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〔076〕 富裕層と貧困層の住み分けが、やがては明確になる時代へ
【2005/08/01】

 ここ十年近くの間に、中国人の多くが追い求めてきた夢の一つに住宅の取得がある。とりわけ、青春時代に文化大革命を経験し、今や中年になった男たちには、わずか一部屋に3世代が同居といった生活を強いられてきた者も多いだけに、こだわりはとりわけ強い。

 しかも以前は、自分の住宅を持つのは夢のまた夢、住宅は単位(職場)から分配されるものだったが、今やカネさえあれば購入できる時代に入った。個人向け住宅ローンが整えられたことも関係し、住宅取得に熱が入る。

 上海の会社経営者・李宏衛さん(50)もその一人。昨年、念願の自宅を手に入れた。600平米の土地に300平米の2階建て建て売り住宅。購入資金100万元(約1400万円)は現金で支払った。親子3人が住むには十分な広さだ。


(写真=中国では建築業者がスケルトンのまま住宅を販売し、設備や内装は購入者が改めて専門業者に依頼するのが一般的)

 ゆったりとした区画割りがなされた区域に、約100軒の家が建ち並ぶ。それだけに住民もさまざまだが、「共通しているのは高学歴と高収入。職業は市政府の中堅幹部、自営業者、外資系企業に勤める上班族と呼ばれるビジネスマンなどが多い」と、李さんは説明する。

 しかし経済発展著しい現代中国を象徴するようなさまざまな噂が、住民の間でささやかれる。自営業者の一人は、あくどい商売で大金を手にした。市政府の役人は不動産開発の情報をいち早く入手し、投機目的で住宅を購入した。

 報道機関の職員は、証券部在籍中に特別な立場を利用して株の売買繰り返し、購入資金を貯め込んだ。愛人にあてがわれている家もあるという。真偽のほどはともかく、住民は経済的にはまったく困らない層がほとんどだ。

 現在、中国各地で土地の強制収用をめぐる農民と当局との衝突が相次いで報道されているが、都市部でも再開発にともなう住民の強制移転が問題になっている。

 最近では、遼寧省瀋陽の夕刊紙「華商晨報」が「火弾抗法」という見出しで、ある事件を大きく報道した。住民の意向を無視した再開発事業に怒った青年が火炎瓶を投げつけて当局に立ち向かった事件で、現場写真付きで伝えられた。

 「この種の衝突事件は、貧困層が多く住む地区で頻発しているだけ。ここではそんな事件とは無縁だ」と、開発業者は言う。公共交通機関さえ整備されていない住宅区域だが、隣接する周囲の農地は埋め立てられ新しい住宅建設が進められている。

 「通勤・通学に不便だと感じる住民は誰もいない。皆、自家用車を保有し、そなんなことを問題視する者は一人もいない」と、開発業者は強気だ。

 住民の一人は、「環境や治安など、より良い生活を求めてここに移り住んだ人たちが大半で、金持ちは金持ちだけが住む区域で住みたがる傾向もある」と言う。


(写真=建設現場では、他省から仕事を求めてやってきた農民が建設労働者として働く)

   「住所を聞いただけで住民の経済状況がわかるような、富裕層と貧困層の住み分けがはっきりする時代にいずれは入る」と、開発業者も予想している。


◆ 君在前哨/中国現場情報 ◆





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