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〔070〕 農民との経済格差是正より 農民への意識革命こそ最重要
【2005/03/18】

 「中国国内には都市と農村という一国二制度が存在すると指摘する経済学者がいるが、農民にとって現状は一国二制度といった生やさしいものではない」

 記者生活26年、大都市でもっとも部数を誇る新聞社に勤める記者に、農村や農民の実態について質問したときのこと。過去、彼は取材で何度も内陸部の農村へ入った。

 「農民の実態をさらけ出した『中国農民調査』では、“悪人治村”(悪人が村を治める)といった表現がさなれているように、農村で見聞したのは都市部とはあまりにもかけ離れた封建的な社会生活を強いられる農民たちの生活であり、厳しい現実に直面する悲惨な窮状だった。現実の中国は、現代と近世が併存する奇妙な国家だと痛感させられた」  

(写真=農民の実情を伝える『中国農民調査』。「衝撃的内容として受け取られたが、現実はここで書かれた以上に悲惨だ」と、記者は指摘する。すでに販売禁止となり書店の店頭から一掃されたが、闇市場では出回っている)

 農民たちをとりわけ苦しめるのは、農村部の政府機関がことあるごとに理由をひねりだし、税金といった名目で農民から金銭を徴収する「乱収費」が平然と行われていることだという。   「教育、結婚、労働といった誰に対しても平等に認められるべき権利に対してにさえ、ことあるごとに理由を付けて金銭を徴収する。この結果、農民たちには大きな負担が絶えずのしかかり、生活を圧迫し続けている」

 ただでさえ、農民は過酷な重税の負担にあえいでいる。温家宝国務院総理が今月開催された第十回全国人民代表大会(=国会)第三回会議での政府活動報告において、「来年、全国で農業税を撤廃する」と発表せざるを得なくなった。しかし記者は、農民からの乱収費徴収は治まりそうにないと予測する。

 重圧に耐えかねた農民が、各地で地方政府機関に対し乱収費の撤廃を訴える場面が増加しつつある。ところが、農民たちの決起に対して、村や党の地方幹部は暴力的な対応でのぞみ、農民への違法行為が目立つという。

 「農民への暴行が日常化し、傷害致死に問える事件さえ珍しくない」

 事件へとつながる場合、そのほとんどが地方の役人連中による農民への脅迫、弾圧、あるいは報復だという。収賄や横領など官僚による汚職は全人代で触れられたが、農民への暴行事件などに対しては言及されることはなかった。そもそも中国国内では、農民に対する強権的支配についてはほとんど伝えられることがない。

 「政府はこうした事実に対して、マスコミ各社に極力、報道しないように通達している」と記者は指摘し、たまに伝えられても、農民が政府の方針に対し不満を抱き、違法行為を行ったというような論調に記事が書き換えられて報道されると、自身の経験を振り返る。

 「政府は農民の怒りが決起となって頻発する現実に直面し、都市住民と農民との経済格差是正を慌てて打ち出した。しかしこれは、ことの本質から目をそらせようとしているに過ぎない。農民に対して皇帝のように振る舞う地方役人の意識革命が進まない限り、農民の苦悩はなくならない」


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