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〔072〕 「党や政府は怖くない」 上海のデモからわき上がる市民の声
【2005/04/20】

 「政府は本気でデモ隊を規制する気があるのか、市民の感情を見誤っているのではないか」

 上海で16日に起きた大規模な反日デモを取材した現地夕刊紙の記者は、当局の姿勢に数々の疑問を感じたという。

 「デモ警備で大量動員されたのは、警官隊とはいっても交通警察。しかもデモ隊に多数の人が加わってくることは、最近の状況で容易に予想できたはず」

 事実、デモ隊が行進するうちに、里弄(路地)から十人単位のグループが何組もデモ隊に入ってきた。予想外の出現だとして、公安はかなり慌てたという。彼らの大半は、愛国とは何か、日中間に横たわる問題とは何か、これらを明確に理解しているような人物ではないと、記者の目にはうつった。

 「韓国のように、政府と民衆が歩調を合わせて、日本を徹底的に批判すべきだ」「次は中国が主導権を握って、日本を追いつめよう」といった、韓国の抗議活動を意識した叫びがしばしば聞こえてきたという。

 「確証が得られないさまざまな噂が飛び交い、小さな出来事がことさら大きく語られ、明らかに嘘だといえる話も飛び交っていた。それを真に受ける人々がデモ隊の主流となり、激しい抗議行動につながった」

 中国では感情的な暴論が出始めると、それが一人歩きしなかなか収まらない。今回のデモでも、先導的な言葉に反応しやすい若者や失業者と思われる人たちが暴れだしたという。

 「日系の商店や料理店だからといって、経営者が日本人とは限らない。日本車にいたっては、所有者はなおさらのこと。そんなことさえ認識できない連中が暴徒化した」

 事実、日本人が経営する料理店の大半は、ホテルやショッピングセンターなどに入っている場合が多い。町中で見かける日本料理店の経営者の多くは中国人、あるいは台湾人などが中心となるという。

 日本総領事館付近では武装警察が警備にあたったが、せいぜいがスクラムを組んで防止線をはる程度。過去、学生や農民の抗議デモを取材してきた記者から見ると、デモ規制は見せかけにすぎなかった。

 一方、デモ当日の夜から、上海市政府や公安などの関係機関は対応に乗り出し、日本と深い関わりを持つ人物を中心に接触し始めた。市政府から連絡を受けた一人は、破壊活動をともなった予想以上の激しいデモに、当局が慌てふためいていたと証言する。

 「日本での報道内容、日本人の反応を、とりわけ知りたがっていた」

 当局が語ったのは、中央政府の日本に対するかたくなな態度への怒りであり、どのようにして日本に対応して関係を修復すべきか、その方法を懸命に模索しようとする姿勢だった。日本との経済的結びつきが強い上海市だけに、中央政府や他の都市とは一線を画してでも、早急に事後処理をという方針が感じられたという。

 「一方、公安は一般市民の反応にも神経をとがらせていた」とも、その人物は証言する。今回のデモで、「もはや共産党や政府を恐れる必要はない」といった嘲笑が出始めたと、先の取材記者も言う。

 デモにより、日本に対する中国人の感情が吹き出したが、同時に党や政府の混乱ぶりも露呈。党や政府にとっては、内政問題としても慎重な対応が必要な時期にさしかかりだしたと、記者は言う。

 「今後も過激な行為に対する当局の失態が続けば、重大な治安問題となる。それだけに、党、政府ともに、事態がさらにエスカレートすることに強い警戒心を持ち、市民の怒りを利用した反日が自分たちに向かいかねないことを、現実味を持って受けとめだしている」


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