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〔027〕 インターネットの文章を理由に国家転覆扇動罪を適用
 【2003/04/06】

 日本ではほとんど報道されていないが、北京師範大学の女子学生・劉荻(Liu Di。22歳)さんが北京市公安局に逮捕されたことに対し、中国国外で批判の声が上がっている。

 中国の人権擁護を求める「中国人権」、国境なき記者団などが伝えるところによると、大学構内から劉荻さんが連行されたのは昨年(2002年)11月。以後、1ヶ月以上、所在不明の状態が続き、父親が公安局に問いただし、ようやく逮捕されたことが判明した。だが逮捕理由や拘禁場所などについて、公安局は告知を拒否した。

 今年になってようやく公安局は、父親に劉荻さんが国家の安全を脅かしたという罪名で逮捕したことを通知したが、劉荻さんがどのように国家の安全を脅かしたかについてはいっさいの説明がなされていない。

 劉荻さんの家族や友人らによれば、彼女は「不銹鋼老鼠」(ステンレスのネズミ)」のハンドルネームで、中国社会に対する自分の見解をインターネットで述べたにすぎないという。

 中国政府は、インターネットが普及するにつれてウェブ上での言論管理を強めてきている。1994年に国務院がコンピュータ情報システムの保護を目的とするとして「コンピュータ情報システム安全保護条例」を制定して以来、インターネットへの管理に乗り出した。

 とりわけ注目されだしたのは2000年10月に公布された「中華人民共和国電信条例」や「インターネットBBSサービス管理規定」などから。「人民日報」は、条例制定は国家の安全や社会の安定などに危害を加える情報を防止するために必要だと伝えている。だが、政府が本格的に情報管理に乗り出したと不満を述べるネットユーザーは多い。

 最近も、次々と条例を制定、今ではインターネットカフェの管理にも乗り出し、利用者の身分証明や個人情報の管理を経営者に義務付けている。背景には、インターネット・ユーザーの急激な増加がある。

 インターネットの普及により海外発の情報にもアクセスできるようになり、政府や党以外からの情報に接する機会が確実に増えていることに対する危機感の表れといえる。

 このため、インターネット上で報道されるニュースについて、政府が管理するメディア以外からのニュース掲載は許可制となった。しかし、海外メディアあるいは個人がニュースを掲載することは実質的には不可能な状態になっている。

 また国外から発信されるホームページの接続に関して、反政府的とみなされる内容のものに対しては接続を遮断するなどの強硬処置が施されている。実際、中国国内の中国人家庭で、アメリカから発信される複数の中国語ニュースサイトに接続を試みたものの、いずれも接続できなかったことがある。

 個人でホームページを持つ一人は、「実質的な言論取り締まりで、閲覧の自由はもとより自由な発言さえ控えざるを得ない情況に追い込まれている。劉荻さんは政治的な運動に参加した経歴もないと聞いているだけに、彼女には政府の強硬姿勢が理解できなかったのでは」と推測する。

 劉荻さん同様に、インターネット上に発表した文章を理由として国家転覆扇動罪で逮捕、起訴された人、中国の民主化を求めるホームページから記事をダウンロードしたとして11年の刑を言い渡された人などが、欧米のサイトから伝えられ始めている。

 ラジオ、新聞、出版、テレビ、映画に続いて、中国政府の取り締まり範囲はインターネットにまで広げられようとしている。次回は、インターネットの管理条例の内容について、もう少し詳しくお伝えする。


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