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〔052〕 言い争いが力ずくの争いになりかねない危険性
【2003/12/08】

 「警戒せよ、広告にかこつけ日本が中国を侮辱している」

 こんなタイトルで、中国の車雑誌に掲載された日本車の広告が中国のインターネットの掲示板に転載された。トヨタ自動車が中国で発売したプラドとランドクルーザーの広告に対する批判だ。

 プラドの広告は、「プラド、あなたを尊敬しなければならない」とするコピーが付き、石橋の欄干の獅子像がプラドに敬礼している図柄。石橋が日中戦争発端となった盧溝橋に似ているとともに、権威の象徴や守護神でもある中国の獅子が日本車に敬礼する姿が侮辱的だと解釈されたようだ。

 ランドクルーザーの広告は、中国の国産車と思わせる軍用トラックを牽引しながら坂道を上る写真。トヨタ車が牽引するのが人民解放軍の車に見えるとして問題視しされている。

 民族感情を傷つけたことに対する抗議からトヨタの広告を逆手にとり、獅子像がプラドを片手で押さえ込む写真とともに「プラド、お前を潰してしまう」というコピーが付いた写真がインターネットに出回り始めている。

 この批判に前後して、山東省の済南市では複数の青年が日の丸を焼き、日本製品の排斥を訴える横断幕を掲げる写真が「熱血青年が街頭で抗日を訴える」というタイトルで掲載された。

 中国のインターネットの掲示板上では日本批判が相次いでいる。だがこの中には、誤解、偏見にもとづく意見も少なくない。このため日本の事情を知ると思われる中国人からの反論もある。

 上海の女子大生だという中国人女性は、 「どうしてこれほどまでに、日本を批判するのか。そもそも、日本人があなた方に何をしたというのか」と憤慨し、「実は、やっかみから日本を批判しているのではないのか。愛国者づらしているが、本当は自分たちが日本人におよばないことを自覚しているからだろう」という一文を寄せている。

 日本に住む中国人研究者の一人は、最近、中国の掲示板を見るのをやめたという。

 「掲示板は中国人の感情を表していはいるが、あまりにも感情的で浅ましい意見が多すぎる。狂気じみた愛国主義が露呈し読むにたえない。多くは、個人的な不平や不満を愛国主義の名で正当化しようという意図が読みとれる」

 先の戦争を体験した中国の老年層の反日感情は今も根強い。中国東北部の食堂で、入店を断られたことがある。経営者は日本兵に兄を殺されたと言い、怨念は今もはれないと強い語気で言われた。

 しかし、最近のインターネット上で反日感情をあらわにするのは青年層が主体だ。この背景として90年代からの中国政府による愛国主義宣伝運動を指摘する声がある。中国政府を批判する投稿や記事には素早く介入するが、日本批判に対して中国政府は見て見ぬふりをしていると、非難する人物もいる。

 さらに、日中間のいざこざを煽り立て小銭を稼ぎ知名度を上げようと企む輩がいると、指摘する中国の編集者がいる。

 「日本に住む中国人ジャーナリストが、何度か日本批判の記事を売り込んできた。日本国内での反中国的発言や動向を取り上げ、大きく扱ってほしいという依頼だ。しかし、意図的に事実をねじ曲げ、日本の実情を知らない中国人の反日感情を煽るような内容が多く断った」

 最近、安徽省合肥市で日本のサッカーチームのユニフォームを着ているという理由で、現地の中学生が同じ年代の学生たちから殴られユニフォームを破られるという事件が発生した。

 日本のインターネット掲示板にも、中国人に対する感情的な批判が多い。言葉だけの争いから力ずくでの争いになりかねない危険性が感じられるようになってきた。


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