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〔061〕 総統就任演説で内政問題への取り組みに注目した客家
【2004/05/21】

 台湾の陳水扁総統は5月20日、中華民国第11代総統就任式で「族群の和解を促進し、全国民の団結に努める」と宣誓。その後の40分を超す就任演説の中でも、台湾を構成する族群間に深刻な問題が存在することを認め、その解決方法を探っていくと述べた。

 とりわけ、「私たちの祖先は海峡を越え、台湾に渡ってきた。その時期や出身地、母語に違いがあっても、この台湾の地で共存してきた」という陳総統の演説に、うなずく有権者は少なくない。中でも客家の一人は、この言葉を感慨深く聞いたという。

 従来、客家は外省人とともに国民党の支持母体となってきた。ところが今回の総統選挙では、客家が多く住む桃園や新竹、苗栗の3県で、陳総統は2000年の総統選挙と比べると得票数と得票率を約1・5倍にまで伸ばした。

 候補者数の違いがあり単純に比較はできないが、今回の選挙では客家が民進党へという投票行動が明確になったとみられている。

 先の客家も民進党支持を表明し、陳総統に投票した一人だ。
 「陳総統と民進党は、我々客家を配慮する政策を推進してくれた」


(総統選挙中の民進党集会に、陳水扁支持を表明するのぼりを持って参加した客家)

 民進党が2000年に政権に就くと、行政院(内閣)に「客家委員会」が設立された。客家電視台(テレビ局)の開局が許可され、客家語での放送が始まった。母語を絶やさないため、小学校で客家語の学習が可能となった。

 外省人の中には、民進党の客家への対応は選挙目当ての優遇策だと、切り捨てる人も少なくない。しかし選挙が近づくと、自分も客家だと打ち明ける候補者が珍しくないのも、台湾政治の特徴だ。

 多数派の本省人、それに続く外省人、そして本省人に含められるが、福建系本省人とは一線を画し第3の集団となる客家の動きが台湾政治に強い影響力を持ち始めている。

 日本を始め海外のメディアは、陳総統が台湾の独立志向にどう言及するか、あるいは対中国姿勢をどのように表明するかといった対外関係に注目する記事を主に報道した。ところが現地紙記者は、台湾人は国内問題への対応に強く関心を寄せたと語る。

 「多くの台湾人は選挙で鮮明となった族群間の対立を今後どのように和解の方向に向け、まとまりのある台湾社会を作り上げようとしているのか、そちらの方が重要だと認識し総統演説に注目した」

 「市民社会の確立によってこそ、族群や血統、言語や文化の違いでもたらされる限界を突き破り、新たな国家共同体の復興に向かって進むことができる」
 こう述べた総統演説で、別の客家は陳政権の意欲を感じられたという。

 この就任式に対抗し、連戦・国民党主席や宋楚瑜・親民党主席が出席した野党連合の集会では、参加者が黒い気球や風船を飛ばしたり、「要民主真相」のプラカードを掲げ、総統選挙の票の再集計が決着しない中での就任式開催に抗議の意志を示した。総統府近くでは、移動式トイレに爆発物が仕掛けられ爆発した。警備当局との衝突もあった。

 現地記者は、「台湾社会の確かな変化を野党連合は認識できないでいる」と、分析した。


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