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〔050〕 富貧の差の深刻さを象徴する中国の車社会への突入
【2003/11/13】

 「人民日報」によると、この10月、北京市の第5環状線高速道路(第5環路)の建設が完了し間もなく全線開通する。5環路は一部開通していたが、全長約93キロにおよぶ同市環状線道路としては初の高速道路を3年ほどで完成させた。

 この道路、2008年開催の北京オリンピックに向けた最初の大型インフラ事業で交通渋滞の緩和が第一の目的とされているが、全長約190キロ、北京と周辺都市とを結ぶ中国最長の環状線高速道路・第6環路も2005年の開通が見込まれている。既存の第2環路から第6環路までの5本の環状線がつながれば、広大な道路網整備が一区切りとなる。

 道路網整備により、長距離輸送車両による北京市内の交通渋滞が緩和されるほか、市中心部の大気汚染の抑制が期待される。だが道路網整備は北京市民、とりわけ富裕層の生活にも大きな影響を与えてきている。

 道路網の整備とともにその周囲の宅地開発が私営企業の手で進められ、「商品住房」と売り出された。「商品住房」とは富裕層向けの住宅で、高級ホテルなみのサービスを売り物にする高級マンションやヨーロッパ風の一戸建て高級住宅街がいくつも登場している。多くは観光客にはほとんど馴染みのない土地、北京市北部に多い。

 高級住宅に住む住民の一人は、北京市北部は山の手だと言う。
 「北京の風は北風が多い、それだけに北京の南は吹きだまりだとして嫌われる傾向がある」

 高級住宅が点在する地域は、市中心部から公共バスなら2時間近くかかる。10年ほど前までは敬遠された田園地帯だった。今も周囲はのどかな田畑が広がる一画に、周りとは不釣り合いなほど高級な住宅群が建つという光景も珍しくない。

 こうした富裕層が住む住宅は広い敷地に整然と住宅が並び、正門には24時間警備の守衛が立ち、人や車の車の出入りを厳しくチェックする。各家の床面積は約100平米以上。かつて企業や政府機関などの単位がそれぞれに割り当てた画一的な住宅とは趣がまったく異なっている。

 富裕層の郊外への転居を可能にしたのが、道路網の整備であり自家用車の増加だ。高級住宅に転居できる富裕層は1台あたり日本円で150万円近くする自家用車をすでに購入済みで、最近では2台目の車を購入し一人1台の割合に近づきつつある。

 人口規模においては東京と北京はそれほど変わりがないが、郊外と市中心部を結ぶ公共交通手段としてはバスが中心となる北京市。地下鉄や近郊電車などの建設が急務の課題とされている。それだけに、郊外と中心部を自由に行き来できるのは自家用車を持てる富裕層に限られる。

 市中心部に古くから住む住民の一人は、「金持ちは郊外に逃げ出せるが、貧乏人はそうはいかない。古くて狭い住宅にしがみつくしかないが、その住宅さえ都市開発の名のもとに次々と壊されている」

 片側3車線、制限速度100キロが標準となる幹線道路の出現は中国が車社会に突入したことを告げているが、同時に富裕層と貧困層の間に横たわる溝の深刻さも表している。


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