死神の主張 


  
 

「どうしてオレなんですか?」
切れた頬から滴る血を、拭いもせずに雷獣は問うた。
「あんたの住む世界には、オレより強い人なんていっぱいいる。殺し合いが好きな人だっていっぱいいる。
 なのにどうしてオレなんですか」
傷刻まれし掌から、剣を浮かせて死神は答えた。
「理由などありません。
 キミしかいないと、思ったのです」
たおやかな一振り。なのに剣風は雷獣の金髪を、ひきちぎらんばかりに寝かせて吹き過ぐ。
「ねぇ」
死神は甘い声で囀った。
「そんなことに理由がいると思うのですか。
 一目見て、そして気づけば――他のすべてが色褪せてしまう、それは――」


黒衣の裾が、ダンスを誘うようにふわりと揺らぎ。
死神は雷獣の心臓めがけて、長大な剣を逆袈裟に無造作に振り抜く。


「――キミの言う、恋とやらに似ているような気がしませんか」


そう言って、
死神はひどくいとしげに、そして優しげに雷獣に笑いかけた。