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〔041〕 同姓同名による不正防止目的に変化する人名
【2003/08/31】

 中国人の名前が1文字から2文字へと変わりつつある。法的な規制はないが、出生届を提出するにあたり、鄭 義 、顧 城といった名前を1文字だけとするのを避け、高 行健、遇 羅錦というように2文字で命名するよう、公安局は新生児の両親に勧めている。

 中国では、日本人以上に子どもの命名に神経を使う。さらに一人っ子政策(独生子女政策)で、両親に祖父母も加わって命名は一生に一度の重大事と受け止める傾向がより強くなっている。

 それだけに、名字と名前のバランスや大きな幸運をもたらす文字探しに躍起だ。だが、やっと見つけた文字も、先祖に同一漢字が使用されていれば、避ける傾向は今もって強い。気に入った漢字を探し当てても、徒労に終わることも少なくない。

 最近、子どもが生まれた親は、「名前を2文字にすることで、想像以上に時間がかかった」と言う。書店で、命名に関する書籍を買い込み、インターネットで命名専用ホームページにアクセスし、ようやく決めることができた。

 中国人の名字は500種、あるいは2万種など諸説ある。「欧陽」「仲孫」といった2文字からなる名字もあるが、圧倒的多数は「周」「胡」などの1文字。しかも100から200種ほどに集中している。

 「馬」姓には回族、「羅」姓は南方に多いなど民族や地域性もあるが、漢族の中では「李」「王」「張」「趙」「劉」の5姓だけで、総人口の3分の1を占めている。

 「人民日報」によると、福建省厦門戸籍の住民登録者数137万人の名字は480種、このうち最多は「陳」の21万人余りで、次に「林」の12万人余り。「陳」という名字だけで実に人口の15%、「林」を加えると24%に達することになる。

 一方、名前に関しては、古代では1文字が基本とされていたが、その後、2文字へと移り、再度1文字が通例となるなど歴史的変遷もあるが、現在は1文字と2文字の名前が混在している。

 人口1億2700万人の日本人の名字が約30万種ほどに対し、その10倍を超える人口の中国人が1文字で100から200種ほどの名字、さらに名前が1文字だけとなると、全国に同姓同名が多数出現。しかも中国人の氏名は日本ほど男女の違いが明瞭でないこともあり、男女間での同姓同名も多々ある。

 新中国建国までの約100年間は1億人余りの人口増加で、中国の人口は5億人強だった。だが、革命後は身分や経済的理由から結婚できなかった層も結婚できるようになるとともに死亡率も低下。

 さらに毛沢東が労働力重視を唱え人口抑制を説いた馬演初の「新人口論」(1957年)を批判するなどして人口急増に拍車がかかった。1987年、革命からわずか39年で、1949年当時の人口5億4000万人の倍となる10億9000万に達した。

 こうした人口急増により、同姓同名による混乱が際立つようになっていた。さらに常時携帯が義務づけられる居民身分証(身分証明書)、あるいは職業資格証明書、結婚証明書や離婚証明書を偽造・悪用し、同姓同名の他人になりすましてパスポートの不正取得、失業保険の不正受給、都市戸籍を狙った不正行為などが多発している。

 警察は証明書偽造グループの摘発に乗り出しているが、撲滅できないでいる。名前を2文字へという行政指導は、国内の混乱ぶりを象徴する出来事の一つだ。


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