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〔044〕 都市と農村の格差を浮き彫りにする民工子弟学校
【2003/09/25】

 中国の初等教育の現場には、3種類の学校が存在する。富裕層の子どもたちが通う私立の貴族学校、通常の公立の学校、そして農村から都市への移動した出稼ぎ労働者の子どもたちが通う、「民工子弟学校」だ。

 北京、上海、広州など著しい発展を成し遂げつつある地域、つまり貴族学校が開校されている都市部に民工子弟学校も存在するように、民工子弟学校は現代中国の都市と農村の格差を浮き彫りにしている。

 改革・開放政策で都市部と農村部との経済格差が顕著となり、農民の都市への出稼ぎ労働が急増。確固たる当てがないにもかかわらず豊かな生活を求めて都市部へと流れ込むことから、出稼ぎ労働は「盲流(盲目的流動)」と以前は呼ばれたが、最近は「民工潮」と呼び方が変わった。

 四川省から上海に出て建設現場で働く男性労働者は、「上海の経済発展に農村出身者が欠かせないにもかかわらず、上海人は我々の存在を無視している」

 山東省から北京に移って5年になる家政婦は、「私のような田舎者が北京人の仲間入りをするのは無理だとわかった」

 盲流が蔑称だとして民工へと呼称が変わったとはいえ、都市住民にとって農村出身者はしょせん流民にすぎないという認識が今も強く、出稼ぎ労働者への露骨な軽蔑や差別が目立つ。

 「安い賃金でも不平不満を言わない勤勉な労働者であれば使ってやるという態度があからさまだ」と、先の二人は異口同音に語る。

 現在、民工は1億人をはるかに超えたといわれる。都市住民からいくら嫌われようと、故郷に戻っても展望が見出せない彼らは5年、10年という期間を経て、家族を呼び寄せたり民工仲間と結婚したりして都市生活者となりつつある。そこで問題となるのが子どもたちの教育だ。

 戸籍を都市へ移せない民工がすでに定住地となった都市の公立の学校に子どもを入学させるには、学費の他にさまざまな名目で金銭を要求され、入学を断念せざるを得ない状況に追い込まれてきた。そこで誕生したのが民工子弟学校だ。

 学費は年間約1000元(約1万5000円)。公立学校の3分の1程度、都市住民の大半が持つ携帯電話機ほどの額だが、それでも支払えない者が少なくない。

 創立者の多くが民工出身者で、民工子弟学校は法的に認められた学校ではない。また、校長や教師の大半が無資格で、教育水準もけっして高くない。それでも入学希望者は多い。

 「民工子弟学校を卒業しても卒業資格は認められないため、義務教育を修了したことにはならない。それもで子どもを学校に入れなければ読み書きもできず、将来の展望も開けない。子どもも入学できることを楽しみにしている」と、上海の建設労働者は民工子弟学校に望みを託している。

 1986年、新中国建国後初の義務教育法が制定され、無償教育が明示された。89年からは経済的理由で学校に通えない子どもたちの就学を援助するプロジェクト「希望工程」(希望計画)も始まっている。しかし、温家宝総理が最近、義務教育普及率の目標値を85%以上と発言せざるを得ないように、根本的な問題解決にはいたっていない。

 民工子弟学校は上海や北京ではすでに500校を超えていると中国の研究者は見る。しかし入学率では、都市住民の子どもたちが90%近くに達しているのに対し、民工の子どもたちは10%台にとどまっていると推測する。


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