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〔032〕 日本人記者に台湾メディアが激しく反発
【2003/05/27】

 関西方面を旅行し台湾へ帰国後、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群・SARS)の感染が確認された医師が所属する病院が、5月17日、台北市で記者会見を行った。この会見で日本人記者が、医師の日本での買春の有無を詰問、病院の管理責任を批判したとして、現地のテレビや新聞は激しく反発した。

※「有一位日本記者破口大罵」 (日本の記者が口汚くののしった)
※「這是対台湾旅客很大的侮辱」 (台湾人旅行者に対する多大な侮辱)
※「要買春不会到日本」 (買春するために日本に行くことはないはずだ)
※「實在是太冒犯」 (無礼極まりない)

 現地紙は日本人記者を非難する言葉をならべ、テレビ局は会見の模様を繰り返し放映した。台湾メディアの激しい非難に対し、市民はこの事態をどのように受けとめたのか。

 30代の男性ビジネスマンは、台湾全土がSARSで非常事態という時期に、買春を持ち出されたことで、感情的な反応をする人が少なからずいたと言う。

 「医師という立場にある人物がこの時期に日本へ旅行したことに対する批判は、日本側にすれば当然だろう。だが、馬偕記念病院の医師に対し、買春疑惑まで投げかけるとは想像だにしなかった。これが台湾人を強く刺激した」

 馬偕記念病院は、カナダの牧師が創設したキリスト教会の付属病院。100年以上の歴史があり、医療水準の高さで知られる。また社会福祉にも熱心に取り組み、信頼が厚い。

 それだけに、ニュースを見た直後は、日本人記者に対し腹立たしかった。同僚の中には、買春にまで思いを寄せなければならないとすれば、記者とは卑しい職業だと言う人物もいた。

 市民運動に積極的に参加する40代の女性は、日本人から買春の有無を問い質されたことにあきれたと言う。

 「台湾国内でどこの国の人たちが一番多く買春をしているのか、台湾人は皆よく知っている。海外旅行と買春が切り離せない日本人だからこそ、この種の質問をできるのではないでしょうか。正式な国交がなくても日本と台湾の密接な結びつきが続く中で、台湾人が買春に敏感になっている事実をもっと理解してほしい」

 2ヶ月ほど前、日本から台湾に向かう飛行機の中で、日本人乗客が女性客室乗務員の腰に触れる痴漢行為があったとして、現地到着後、事情聴取された。日本人は痴漢行為を否定したが入国を拒否され、このニュースは台湾で詳しく報じられた。

 以前には、台湾の性風俗を紹介する日本の書籍が発売されたことに関連し、馬英九・台北市長は買春目的の日本人観光客に対しては厳しく取り締まると言及。ホテルに女性を連れ込んだ60代後半の日本人男性が逮捕されたこともある。

 流ちょうな日本語を話す70代の男性は、日本に対する特別な思いが台湾にはあると言って、こう話す。

 「節度をわきまえ礼儀正しい日本人像が、あの会見では感じられなかった。まくし立てて質問する姿勢に、台湾人は尋問されている気分になった。私の周りには、差別感や疎外感をあじわわされたという人が多かった」

 後日、知り合いの日本人から、恥ずかしい態度を示し申し訳ないと、謝りの電話がかかってきたと言う。

 5月19日、世界保健機関(WHO)総会がジュネーブで開幕。台湾のWHO総会へのオブザーバー資格問題が焦点となったが、中国の強い反対などで否決された。

 会場前では複数の台湾人が、横断幕を掲げ参加を求めた。この中には英語に混じり、日本語での横断幕もあった。日本語によるアピールは、日本に対する台湾の思いが滲み出る。

 先の老人は、「日本の記者は、台湾と同じように中国でもあのような態度で問い詰めるでしょうか。どこの国とも対等の扱いであれば、台湾もこれほど反発しなかっでしょう」と残念がる。


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