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〔068〕 増加する抗日愛国作品 検閲基準の不統一で現場に混乱が
【2004/12/17】

 テレビや映画など映像制作に携わる中国の人々は現在、多忙をきわめている。テレビ番組作りでは、2005年の春節が2月9日になることから、旧正月用の特別番組の最終準備に追われているからだ。

 しかし忙しいのにはもう一つ訳があるという。制作プロダクションで働く編集マンは「問題は検閲だ」と断言する。

 とりわけ検閲で時間をとられているのが、抗日愛国をテーマとする番組。来年の2005年は中国にとって「中国抗日民族解放戦争勝利及世界反法西斯(反ファシズム)戦争勝利60周年」となる切りの年。

 「逐日英雄」「燕山戦歌」など、勇ましいタイトルが付けられた「抗日電影」と呼ばれる、抗日戦争をテーマとする映画あるいはテレビ・ドラマの制作が相次ぎ、「抗日影視明年熱」(抗日映画やテレビ・ドラマが来年はブーム)といった表現が新聞、雑誌、インターネットなどのメディアに登場するようになった。

 「把握している関連作品の制作本数だけで30本は超える。全国各地の撮影所やテレビ局の作品を合わせれば100本以上に達するのではないか」
 こう推測する北京のカメラマンがいる。

 彼は共産党の第1回全国代表大会が開催された上海、革命の根拠地となった延安、日本が支配した旧満州などを現場とした撮影を終了した。ところが、その後の編集作業で、必要以上に時間をとられていると嘆く。

「編集を終えて検閲関係機関に提出すると、次々と修正を要求してくれる。指定通りに手直しして再びチェックに出すと、また修正を命じる。この繰り返して、編集作業がスケジュール通りに進まない」

 映画、テレビに限らず、検閲システムは厳密に作られているが、製作現場を泣かせるのは検閲基準が何一つ明文化されていないことだ。このため、「関連作品の制作が増加し、検閲基準をめぐって検閲機関内で混乱が起きている」と指摘する人物もいる。

 すでに国内では、日本人俳優も出演するテレビ・ドラマ「記憶的証明(記憶の証明)」の放映が始まった。第2次世界大戦当時、日本で強制労働させられた中国人を描いたドラマで、大きな話題となっている。

 実はこのドラマ、1年前に製作されたものだが、中国の外交や歴史観に関わる場面が多く、これまでに何度も検閲を受け、そのたびに手直しをされようやく公開にこぎつけた。

 ここ数年の経済成長の波に乗り、大学卒業後に分配された単位を離れ、自ら映像会社を起業する人たちが多い。抗日をテーマとする作品は南京など反日感情の強い地域を中心に反響が大きく、新興の映像製作会社であっても順調に仕事が舞い込み、好景気が数年は続くと予想する。

 抗日勝利60年の来年に続き、06年は共産党成立85周年、07年は人民解放軍建軍80周年、そして08年は北京オリンピック開催へとつながる。それだけに、政府や党の支援を受け国威発揚を鼓舞する作品の制作本数が多くなると、説明する映像関係者は多い。

 しかし、こう本音をもらす映像関係者も少なくない。
 「検閲基準が明確化されないと混乱が大きくなり、仕事しては非常に厳しい。できるなら、自分たちが本当に撮りたい作品作りにこだわりを持って仕事を進めたい」


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