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〔066〕 言論統制機関の中宣部を批判した北京大助教授が停職処分に
【2004/10/15】

 北京大学新聞伝播学院の焦国標助教授(41)が9月以来、停職処分中だと、「看中国」など中国の内部事情を報道する複数の中国語ウェブが伝える。

 焦氏は日本でも翻訳出版された「討伐中宣部」(邦題:「中央宣伝部を討伐せよ」)の著者。

 処分は、中国で新学期が始まる9月2日に大学当局から通知された。「看中国」によれば、停職処分にいたった具体的な理由は焦氏に説明されず、大学側も明確な理由を上部機関から提示されなかった。焦氏は論文「討伐中宣部」が原因ではと推測しているという。

 「討伐中宣部」は、言論や報道の統制機関としての中央宣伝部が中国の民主化促進や中国人の生活改善に対する大きな足かせになってきたと糾弾する。報道禁止あるいは虚偽の指示など、さまざまな具体的事例をあげて中宣部の露骨な実態を暴露し、同部の廃止あるいは改革を提起した論文。

 これだけ中宣部の活動内容を明らかにした論文は初めてではないかと、中国国内ではメディア関係者や研究者から驚きをもって注目された。

 中宣部の正式名称は中国共産党中央宣伝部。新中国建国以来、共産党の公式イデオロギーを徹底するため、新聞、出版、テレビ、ラジオ、映画、教育部門などに対し指導・監督を行う機関として、代々、保守派幹部が最高責任者として送り込まれてきた。

 メディアにたずさわる人たちの間では、中国の言論を意のままにコントロールする検閲機関として恐れられるとともに忌み嫌われている。「中宣部是中国社会的愛滋病」(宣伝部は中国社会のエイズ)だとののしる人もいる。

 当初、この論文は焦氏から友人へ電子メールで送られ、友人によってインターネット上で公にされた。以後、中国語から英語などの外国語に訳され、国外でも注目を集めるようになった。さらに、イギリスのBBCやアメリカのVOA、フランスやドイツの放送局、「ニューヨーク・タイムズ」や「フィガロ」、台湾、シンガポールなどの日刊紙も、相次いで報道。

 しかし中国国内では、この論文に対する注目度や反響の大きさについていっさい報道されず、やがて論文を掲載するホームページへのアクセスが遮断されたと、焦氏は日本語版で明かす。

 過去の中国政治の流れを踏まえると、この論文は改革派からの意を受けて発表されたもので、改革派対保守派の争いを反映しているのではという憶測が一部では流れている。しかし北京大学の教員であった人物はこう指摘する。

 「政治的背景があるかどうかは、今の時点ではわからない。それより、大学側が明確な理由を示せないという異常事態の中で焦助教授を停職処分に踏み切ったのは、大学が自ら大学の自治や学問の自由を放棄したことになり、悪い前例を作ってしまった。大学は彼を守るべきだった」

 論文発表から半年を経て今回の突然の処分。だが処分は暫定的なもので、最終決定ではないと焦氏に伝えられている。最悪の場合、大学からの除名処分もあり得ると、北京大学関係者の一人は懸念する。


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