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〔037〕 映画界入りは実業界へ転身する重要なステップに
【2003/07/09】

 中国政府は昨年秋、「税収徴収管理法実施細則」を改正・施行し、税務当局の権限強化を図り、私営企業の経営者などを中心とする高額所得者の脱税行為に注視している。この高額所得者には、俳優、監督など映画界の関係者も含まれる。

 これに先立ち、昨年7月、一人の有名女優が巨額の脱税容疑で逮捕された。文化大革命以後の初期中国映画として日本でも大ヒットした『芙蓉鎮』(謝晋監督)の主役を演じた劉暁慶だ。

 女優としての知名度をいかし、実業界にも進出。アメリカの経済誌『フォーブス』で中国の100人の大富豪の一人に選ばれ注目されていた最中の逮捕で、中国国内では大きく報道された。当局の発表によると、脱税額は1000万元(約1億5000万円)を超えるという。

 逮捕の数ヶ月前、北京で劉暁慶に会った企業経営者によると、当時すでに彼女は当局から常時監視され、移動の際には彼女が乗った車を当局の車がはさみこむように追尾していた。このため逮捕は免れないと覚悟していたが、彼女は身の潔白を強く主張したという。

 だが、この経営者は中国人の納税意識についてこう語る。

 「中国では、1980年まで個人所得税は徴収されなかった。ましてや計画経済の時代、国も税制を重視してこなかった。そんな時代に育ってきた人たち対し、改革・開放で市場経済に移行したのだから税をきちんと納めるようにと国が号令をかけても、税に対する意識がすぐに変わるわけがない。さらに、役人の汚職がますます深刻化している現在、正直者は損をするという風潮が広がっている。国も是正すべきところは是正し、もっと努力すべきだ」

 一方、この女優逮捕が映画界に予想外の皮肉な結果をもたらしたと言う映画関係者がいる。

 「以前から、映画俳優になれば金持ちになれるという安易な考えが若者たちにまん延していたが、劉暁慶逮捕でマスコミがさまざまなことを書き、映画界により一層関心が集まった。この中には、金にまつわる記事が多く含まれ、映画界入りして名声と富を得ようとする俳優志願者、とりわけ女優を目指す女性たちを強く刺激した」

 事実、あの手この手を使って映画に出演したいと願う俳優志願者が撮影現場に出入りし、プロデューサーや監督などに接近する姿を過去、何度も目撃したことがある。先の映画関係者の自宅にも、親戚、友人、知人などのあらゆるつてを頼り、電話で売り込みしてきたり自宅に直接訪ねてくる若者が絶えないという。

 「映画に出演したい。女優になりたい。こんな話ばかりが次々持ち込まれる。俳優になりたい動機を尋ねると、金にまつわる話が必ずといっていいほど出てくる。もう、うんざりだ。しかも、この種の売り込み攻勢は録音、照明といったスッタフにまでかけられている」

 こうした若者たちの多くは、映画界入りを実業界へ転身するステップと考える傾向が強い。いずれも著名俳優のやり口を参考にしてことだという。

 「俳優としての道をまっしぐらに進む気は最初からなく、名前を売った後、劉暁慶のように不動産、広告、化粧品、レストラン経営などに手を伸ばし、一気に成り上がろうとする。映画に対する姿勢も大きく変わりつつある」


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