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〔025〕 政治に続いて経済に翻弄される中高年層の悲哀
【2003/03/15】

 「四十五十工程」(40代・50代プロジェクト)が、中国で議論され続けている。経営難に陥った国有企業は、余剰人員となった単純作業に従事する労働者を中心に早期退職を断行してきた。

 対象となったのは、女性は40歳以上、男性は50歳以上を中心とする中高年層だ。しかし、退職させられた人たちは早期退職とは名ばかりだと、不満をあらわにする。「実態は一方的な解雇だ」。

 市場経済に適合する企業へと脱皮を図ろうとして国有企業は労働者を次々と解雇したものの、再就職先の斡旋はないがしろにされてきた。その結果、北京や上海などの都市部を中心に大量の失業者がうまれ、深刻な社会問題となり出した。

 このため中高年の再就職斡旋制度として、遅まきながら政府が対策に乗り出した。これが「四十五十工程」だとされる。

 しかし、30歳代を中心とする高学歴の若い世代にはビジネスチャンスはいくらでもある。だが中高年層、それも単純労働に従事してきた人たちとって、再就職先は皆無に等しいのが実情だ。

 政府は私営企業に対し、税制面での優遇策を条件に中高年の再就職を引き受けるよう要望。国家工商行政管理総局も、人員募集の際にはリストラされた人を優先的に採用するよう指導すると表明した。

 だが、斡旋される職種といえば3K的な職が中心で、再就職しても無断欠勤、遅刻、早退などが目立ち、辞めていく人も多い。

 こうした実態に若い世代からは、「リストラされた人たちは、職場は仕事をする所ではなく金をもらう場だという、依然として国有企業時代の労働感覚から脱却できていない」と手厳しく批判する。

 経営者も、「彼らが集まる職場は遅かれ早かれ第2の国有企業になりさがることはわかっている。政府がいくら声高に叫んでも、雇おうとする企業は多くない」という。

 リストラの対象とされる中高年層といえば、60年代に青春時代を迎え、文化大革で紅衛兵となった世代。現在の30代世代とは学力や知識で大きな差が指摘され、生活や労働に対する価値観も大きく異なる。

 都市部と農村部の経済格差はしはしば伝えられているが、都市部における労働者間の経済格差、とりわけ低所得者層の増大が顕著になっている。しかもこの構図は、30歳代を中心とする一握りの富裕層を頂点に、底辺に近づくほど年齢層が上昇するという世代の違いによる経済格差でもある。

 現在、38歳、日本での生活の体験から顧客サービスの重要性がビジネスチャンスに結びつくことを知ったという経営者は、こう言い切った。

 「社会主義経済しか知らない世代は、もはや中国にとって足かせでしかない」


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