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〔077〕 ブタ連鎖球菌が原因で、つのる食への不安と政府への不信感
【2005/08/27】

 「政府は、まだ何かを隠しているのではないか」

 先日、上海のレストラン経営者や店長ら複数が、四川省を中心に死者が出たブタ連鎖球菌(中国語では、猪鏈球菌)感染に関する件で、上海市当局に呼ばれた。出席した経営者の一人は、こんな疑問を感じ取ったという。

 「ブタ連鎖球菌感染に関する対策、あるいは指示が出されると考えていたが、何も提示されなかった。逆に、食材の入手経路や使用実情を詳細に尋ねられた。市当局は現状把握に乗り出したばかりという印象で、かえって恐怖感がつのった」

 別のレストラン店長も、「どのようにすればよいと考えるか?」と、逆に対応策を問われたという。

 四川省資陽市で病死した豚などを解体した農民らが重病になったり病死したりした原因とされるブタ連鎖球菌感染について、中国衛生部(衛生省)は215症例の発生と39人の死亡を8月15日にWHOへ報告するとともに、関係当局は沈静化に躍起だ。

 「人民日方」では早々と7月末に、衛生部によるとして、「四川省資陽市の感染状況は沈静化に向かい、新たな患者や死亡者数が減少しつつある。また、病状の好転または完治して退院する人数も増えている」と発表。

 さらに8月4日以降、四川省で新たな感染者が出ていないとして、8月21日に衛生部と農業部が事実上の終息宣言を出した。しかし、実情は公式発表とかなり違うのではないかと、疑う市民は多い。

 先の経営者は、「SARDSが蔓延したときと状況が似ている。あのとき、政府は早々とSARDSの終息宣言を出したが、実際には患者はその後も増え続け、中国政府は国内外で信用を失った。ブタ連鎖球菌感染でも政府に頼らず、自分たちで自衛策をとるしかないのか」と、不安感をつのらせる。

 レストランでは、今のところ客の減少はないが、食材に関する話題が多くなった。多くの市民も不安を隠しきれず、とりわけ乳幼児や子どもを持つ母親の間ではなおさらだ。

 「子どもへの影響が心配。食の安全に対する不信感がより強くなったが、どうしたらいいのかかいもくわからない」

 これまでにもニセ薬、ニセ粉ミルクなどが出回り死者が出るという事件があった。日本で生活経験のある主婦は、親類や友人が中国に来るたびに日本の薬や粉ミルクをもってきてもらい、子どもを育ててきた。

 2年前にオーストラリア国籍を取得後、上海に戻ってきた別の主婦は、「食べ物に安心できないのでは、やはりオーストラリアに生活の拠点を完全に移そうか」と、考えるようになったという。

 かつて市政府で働いていた経験のある企業コンサルタントは、「管理機関への関連業界からの接待攻勢はすさまじく、癒着がはなはだしいだけに、食肉業界への有効な対策と厳格な処分がすぐにとられることへの望みは薄い」。

 「人民日報」(8月22日付け)は、衛生部と農業部発表として、専門家による分析結果により、「感染はすでに抑え込まれた」と報道。ところが同日、広東省人民政府が省内で4人がブタ連鎖球菌に感染したことを認め1人が死亡したと公表。事実関係の矛盾を露呈させたままだ。


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