の衝撃でストッキングが伝線していたぞ!」
神父の抗議は、どう考えても100パーセント本気としか聞こえぬ真剣さに満ち溢れていた。コンマ数秒の沈黙ののち、心なしか、……いや間違いなく、うんざりした声で尼僧は答えた。
「――……あの落下速度でそれを視認できたのは卿ぐらいだ。用件がそれだけなら、」
「待て、それだけじゃない」
真紅のローマ十字を染め抜いた、白い手袋が伸びて、同色の尼僧服の腕を掴んだ。この騒ぎの直前まで、自分が繰り返していたやり取りを思い出し、いまだ座り込んだままの女は息を呑む。
だが、女の懸念は杞憂に終わった。
美貌の神父は、己より一回り小さな尼僧を引き寄せるとためらうことなく、実に情熱的に、かつ優雅にその身体を抱きしめたのだ。
「俺としたことが、礼を言うのを忘れていた……助けてくれてありがとう、シスター・トレシア」
「礼は不要だ、ヴァトー――」
ずれかけた頭巾を神経質にきっちり直しながら、尼僧は更に何か言いかける。だが、きりりと結ばれたその唇を、神父の指先でそっと押さえられると、抗弁はそのまま従順に止んだ。
それでも、神父の制止はわずかに遅きに失した。
「待て、ヴァトーだって?」
「ヴァトーって……」
漏れ聞こえてきた名に、当然のことながら、座り込んでいた男女は敏感に反応したのだ。
「ええっ? じゃあ『あの』、ヴァトー家の若様ッ!?」
「……俺はただの神父だ」
渋面を作った神父の否定も耳に入らなかった様子で、女は「どこかで見た顔だと思ってたのよ! 写真より素敵!」とはしゃぎ回る。自分は不味いことを言ったのだろうか、といった様子で神父と女を見比べていた尼僧は、だが、携えていた二丁拳銃の片方を、不意に閃かせると神父の脇からポイントした。
「そうだ、……どこかで見た顔だと思っていたんだ」
よろよろと立ち上がった男が指差したのは、神父――ヴァトー神父ではなく、シスター・トレシアなる尼僧の方だった。
「舞踏会にいた女だ。『トレシア・ワーズワース』……ユーグ・ド・ヴァトーの恋人だって触れ込みの」
「……」
確かにそれは間違いのないことだった。当のユーグ・ド・ヴァトーが眼の前にいるのに、今の今までこの男が気づかなかったのは恐らく、この男が同性より異性の顔を積極的に覚える性質であったことに加え、現在は恐怖で思考回路がいっぱいになっていたせいもあったに違いない。
当の二人は、「何を今更」と言いたげに顔を見合わせ、ついでに、神父の方は至極甘く尼僧に微笑みかけた。
「フルネームで呼ばれると何だか照れるな? シスター・トレシア・ワーズワース」
「そのフルネームは卿が――」
「シィ……大丈夫、似合っている」
「いちゃつくな! ……そうかシスターだったのか。シスターがあんないかがわしい――」
愛しいパートナーへの暴言に、神父は剣呑な眼差しを向ける。尼僧の銃口は、男の額に向いたまま離れない。状況は掴みかねているのだろうが、とりあえず、何かまずい展開になるようならてっとりばやく抹消しよう、という心積もりらしい。
「……何か問題があるか? 神父の俺を舞踏会に呼んだんだ。パートナーが尼僧でもおかしくはない」
「か、神に仕えるシスターだぞ! 修道院に引っ込んでりゃいいものを、男とダンスなんて――」
「待てシスター・トレシア、殺すな殺すな」
穏やかに片手を挙げ、神父ユーグはやんわりと、今まさに激鉄を起こしたシスター・トレシアの銃を掴んだ。
「俺のパートナーは、俺の利益を損じる対象についていささかならず短気でな……口には気をつけた方がいい。ああ、ついでに言っておこう、坊や」
神父ユーグは傍らの白き暴風を、銃身ごと、そっと片手で抱き寄せた。……まるでその銃ごと彼女を愛しているのだと、世のすべてに見せつけるかのように。
「お前の言う通り、このシスターは神に、神だけに仕える世界一忠実な僕だ。彼女の世界は神によって生まれ、満たされ、そして終わりを告げるんだ。そこに俺やお前の邪推の入り込む余地などはない」
確かに尼僧の冷ややかな面は、この憂世のすべての俗悪を拒絶していた。そこにはただ神の栄光だけがあった。だが――抱き寄せる神父の腕を、跳ね除けもしなかった。ただ物静かに受け入れ、かといってすがろうとはせず、己の脚で彼と共に佇んでいた。
「俺も彼女も、命は神に捧げている。その命が互いの為に使われることはないだろう。だが、『たとえ彼女と子を為すことができなくとも』、『夫婦として神に祝福されることがなくとも』、『彼女が彼女の神にすべてを捧げていたとしても』、……俺の半身たるパートナーは彼女ひとりだ」
抱き寄せられた腕の中で、不思議と強調されたその言葉に、ふと、尼僧はその表情少なき、生真面目な眼差しを神父へと向けた。
「共に同じ神の為に生き、共に同じ神の為に死ぬ。――その刹那刹那の喜びなど、お前にはわからんだろう。わからんままでいいさ。だが、もしこのシスターについて、おかしなことを口走るようなら――……」


チン、と、尼僧を抱かぬ方の手元で澄んだ音がした。
それきり興味を喪ったように、「行こうか、シスター・トレシア」と、うって変わってとろけた声で神父は囁く。
そして「名前を連呼するな、ヴァトー神父」と、なぜか怒られてクスクス笑いながら、ようやく駆けつけた警官たちの方へとゆっくり、歩み出した。
残された二人の男女の間に、ひどく気まずい沈黙が流れる。
「……あたし行くわ」
うんざりしたような声をあげて、女はパンパンと己の服の埃を払った。
「お、おい」
「あの神父様のやってることが正しいとは思わなくてよ。舞踏会にシスターを連れて行くなんて」
「そ……そうだよな!」
「でも」
流行の袖を丹念に直し、小粋な帽子をしっかり斜めにかぶった女は、ふと、腰に手をあて、しっかと石畳の上に仁王立ちとなった。……先程、尼僧がしていたように。
「バカなあたしにもふたつ、分かったことがあるの。
 ひとつは、そんな駄目な神父様でも、あれだけ一途になれるいい男なら許せちゃうってこと。
 もうひとつは、そんな男にあれだけ一途になってもらえる、かっこいい女だって世の中にはいるんだってこと……
 あたしも負けちゃいられない!」





しっかと顔をあげ胸を張り、「あんたみたいなクズになんてもう、つきあってる暇はないのよ!」と高らかに言い放つと、たくましき商都の女は男を残し、踊るように軽やかな足取りで立ち去った。
「待てよ!」と、何度繰り返したかわからぬ言葉を吐いて男は、後を追おうと数歩歩き――……そこでやっと、己の高価な服のベルトが斬られ、ズボンがずり下がっていたことに気づいたのだった。






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