(01/12/28作成)

　これは、バッハ作品目録（Bach-Werke-Verzeichnis:BWV）という、バッハの作品を整理して番号を付けた、バッハ研究の上での最も基本的な文献の表紙です。もともとは1950年にヴォルフガング・シュミーダーという人が出版したものですが、その後の研究の蓄積により、内容的には不充分な点が出てきました。そこで、アルフレッド・デュルらが中心になって最新の研究成果を盛り込んだ「第２版」が1990年に出版されるのです。その後、1998年に、さらに内容を修正し、データ部分を簡略化した「縮小版」（Kleine Ausgabe）が出版され、この半世紀前の労作が、簡単に入手できるようになりました。
　BWVの特徴は、作品をジャンル別に分類して、番号を付けたことです。ただ、その番号にはなんの根拠もなく、年代順ですらもありません。これは、もちろん、1950年の時点では年代を特定するすべもなかったのですから、やむをえないことでしょう。しかし、その後のバッハ研究の進展は著しく、殆どの作品の作曲年代を正確に特定できるようになりました。
　ここでは、BWVの１番から200番までに割り振られている教会カンタータを、演奏された年代順、ものによっては日にち順に並び替えてあります。BWVには、再演の記録もありますから、文字通り、バッハが教会でカンタータを演奏した記録になっているはずです。

　これを見てみると、バッハが教会の行事のためにカンタータを作った様子が手に取るように分かってきませんか？例えば、ヴァイマール時代はきっかり４週間ごとに作っていたとか（そういう契約だった）、ライプツィヒ時代になると毎週日曜日や、教会暦の特別な日には欠かさずカンタータを演奏していたというようなことが分かりますね。たまに抜けているのは、楽譜が消失してしまったからなのでしょう。あるいは、他人の作品を演奏したこともあったでしょうし。
　さらに、そのライプツィヒ時代でも、就任当初の３〜４年はきちんと作っていますが、それ以後はかなりおざなりになって、以前の作品の使いまわしが多くなってくるのがよく分かります。この辺が、バッハと教会当局との確執の現われなのでしょうね。

参考文献：
BACH-WERKE-VERZEICHNIS ･ KLEINE AUSGABE(1998/Breitkopf & Härtel)