・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




〔029〕 中国政府の情報操作と事実隠しでとまどう北京市民
【2003/04/27】

 中国での新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の際限ない感染者の広がりは、政府による情報操作の恐ろしさを露呈させた。

 北京市教育委員会は4月22日付で、SARSの感染抑拡大を防ぐための措置として、24日から2週間、小中高校に対し休校するよう指示した。

 しかし北京市民に問い合わせてみると、22日以前から親が子どもの登校をやめさせたり、学校が自主的に休校としていた。各大学も大半が休校になっている。当局の休校指示は、現状の追認でしかない。

 国務院弁公室は21日、メーデー以降に始まる例年の7連休を取りやめ、3日間だけとする措置を決定した。連休中の大規模な人の移動を抑え、SARSの地方への広がり予防するためだとしている。

 だが、21日以前から地方出身の学生などはすでに故郷へ戻り始めている。またアメリカやオーストラリアなどの外国籍を取得している人たちも、北京空港から出国しつつある。

 政府が北京市のSARS感染者数を過小報告してきたことが明らかになったのは4月20日。ところが、衛星放送で香港や台湾、日本からのニュースを見ていた市民は、それ以前から当局の事実隠しに感づき、病院関係者などから独自に情報を入手するなどしてきた。

 在日中国人ビジネスマンは4月中旬から中国出張を予定していたが、3月末から北京や上海在住の複数の友人・知人、関係者に連絡を入れ、現地の情勢を探った。その結果、日本で報道されている以上に、現地の人たちの動揺が大きく、中国入国を避けるようにと強く進言され、4月早々に中国行きを取りやめた。

 一方、3月の一カ月間、広東省に滞在していた別の在日中国人は現地から、「広東省ではマスクをしている人はほとんどいない。SARSは香港での出来事ではないか」と日本に連絡を入れてきた。

 事実、「人民日報」見る限り、中国政府はSARSの対応処置が万全だとアピールし、市民の動揺を押さえ込むのに必死だったことが明白となった。

 以下は、3月末から4月にかけての「人民日報」の報道だ。

※「外交部(外務省))のスポークスマンが18日の記者会見で、広東省でのSARS発生が収まったことを明らかにした」(3月20日付)

※「大部分の患者がすでに健康を回復している通り、SARSの治癒は可能と衛生部(衛生省)の張文康部長(大臣)が記者のインタビューに答えた」(4月3日付)

※「国内SARS患者のほとんどが広東省の一部地区に集中。6人の重症患者を除いて、患者の治療は順調。北京では市衛生行政部門が迅速な措置を取り、感染の拡大は見られない」(4月9日付)

※「呉儀副総理が、中国のSARSはすでに感染防止対策が効果を上げ発病者数が減少、完治者が増加している。政府は、WHOの支持と協力により、SARSの感染防止と根絶を達成する自信と能力があると強調」(4月10日付)

※「衛生部は、外国人や香港・マカオ市民が集中する各地方政府に、外国人と香港・マカオ市民へのSARS情報相談と医療支援活動を積極的に行なうよう求めた」(4月15日付)

※「WHO調査団は4日間にわたる北京視察終了後のインタビューで、北京市が打ち出した多くのSARS対応措置は、特徴的で創造性に富んでおり、強く印象を受けたと述べた」(4月16日付)

 今日(4月27日)、北京の複数の市民に問い合わせてみると、多くの市民が外出をひかえ、通りは閑散としている。高速道路などの出入り口では検問が行われだし出入りを規制、市民の動きを封じ込めようとしている。

 さらにテレビの報道番組に携わる人物は、「取材結果に対する検閲が以前より厳しくなった。局の上層部は政府の通達を受けたようで、市民をこれ以上動揺させないために取材結果をどのように報道すべきか、ますます慎重になり、対応に苦慮している」と述べた。

 北京撮影場のスッタフによれば、駅、デパート、繁華街など人が多く集まる場所での撮影が規制されだし、映画やテレビ番組の制作は撮影所や局内のスタジオを除き、屋外での撮影は中止に追い込まれている。

 SARS発生の初期段階での中国政府の対応の遅れを批判する声が大きくなっている。昨年11月に広東省で最初に感染者が報告されてから、政府が事実を公表したのは4月に入ってからだった。

 しかし、2月上旬には、「広東省一帯で奇妙な病が流行しているため、広州市にある中山大学への訪問を取りやめる」というメールが中国人学者から私のところに送信されるなど、すでに今年初めにはSARSへの警戒心が国民の間に広まっていた。

 4月26日現在、中国全土でSARS感染者は2700人、死者は120人を超えた。さらにWHOの発表では、世界28カ国・地域にSARSの感染者が広がっている。政府の情報操作と事実隠しが被害をより大きくしたと、北京市民の一人は政府を厳しく批判した。


◆ 君在前哨/中国現場情報 ◆





君在前哨/中国現場情報
 トップ・ページへ  返回首頁