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〔078〕 「死刑制度が存続している以上、死刑判決はなくせない」
【2005/10/04】

 中国の死刑執行数は世界最多。強盗や誘拐などによる殺人、人身売買、麻薬などの薬物犯罪だけでなく、脱税、売春、窃盗などの罪で処刑されることも珍しくない。

 執行数は極秘であり正確な数は不明だが、イギリスのBBCはアムネスティ・インターナショナルによるとして、昨年だけで約3400件。別の報道機関は5000件近いと伝える。執行数が多いイランやベトナムと比較しても、30倍以上の数にのぼる。

 しかも最近では、中国の化粧品会社が処刑された死刑囚の皮膚を化粧品の開発に利用してヨーロッパへ輸出していると、イギリスの「ガーディアン」が報じている。死刑囚からの臓器移植の噂も以前から絶えず、必要とされる臓器により執行方法が変えられるという話もある。

 どれも中国政府の関与あるいは黙認がなければ不可能として、批判の声は海外で大きい。アメリカに本部を置く中国人権などが死刑廃止を訴えているが、中国政府首脳は廃止は不可能と述べ、考慮される様子はない。

   「そもそも、死刑反対や廃止論は、中国国内では大きな世論になり得ない」
 刑事事件を中心に取材する中国人記者は、こう語る。

 「党や政府幹部による汚職、黒社会(マフィア)による組織犯罪、人命を簡単に奪う凶暴犯などの増加に庶民の反感は根強く、恐怖心も蔓延している。このため、先進国を中心とする死刑による犯罪抑止効果は疑問という認識は、中国国内には今のところない」と、記者は断言する。

 さらに、「拝金主義の蔓延やモラルの低下、貧困などが凶悪犯罪を引き起こすという考え方に同意する中国人もそれほど多くない」とも。

 死刑による犯罪抑止力は疑問という考え方を示すのは、研究者や知識人に過ぎにない。金持ちも貧乏人も事件を起こす。庶民の間では、犯罪に走るのは本人に問題があり、理由にかかわらず犯罪者を絶対悪に押し込めるという感情が圧倒的だという。

 「被害者遺族の憎悪を理由に、政府が代わって敵討ちをという考えが強く、圧倒的多数は犯罪人には死をという強硬論が強い」と分析する。

 最近、携帯電話などを通じて、収監されている受刑者とされる写真が中国国内で出回った。

 不倫相手を殺したスチュワーデス、人身売買や強盗殺人犯らの食事や入浴風景、手錠をはめられたまま将棋をする姿。足かせを着けられての移動。死刑執行前に刑務官から髭を剃ってもらう受刑者などが写る。

 「写真の真偽はともかく、この種の写真に対して外国人は敏感に反応するが、中国人は実に醒めていて自業自得と受けとめるのがほとんど」と、記者は言う。

 死刑は、死刑判決後、数時間以内に後頭部を狙っての射殺や致死薬注射によって執行されるのが大半だとされる。

 「死刑制度が存続している以上、死刑判決はなくせない」
 司法関係者の声を集約すると、制度変更が先だとする意見が多数を占めているという。


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