・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




〔053〕 富裕層のステータスとして雇用される家政婦
【2004/01/14】

 急成長する中国経済に乗った者と乗れなかった者との格差をもっとも象徴する日常的な光景の一つに家政婦の存在があげられる。

 北京郊外のある家庭では、20畳はあろうかという広い板張りのリビングを、20歳になったばかりの若い女性が雑巾がけをしていた。30代半ばの夫婦に子供1人というその家では、掃除、炊事、子育てをそれぞれ行う3人の家政婦を雇っている。

 3人のうち2人は河北省から、1人は黒竜江省からやってきた。彼女たちはともに家政婦を養成する学校に通って、現在の仕事を見つけた。

 北京や上海など都市部には、家政婦を養成する学校がある。そこで学ぶのは全国各地の農村から集まった若い女性たちで、1ヶ月ほどのうちに、料理や子育てのほか家電製品の使い方や北京語、上海語の発音などを勉強する。

 家電製品の使い方を学ぶのは、都市部の富裕層の家庭では日常的に使われる電子レンジやエアコン、食器洗い機などの使用方法を知らない女性が多いためだ。彼女たちの中には、洗濯機さえ初めて見るという人も珍しくない。

 学校で必要な知識と技術を学んだ後、家政婦紹介所を通して仕事を見つけることになる。結婚や出産をした女性であったても外で働くことが一般的な中国では家政婦の需要が高く、仕事は比較的簡単に見つかる。

 ただし、家政婦紹介所では雇い主に選ばれるのを待つというのが実情だ。雇う側は、技能のほか、出身地や年齢、器量などを考慮して選ぶ。

 先の家政婦の1人は、中学を卒業してすぐに北京に出た。北京に出てきた理由について聞いてみると、「都市への出稼ぎはしごく当然のこととして受け止めている」と言う。

 「生まれ故郷はとても貧しく、まともな仕事にありつけない。同年代の人は中学を卒業すると大半が出稼ぎする。故郷で生活できればいいけど、そんなことは言ってられない。欲を言えばきりがないが、収入も故郷の仕事と比べればそれほど悪くない」

 家政婦の収入は月に500元程度(約7500円)。北京人に、現在の一般的な人の月収がいくらくらいかと聞くと、大半の人は1000元(約15000円)ほどと答える。

 つまり月に1000元ほどが下働きの妥当な月収だとみなされている。その都市部住民にとって妥当だと思える月収の半額程度が、農村からの出稼ぎ労働者にとっては妥当な金額だと受け止められている。

 なかには雇い主から暴力をふるわれたり、1〜2ヶ月ほどで一方的に解雇されたり、賃金が払われないケースもある。だが、学歴や人脈など、中国社会で生き抜く術が限られる彼女たちにとって、家政婦の仕事は都市部で現金収入となる貴重な職種の一つと受け止められている。

 わずか15年ほど前には、家政婦を雇うことはブルジョア的だと見なす人が多かった。ところが現在では高い経済力と広いマイホームを持つ富裕層が多く現れ、家政婦を雇うことはステータスだと考える人も少なくない。

 かつては「保姆」と呼ばれていた家政婦を、中国政府は2000年から「家政服務員」とし、資格の必要な職種の1つとして認定した。


◆ 君在前哨/中国現場情報 ◆





君在前哨/中国現場情報
 トップ・ページへ  返回首頁