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〔069〕 都市と農村 戸籍の違いで収入や資産形成により一層の格差が 
【2005/02/12】

 北京や上海など大都市圏で、「租房」と書かれた部屋貸しの看板を頻繁に目にする。最近では電話、洗濯機、冷蔵庫、エアコンといった室内設備が詳細に記載される不動産会社のホームページも多い。北京市街地では、50平米のマンションで1ヶ月約2000元前後(約2万8000円)が平均的な家賃となる。

 「部屋貸しの看板が多くなったのは、都市住民の間で“部屋あまり”状態が出始めたためだ」と、北京人の一人は説明する。

 計画経済時代、都市に戸籍がある住民は、単位(職場)から住居を分配されていた。年齢、勤続年数、学歴、それにコネなどにより、条件は違っても住居が割り当てられた。ところが、1998年以降、国有企業は分配制度を廃止、代わりに助成金を支給する住宅購入制度が始まった。この時点で、住民の住宅意識が大きく変わりだした。

 資金さえあれば住宅を購入できるようになり、住宅消費が拡大。ところが住宅を購入した人たちの多くはすでに住宅を分配されていた人たちか、あるいは自力で購入できる資金を持つ富裕層で、複数の住宅を所有する都市住民が出現した。

 「都市に地方出身者が増え、部屋を必要としている人は年々、増加傾向にある。さらに、不動産が財産を生み出すという考えも一般的になった。そこで皆が余った部屋を貸し出すようになった」
 すでに部屋を貸している人物は、こう説明する。

 例えば北京、北京に戸籍と単位がない人が住宅を購入しようとすれば、多額の金が必要となる。2年前、市中心部に110平米で100万元(約1400万円)のマンションを購入した人物がいる。100万元は日本人の感覚であれば、1億円を超す額に匹敵する。それだけに、彼の言い分ははっきりしている。

 「もし北京に戸籍があり北京の単位に所属していれば、住宅を購入するのに私がこれほどの額のローンを背負う必要はなかった」

 彼の戸籍と所属単位は東北部の都市にある。北京に出てきたのは地方都市では自分が希望するまともな仕事を見つけ出せないというのが理由で、大学時代に生活した北京への永住を決意して転居してきた。

 「大都市に戸籍と単位がある住民とそうでない住民との経済格差は、住宅購入制度開始時点から著しい差がでるようになった」と、彼は嘆く。

 確かに北京に戸籍と単位があり、割安で単位から住居を手に入れ、余った住居を貸し出すだけで、労働者の平均月収ほどの額は簡単に確保できる。北京の地下鉄環状線の駅から徒歩5分ほどの所に建つ60平米の住居は、1ヶ月約2000元で貸し出そうとされていた。この額は北京の労働者の月収分にあたる。

 部屋の持ち主は30代半ばだが、すでに自費でマンションの一室を購入。貸し出そうとしている部屋は単位が建てたマンションで、市場価格よりかなり安い金額で購入できた。

 10階建て鉄筋コンクリート造りのこのマンションには24時間、正門、敷地内、各建物入り口に警備員が立つ。彼らは農村部から仕事を求めてやって来た男性で、月収は1000元ほど。

 さらに各棟のエレベーター内には朝8時から夜11時まで、女性が交代制で働く。エレベーターの利用者に乗り降りする階のボタンを押してやったり、不審者のチェックが主な仕事だ。そんな彼女たちの月収は、わずか500元前後(約7000円)。家賃の実に4分の1の額に過ぎない。

 先頃、都市部で働く農村からの出稼ぎ労働者の収入が依然として低い状態にあり問題だと指摘する発言を、中国政府の関係部門が行った。戸籍の違いで、収入や資産形成にますます大きな差が出来ている現状を、政府も認めざるを得なくなっている。

 だが、吉林省の農村から3ヶ月ほど前に北京に出てきた18歳の女性は、それでも農村から都市への出稼ぎは止まらないと言う。

 「安い賃金だといっても、農村で働いているよりは多額の現金収入が得られる。同級生の多くも、機会さえあれば都会に出ようと考えている」


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