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〔040〕 政府と密造業者のせめぎ合いが続く海賊版市場
【2003/08/23】

 先頃、違法コピー商品、いわゆるVCDやDVD、音楽CDの海賊版などが広東省で当局によって粉砕処分された。中国政府の海賊版に対する知的財産権保護への姿勢を内外にアピールしたものだが、その当日、北京や上海では普段と変わりなく海賊版が販売されていた。

 北京で海賊版を扱う店で尋ねると、店員は政府の動きを知らなかった。だが、「それは広東省でのこと」と、まったく気にする様子がない。

 海賊版の販売ルートはさまざまある。一般的なのは繁華街に店を構える専門店だ。国営・私営にかかわらず、1枚・15元程度(約200円)で購入できる。

 地下道や路上では、ポルノ作品が売られる。通行人にささやくように声をかけるのは日銭稼ぎの販売人で、農村部からやって来た「打工」とか「民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者が多い。

 日本や欧米の合法的ポルノ映画のほか、日本同様に中国でも禁止となる無修正作品もあり、一般の作品よりやや高めの1枚20元程度(約300円)で売られる。販売人は当局の摘発を逃れるため、手提げカバンや買い物袋に商品を入れ、場所を頻繁に移動しながら売り歩く。

 職場に出張販売してくることも珍しくない。映像制作関係の会社が複数入居する北京市内のビルには週に2度ほど、大きなトランクに海賊版を大量に詰め込んで販売人が訪れる。客が映像関係者だけに、中国、台湾、香港、日本、欧米のマニアックな作品が多く、一般の店ではあまり見かけない商品が手に入る。

 映像制作の仕事に携わる者が海賊版を購入することは、結果的に自分たちの権利を侵害することになるのだが、彼らはまったく意に介していない。

 「値段は市価の半額程度の8元ほど(約120円)で安いし、資料にもなる。それに映画館に行く時間を割く必要もなく、じっくり観られるのがいい」

 入れ替わり立ち替わり客が訪れ、5枚、10枚とまとめ買いをしていく。半日で2000元(約3万円)ほどの売り上げになると販売人は言い、「ここはすこぶる良い販路」だと顔をほころばせた。

 海賊版は過去、中国国内で製造されてきたが、当局の取り締まりが厳しくなったこともあり、最近は香港や台湾などで作られ広東省や福建省あたりから秘密裏に荷揚げされることが多いと推測されている。

 海賊版の元となる作品は日本や台湾、香港、欧米で発売された正規のDVD作品だ。さらに中国映画の場合は、制作側からの横流しがあると言う関係者が多い。

 「国内での新作公開直前に、海賊版が出回ることがある。こうした場合は、編集段階でのテープが持ち出されたケースだ」と、映画人は打ち明ける。

 かつては、映画館にビデオ・カメラを持ち込み隠し撮りした映像がVCDとして売られることもあった。画面の中に観客姿が映り込んだり、映像が斜めになっていたり、音声がはっきり聞こえないことも多かった。だが、粗悪品はかなり減り、今では海賊版が完全に”市民権”を得ている。

 中国文化省などを中心に、数年前から、海賊版の押収・廃棄処分が続けられている。「掃黄・打非」(ポルノ・非合法作品取締り)」と題するキャンペーンもあった。

 だが、映像関係者はこう言い放つ。
 「政府が躍起にあっても海賊版が中国から消滅するとはあり得ないだろう。都市部でDVDデッキが普及し、やがては地方にもこの波は広がる。それだけに、海賊版の需要はますます増加する」


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