・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




〔024〕 極端に少ない日本での地下電影(地下映画)の公開
【2003/03/03】

 当局の検閲をあえて拒否する「地下電影(地下映画)」の増加については以前、触れたが、なぜ日本では地下電影(地下映画)の公開が極端に少ないのかという疑問が寄せられた。

 確かに地下映画について、こうした疑問が生まれるのは当然といえる。なぜなら、検閲を拒否すれば中国国内では上映できないという不条理を製作者はあえて承諾するかわりに、唯一の公開手段となる外国での上映を前提として製作されるのが地下映画なのだから。

 現在、30歳代半ばを中心とする地下映画の作り手たちは、経済発展にともなう急激な社会情勢の変化の中でもがく人々を主人公にすえ、リアルな映画を撮ろうとする内容が多い。

 彼らに共通するのはドキュメンタリータッチで、無名俳優、あるいは素人を起用し、セットではなく町中での撮影をあえて敢行するという手法だ。

 第1期の地下映画となったある作品は、売春婦を主人公に制作に乗り出した。しかし当時、国内に売春婦はいないとする政府の主張を考慮し、作品名から中国を連想させる言葉を省いた。だがそれでも密告で映画制作の動きを察知した関係機関は、制作の中止を迫りさまざまな圧力をかけてきた。

 ただ幸いなことに、わずかとはいえすでに資金は友人や知人たちから集めていた。撮影機材は国の撮影所からの貸し出しではなく、私営の機材レンタル会社から偽名で借りていた。俳優、スタッフともに、圧力には屈しないという意思統一が出来ていたこともあり、撮影を続行でき完成にこぎ着けた。

 ところが日本ではついに公開できなかった。日本の配給会社にアプローチしたが、むげに断られたのだった。日本で地下映画の公開本数が極端に少ない理由として、配給会社のスタッフは「理由は実にはっきりしている」と言う。

 「中国政府からのペナルティを会社側が恐れて、しり込みしているからにほかならない」

 配給会社に、地下映画の情報はかなり入ってくる、製作者側の売り込みも多い。作品も見ることが出来る。しかし地下映画を一度でも取り扱えば、そのペナルティとして人気俳優が出演する作品や著名な監督の作品など、検閲を受け当局から公開許可を得た通常の作品を取り扱えなくなるためだという。

 だが、中国映画人はこの説明に反発する。日本側は、中国の映画関係機関からの申し出に反論することもせず、一方的に受け入れてしまっている。その姿勢は、中国政府を恐れ屈服しているように見えるという。

 「過去、地下映画を取り扱ったヨーロッパの配給会社は、『映画公開の場は中国の主権が及ぶ中国国内ではない』として、反論を述べ関係機関とわたりあった。その結果、地下映画の上映が出来たし、その後、通常の作品の公開も手がけている。日本側も堂々と自分たちの主張を展開すれば、日本での地下映画の公開本数はもっと増やすことが出来る」

 失業者、ホームレス、あるいは同性愛者など、中国の暗部を扱いすぎるという理由が、地下映画の検閲で何度か指摘されたことがある。しかし、「社会のはなつまみ者」と批判されようとも、中国社会に彼らが存在するのもまぎれもない事実だと言う監督がいる。

 地下映画の中には市井の中国人からの強烈なメッセージとともに、製作者たちの意志の力も映し込まれている。その映画が日本では上映されにくい。


◆ 君在前哨/中国現場情報 ◆





君在前哨/中国現場情報
 トップ・ページへ  返回首頁