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〔075〕 メディアへの一般市民からの通報増加で 報道姿勢に変化が
【2005/07/05】

 汚職官僚の増加や土地の強制収用など政府の腐敗や強権的姿勢を原因として、労働者や農民の抗議活動が中国国内の新聞やその電子版でも頻繁に伝えられるようになった。

 過去、幾度となく中国国外に本部を置く人権団体などが、労働者や農民の動きをインターネット上で報道してきたが、しだいに国内でもメディアの動きが活発化しつつある。

 「報道件数が増えたのは、関係当局による検閲などの報道規制が緩やかになったのではない。この背景にはいくつかの理由がある」と、現地紙記者は説明する。

 最大の理由はニュースソースが飛躍的に増え、日々、マスコミ各社に具体的情報が寄せられるようになったからだという。都市部のある新聞社では、24時間、年中無休で、電話で市民からの情報を受け付ける専門部署を設けて対応する。

 「寄せられた情報はすべて録音され、記者は自分のデスクでコンピュータから情報を引き出すことが可能だ。加工されていない生情報だけに、情報内容に加え、通報者の話し方などから緊迫感が伝わる。重要だと判断すれば、記者はすぐに現場に出向いたり通報者に会うようにしている」

 公衆電話や家庭用電話の普及を待たずして、携帯電話が急速に一般化しはじめた中国だけに、情報伝達手段に事欠くことはなくなった。現場からリアルタイムで情報が寄せられるようにもなり、コンピュータや携帯電話から電子メールで伝えられる例もある。現場写真が添付されることも珍しくなりつつある。

(写真=人気の映画とタイアップした携帯電話の巨大看板。携帯電話は日本と同じように中国でも必需品)

 通報される情報の大半は役人たちの不正など、政府機関の違法行為を問いただす内容が多いという。今年3月から4月にかけて頻発した反日抗議活動の時期でさえ、圧倒的に多かった通報は政府関係者の対応を告発する内容だったという。

 市民の声を紙面に反映する新聞記事が増えたもう一つの理由には、新聞社ならではの現実的な事情があるという。インターネットの普及で、従来のメディアに対する不信感が読者の間に増大していた。

 「インターネット情報と比較すると、新聞は政府や党の広報機関だとする不満が大きくなり、読者離れが目立ち始めていた。この窮地を跳ね返すためにも、市民が求める事実究明という姿勢を打ち出さなければ生き残れないという上層部の判断もある」

 こうした姿勢の変化で、取材活動は以前より改善されつつある。だが、タブーは今も確実に存在する。完全に報道の自由が保障されていない中国だけに、明確な線引きがあるという。

 「政府批判は許されても、党批判は許されないという厳然たる事実だ。不正を暴く記事が報道されたことで、特に地方幹部が更迭されることも多くなった。しかし、彼らはいずれも政府関係者にすぎない」

 それだけに、共産党としてはあまり痛手を感じていない。地方幹部の首のすげ替えは国内にたまった不満のガス抜きに利用さていると、先の記者は指摘する。

 「党は政府を支配する絶対的組織。したがって、党へ責任追求がおよばない限り根本的な問題解決にはつながらない」


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