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〔036〕 「放」か「収」か、表現の自由に対する認識の違い
【2003/04/27】

 「放」(自由化)と「収」(引き締め)が何度も繰り返されてきたのが中国だが、このところ映画の表現の自由に対し「放」か「収」か、関係者の間で認識が分かれる現象が現れている。

 徐々にだが「放」に向かいつつあるとするのは、国務院直属機関の国家広播電影電視総局(放送・映画・テレビ総局。以下、広電局)幹部と旧知の仲で、最近、その人物と会った映画監督だ。

 「広電局幹部は立場上、公式に検閲の廃止あるいは検閲の緩和など一切口にはできない。だがオフレコを条件とする雑談に移ると、映画製作者に配慮した発言に変わる」と、映画監督は内情を語る。

 「党や政府と製作者の板ばさみとなる官僚としての苦渋をにじませながら、ゆくゆくは検閲も緩和の方向にせざるを得ないとの考えを幹部は示す一方で、すでに大目に見ているケースが多々あると述べた」

 大目に見ているケースについて、具体的な示唆はなかった。だが映画監督は海賊版、いわゆる違法なコピー商品の存在を指していると受け取った。

 違法コピー商品のまん延は、中国がかかえる大きな問題として海外からも批判の的となっている。政府は今年3月、コピー商品に関する情報提供者に最高で30万元(約450万円)の奨励金を与えると発表、また昨年からは海賊版を取り締まる監督員を全国に配備し、摘発に乗り出している。

 しかし現実には、DVDやVCD、あるいはコンピュータ・ソフトなどの海賊版は現在も堂々と売られている。それどころか、正規の商品を購入しようとしても、どこで売られているのかわからない状況だ。

 DVD、VCDの海賊版の販売価格は、1枚15元(約225円)程度。複数の北京や上海市民の自宅を訪問した際、コレクションを見せてもらったことがあるが、正規の品を購入している家は一軒もなかった。

 この海賊版の中に、検閲で制作禁止あるいは公開禁止となった田壮壮の「青い凧」、姜文の「鬼が来た!」、王小帥の「北京の自転車」など、ほとんどの作品が購入できる状態にある。

 これらの作品は違法コピー商品、あるいは検閲不許可作品だとして法的に取り締まり対象となる、だが、それを行おうとしないことを根拠として、映画監督は「放」に向かっていると考える。

 確かに、ポルノ作品のように隠れて販売されていない。露天で他の作品同様に、禁止作品が野放し状態で販売されている状況は、当局が黙認していると言わざるを得ない。

 だが、「放」と言える状況にはないとするのは、表現や言論の自由を研究する中国人学者だ。

 「当局がどれほど検閲で締め上げても、しばらくすれば検閲不許可作品を一般市民も見られるようになっている。著作権侵害もはなはだしいこの状態を悲しむべきか喜ぶべきか、立場によって大きく異なる。だが、法律で検閲の廃止が明文化されたわけではない以上、たまたま『放』のようになっているに過ぎない」と語る。

 その根拠として、日本でも報道されたが、テレビで放映された人気の歴史番組の再放送中止、あるいは雑誌の発刊停止や記事内容に関する当局の批判をあげ、「今後、さらに開放へと向かう根拠は見出せず、その保証も提示されていない」と言う。

 先の広電局幹部は、「自分の在任中は改革を断行するつもりはない」と断言したという。


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