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〔038〕 経済格差を助長する雇用主側の著しい搾取
【2003/04/27】

 改革・開放路線へ転換して以来、北京、上海など沿海都市部の経済成長とともに都市部と農村部との間に広がる経済格差に注目が集まるが、都市部にも大きな問題が浮上している。

 都市住民間の経済格差だ。その要因として、労働者が問題視する一つに雇用主側による搾取がある。映画界もこの問題とは無縁ではなく、最近も撮影現場でこんな事態が明らかになった。

 100%外国資本による映画であっても、中国国内では単独で撮影を行うことは法的にも物理的にも不可能だ。法的には、現地制作機関との「協力制作」としなければ当局から制作許可が得られない。物理的には、ロケ現場との折衝や物資の調達などで中国人スタッフによるサポートを得なければ撮影を円滑に行えない。

 このため今春、制作された外国資本の映画も、中国との協力制作として撮影が始まった。中国人スタッフは現地の撮影所から派遣されることになり、それに先立ち外国の制作側は録音や照明といった中国人の専門部門現場責任者一人に対し月1万5000元(日本円で約20万円相当)を支払うことで撮影所と合意し契約を結んだ。

 大都市の撮影所に所属し外国との協力作品を手がけてきた技術者は、月20万円相当の額ならばスッタフからの不満は出ないという。

 ところが撮影中、中国人スタッフから低賃金だと不平不満が出た。調べてみると、中国側撮影所が中国人スタッフに支払っていた額はわずか月4500元(約6万3000円)。契約金額の実に70%を撮影所側の取り分としていたことが判明した。

 人材派遣業務を行う中国人経営者によると、依頼主側からの金額の30%程度を雇用主の取り分とし、残り70%を外注費として被雇用者に支払うのが一般的だという。この割合は日本もほぼ同様だ。

 ところが先の作品では雇用主とスッタフの取り分が逆転した形で、「搾取以外の何ものでもない」と、先の中国人経営者は驚きを隠さなかい。

 数年前、総製作費60億円と銘打って大々的に公開された中国映画があるが、撮影現場ではミネラルウォーターの補給が途切れ、スタッフが身銭をきらなければならない事態に陥ったことがある。

 制作幹部の一人が制作費の一部を私的流用し株への投資に使われたと、現場では噂されていた。その後、賃金の遅配とともに、当初の契約金額をかなり下回る額しかスタッフに支払われなかった。

 「昨今、労働条件の改善を求めるデモやストライキが各地から伝えられるが、デモやストライキにいたらない問題が日常的に噴出している」と、撮影所のスッタフは言う。

 一見、華やかな世界に見える映画界だが、現場スタッフを取り巻く労働環境や労働条約は他の労働者と大きな違いはない。しかも、こうした労働問題となるべく状況が明らかになっても、大半の中国人労働者は自らの権利を主張し問題を解決する手段を持ち得ていないのが現状だ。


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