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ストラヴィンスキーの 3大バレエの改訂

(96・10・15掲載)


「火の鳥」各組曲と全曲版との関係→  Next


ストラヴィンスキーの写真

 自分の作品を何度も改訂するのが好きだった点では、ストラヴィンスキーはブルックナーに似たところがあります。たとえば、有名な「3大バレエ」にはこれだけの異稿があるのです。

1:「春の祭典」の1947年版は、1921年版から「ごくわずか」ではなく、かなりの改訂がなされています(下記の「追記」参照)。
2B&H版は実際は1967年に再改訂されたものです。この写真の拡大版がこちらにあります。

 これらの改訂は、芸術的な欲求からではなく、もっぱら金銭的な事情から行われたと言われています。事実、ストラヴィンスキーが移住したアメリカ国内では著作権の保護が受けられなかった「3大バレエ」のオリジナル版からは、作曲者のもとには1セントも入ってこなかったため、彼には新たに別の出版社から改訂版を出版してなんとか収入の道を得なければならないという切実な必要性があったのです。そんなわけですから、「ペトルーシュカ」の1947年の改訂版は、盟友エルネスト・アンセルメからも公然と批判されてしまいます。ちなみにこの二人は、ついに和解することなく他界したのでした

99/11/24追記
このページをご覧になった、鎌倉在住で横浜市内のアマオケでご活躍の花上さんという方から、次のようなメールをいただきました。私などには到底太刀打ちできないオタクぶりをご紹介させていただくとともに、当ページの補足としてお読みいただければ幸いです。
「ストラヴィンスキーの3大バレエの改訂」読ませていただきました。少し気づいたことがありましたので、よけいなお世話と思いましたが書かせていただきます。

まず、「火の鳥」について。
1911年版組曲は、ユルゲンソン、ショットとなっています。
現在ショット社のカタログでは貸譜のみとなっていて、一般人が簡単に目にすることはできません。
ただ、Kalmus社からリプリント版が出ているので、購入することができます。
私もそれをコレクションしています。

次に「春の祭典」について。
>「春の祭典」の1947年版は、1921年版から「ごくわずか」ではなく、かなりの改訂がなされています。

とありますが、私には「ごくわずか」としか思えないのですが。
1943年に改訂された「いけにえの踊り」は確かに相当の改訂がなされています。
ただ、1947年に改訂したときには、元に戻しています。
表には1943年版の記述がありませんが、意図的にはずされたのでしょうか?
ちなみに、1943年版はAMP社から出版されていましたが、しばらく絶版になっていたようです。(B&H社に吸収された?)
ごく最近、B&H社から再発されたのを目にしました。
私はAMP社のものを所有しています。
1943年版「いけにえの踊り」は、ストラヴィンスキー自身の指揮によるコロンビアSOで確認できます。
他の演奏では聞いたことがありません。
また、1921年版はIMC社、Kalmus社からも出版されています。

さらにもうちょっと付け加えさせていただきたいのですが。

まず「火の鳥」の1910年全曲版。
Kalmus社からもリプリント版が出ています。
また、最近オイレンブルグ社からURTEXT版(新版)が出ました。

同じく「火の鳥」の1919年組曲版。
Kalmus 社からもリプリント版が出ています。

「ペトルーシュカ」の1911年全曲版。
Kalmus社からもリプリント版が出ています。

以上、いずれも現在手に入るものです。

これ以外にも、他社が過去に出版していたものがいくつか確認できていますが、 (例えば、「火の鳥」の1910年全曲版がBroude Brothers社と全音、「春の祭典」も全音など) 複雑になるので省略したいと思います。
本当は全部網羅できるとうれしいんですが、アメリカ国内で過去に音楽出版社の合併吸収等があり、上記Kalmus社版も、もとはベルウィン・ミルズ社のものだったりとか、よくわからない部分もあって、諦めざるをえないのが現状です。

では失礼いたします。

花上和也

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