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〔051〕 自分が望む仕事に就けない 中国の若者たちの就職事情
【2003/11/24】

 現在、高い経済成長により、学生たちの就職率も高いように思われているが、現実は就職難だという学生は多い。特に映画関連の就職先はとりわけ厳しいと言う。

 「多くの企業が採用人数を抑え込んでいる。映画関連では、全国的に各映画製作所がここ数年、新規採用を見合わせている。大学は卒業したものの、働く場がないに等しい状況だ」

 北京電影学院(映画大学)を卒業した一人は、現場での経験が積めないとして将来への不安をにじませる。

 一般的な総合大学を卒業した就職希望者も優遇されていない。上海の総合大学を昨年卒業した青年は何社もの面接を受けた経験から、こう言う。

 「どの企業からも、何が出来るかと面接で尋ねられた。中国企業は即戦力を求める傾向が強いと聞いてはいたが、新卒者にいきなり答えを求められても難しい。実務経験がないのだから」

 面接から得た印象は、人はいくらでも代わりがいる。ここ数年の間の働き手がいれば充分だ。欠員が出れば、また人を採用すればいい。将来に向けて人を育てようという意識が企業には感じられないと言う。

 人気の高い外資系企業の中にも新卒者の募集をやめ、関連する分野で働いた経験者あるいは転職者だけを募集する場合が少なくない。

 映画製作所が新規採用を止めている背景には、余剰人員が多すぎるという現実がある。映画人にとっては憧れの就職先となる北京映画製作所(北影)も新規採用を行っていない状態が続く。

 北影の職員たちが住む居住区で目立つのは定年退職した老人たちの姿だ。退職後も住居を補償しているためだ。北影の現状を職員はこう説明する。

 「北影は国有企業の典型例。過去、毎年、多くの人材を雇用してきたが、その間、採算性は度外視されていた。その結果、仕事より人が多いという状態が長年続いた。ところが、改革・開放政策で独立採算性となり、政府からの資金援助はあてに出来なくなった。すると、採用方針を一変させた」

 新規作用が止まったのは1999年頃から。以後、人減らしを続けている状態だというが、自然減少を待つだけで、具体的なビジョンが示されているわけではない。

 しかも、現在、北影などの映画製作所の職員には、給料が支払われていないに等しい。撮影所の職員であるという肩書きで、仕事は自分で見つけるしかない。同僚、友人、知人のつてを頼りに賃金が支払われる撮影を探すという厳しい状況に追い込まれている。

 このため、映画よりはるかに製作本数が多く、金額の高いテレビドラマやコマーシャルの仕事を請け負わざるを得ない。先の職員は、高い競争率を勝ち抜き、電影学院で学ぶ学生たちに明るい未来は今のところないという。

 北京大学を始めとする一般的な総合大学の授業料は年間5000元(約7万5000円)程度。ところが、北京電影学院はその倍の1万元(約15万円)に達する。高い授業料を親戚や知人から借りて支払っている学生も少なくない。この借金をいかにして返済するかも、彼らには大きな問題だ。

 社会科学院は今年の中国の国内総生産(GDP)の成長率は8・2%に達すると発表した。それだけに私営企業も続々と誕生し、就職先がまったくないわけではない。しかし北京電影学院の学生はこう言う。

 「自分がやりたいと思う仕事に就きたい。大学を卒業していきなり個体戸(フリーランス)になっても、すぐに仕事をこなせるはずがない。中国は急変しすぎる」


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