アッパーエジプト旅行記(3)

アスワン編 

 アブシンベルを後にして、次の目的地はアスワンです。アスワンまでは40分ほどのフライトです。また飛行機の中ではジュースをもらいました。いい感じです。
 今回はアスワンではおよそ5時間ほど(実際に観光できるのは4時間ほど)しか時間がありません。その仲で出来るだけ効率よく観光地を廻らなければいけません。あとげんと地球の歩き方を見ながらどこを廻るか決めているうちに飛行機は空港に到着しました。
 このアスワン空港はとてもきれいです。おいおい、カイロの空港はあんなに汚いし、アレキの空港だって小さいのに…。
 空港内でまた持参していたパンをツナサンドにして食べて腹ごしらえを終えた後タクシーをつかまえにいきます。

 空港から一歩出た途端早速タクシーの運ちゃんが矢のように声を掛けてきます。すぐ決めてしまうのもあれですのでまずは全体の様子を伺いながら歩きます。どうも歩いてみるとここもローカルバスはない(もしくは簡単に見つけられない)様子。相変わらずひどいな〜、エジプトの観光地。そりゃあ観光客は金持ちだけど、貧乏旅行の人もいるんだからバスぐらい用意しておけよ〜
 バスもないようなので観光地を素早く廻るためにやはりタクシーを貸し切るのが一番という結論に達した私とあとげんは、どのタクシーに乗るかを決めることにしました。

 まず、歩いている最中にずっと着いてきて話し掛けてきてたお兄さんたちは排除です。だってこういう手合いはまず面倒くさいんだもの…。彼はしつこく追ってきましたがしばらくして諦めた様子。元来た道を戻っていくと「またカモがやってきた!」といわんばかりに所在なさそうだったタクシーの運ちゃんが、昔から知っている友達に本当に久し振りに逢った時に見せるようなきらきらした目と、満面の笑みを浮かべ「タクシー?ミスター?」とか言ってきます。
 私ははじめに見たヌビア(ヌビア人、エジプト人と違って大人しいといわれている)っぽい運転手のタクシーに乗りたいと思っていたので、他の呼び込みは一切無視してそのおじさんを探します。
 おじさんはさっきと同じ場所に佇んでいたので見つけるとすぐそのタクシーに乗ることに。普通は料金交渉はタクシーに乗る前にするのですが、この人ヌビアだろうし、感じよさそうだし、何よりここで交渉してると他の運転手に囲まれる恐れがあるのでとりあえず乗り込まなきゃです。だって、このタクシーに決めたということは他のタクシーの運転手にも分かるはずなのに、それでも彼らは「タクシー?タクシー?」とかしつこく声を掛けてくる人達ですから。

 そういえばやはりエジプト人って少し特別みたいです。先日ジョルダンにいる隊員からメールが来たのですが、ジョルダンには出稼ぎに来ているエジプト人がたくさんいるらしいのです。
 その隊員も何人かのエジプト人と知り合いになったらしいのですが、彼らの特徴は「とにかくめげない」んだそうです。
 あまりにもしつこい時などその隊員もかなりエジプシャンに対してきつい言葉を浴びせたらしく、後日「少し言い過ぎたかな?気まずいな」と思っていたところ彼らはまったくそんなことは意に介せずといった感じでいつもと同じような態度だったということです。
 それを聞いて私も「うん、うん。分かる、分かる」と思いました。私も何回となくこちらで喧嘩をして「ああ、言い過ぎたな」と思ったこともあるのですが、彼らはそんなことはまったくなかったかのように接してくるのです。さすがに、胸倉をつかんだことのあるコーチからはいまだに「お前は俺の胸倉をつかんだ」とねちねち言われるのですけど…

 無事タクシーに乗った私たちは改めて料金交渉をすることに。感じよさそうな人だったのでこの人に全部廻ってもらおうとあとげんと決めました。今から4時間で「アスワンハイダム」「エレファンティネ島」「ヌビア博物館」を廻ることにしました。彼に「いくら欲しい」と聞くと「50ポンド(約2000円)」といってきました。まあ、4時間ぐらいだし、こんなものだろうなと思いつつも「40ポンドにして欲しいな」といいます。こういう時ってアラビア語を使えるって便利です。相手も初めからそんなにひどい値段を吹っかけてこないし、交渉もしやすいです。ただ、彼も50ポンドから引く気はないようです。「俺はヌビアンだから嘘はつかないよ。これでも他のタクシーに比べると安いよ」といってきます。私もそうは思ったのですが、これもひとつのコミュニケーション。結局45ポンド(約1800円)というところで交渉成立です。

 値段が決まったところでまずはアスワンハイダムへ。実は、玄ちゃんはアスワンにマンスーラの彼が教えている生徒たちと去年来た事があるらしく、ここも廻ったようです。「どうだった?」と聞くと「う〜ん。俺はあんまりすごいとは思わなかったけど…」とはいわれたのですが、アスワンに来たらアスワンハイダムを逃してはいけないな。ということでとりあえず行ってみることにしました。着いてみると玄ちゃんの言ったようにハイダム、それほど迫力ありません。私はナイアガラの滝のように(行ったことはないのですが、イメージ的に)水が上からすごい勢いで流れ出てるところなのかと思っていたのですが、なんかのんびりしています。まあ、こんなものでしょう。

 アスワンハイダムを見学し終わった後は次の目的地、エレファンティネ島に向かいます。ここは島というだけにナイル川に浮かんでいる島で、ここに行くためにはフルーカやボートなどを使わなくては行けません。ここには「アスワン博物館」と「ナイロメーター」があるのですが、私たちの目的はそこではありません。この島の中にはオベロイという高級ホテルがあるのですが、ここのホテルのカフェがいいと聞いたので、このカフェでくつろぐことが目的なのです。
 タクシーの運転手にフルーカ乗り場で降ろしてもらった後はフルーカに乗せてもらいます。このフルーカの持ち主もヌビアンです。アスワンはやっぱりヌビアの人多いですね。彼は往復で20ギネー(だったかな?)といってきます。距離も近いし、もっと安くならないのかな?と思って交渉しようと思うとこの人もやはり「おいら、ヌビア人だよ。分かる?」みたいな感じです。分かるけど…、それだけで押し切られても…。結局15ギネー(約600円)というところで手を打ちます。

 フルーカは初体験なのですが(マンスーラでもどきに乗ったことはあるけど…)、風を受けなかなか気持ちよいです。10分もしないうちに対岸に到着です。1時間後に迎えに来てといって私たちはホテルを目指します。ただ、降りた地点からホテルは結構遠いみたいで(ここはアスワン博物館に行く人のための降り口でホテルに行くための降り口ではなかったのです)、道も良く分かりません。しょうがないので、地元の人しか通らないような狭い道を歩いていくことに。途中道がふさがっていたり分からなくなりそうになりますが、何とかホテルの外壁が見えました。ただ、こんなところを通ってこのホテルに来る人は皆無のようで警備員が怪訝そうな顔でこっちを見ています。しかし、何とか裏口の門を開けてくれ無事ホテルに入ることが出来ました。

 このホテル、噂に違わずなかなか雰囲気があります。新しくはないのですが、シックな感じですね。落ち着いています。
 さっそく私たちはテラスにあるカフェに行きました。本当はここで本でも読みながら2時間ぐらいはゆっくりくつろぎたいのですが、私たちには時間がありません。ここも15分ぐらいですね。私は急いでビールを注文し、一気に飲み干します。いやあ、美味しいです。おいちい。今日はだいぶ歩いたし。玄ちゃんはレモンジュースを注文です。ビールこんなに美味しいのに…
 ここのテラスのカフェも良かったです。アスワンの喧燥もなく、周りにはきれいな草木とナイル川が見えます。こんなところに1週間もいるとリフレッシュできそうです。でも、協力隊員らしくないな

 名残惜しいのですが、帰りの飛行機に乗り遅れるとやばいので急いでホテルを後にします。帰りはそんなに迷うことなくフルーカ乗り場に着きました。

 最後の目的地は「ヌビア博物館」です。ここは最近出来たらしく、きれいで結構良かったという話を聞いていて是非行きたかったところです。
 運転手にも話を聞いてみると「いいよー」と言っています。
 夕方は5時からオープンなので5時10分前ぐらいに博物館前に到着しました。すると、既に博物館前はたくさん地元の人が群れています。黒山の人だかりですね。そうか、今日はまだ休日の真最中だしな。でも、この中でチケット買うのって大変そうです。それに私たちは6時45分の飛行機だから、運転手に5時30分頃には出てきて欲しいといわれているのです。この様子じゃ5時半にチケットを買えるかどうかも分かりません。チケット売り場は一つみたいだし、既に彼らは列を作らず並んでいます。これだとチケット売り出した途端えらいことになりそうです。強い人が勝ちそうですね。
 でも、彼らは1ギネー(約40円)で入ることが出来るのです。俺達は10ギネー(学割料金、約400円、一般の外国人は20ギネー)も払うんだから、融通利かせろよな。と勝手なことをあとげんと話しながら窓口が開くのを待ちます。私たちの他に何人か外国人もいたのですが、彼らはチケット売り場を遠巻きに眺めています。そうですよね。あの中に入っていくのをためらう気持ちはよく分かりますよ。
 5時5分前頃になるとチケット売り場前は一層と殺気立ってきています。ピリピリした雰囲気がこちらまで伝わってくるようです。早くから窓口前を陣取っているやつは「お前ら絶対割り込ませないぞ」といった顔をして周りを威嚇しています。かと思えばおばちゃんたちは開始と同時にその豊かな体格と、ぶつぶつ文句作戦を使って割り込みそうです。こういう光景はもう何度となく見てきてますから…。
 本当に私たちはチケットを買えるのだろうかと心配していると、博物館の中からスタッフの人が外国人を呼んでいます。どうやら外国人は優先的に中に入らせてくれるみたいです。生きてて良かったです。まあ、地元の人の10倍払うんだから許してね。

 と、いうことで5時ぴったりに中に入ることが出来ました。
 中はとてもきれいです。さすが出来たばかりですね。クーラーもばっちり効いています。涼しいですね。彼らはここで涼むのが目当てなのかな?
 ここは2時間ぐらいかけてじっくり見ることが出来そうなのほど展示品も豊富です。しかし、私たちには時間がありませんので、残念ながら駆け足で眺めます。そういえばここには昔のイコンもありました。なかなか良かったです。

 外に出てみるとやはりまだチケット売り場には人がたくさん並んでいます。30分でも余り効率よくチケットは売れていないみたいです。これって考えたら分かると思うのですけど、きちんと列を作って並んでいた方がどう見ても早く買えます。みんなバラバラに並んでるから(並んでるとはとてもいえないですけど…)チケットを買う時点で「俺が先だ!」とか揉め事が起こったり、押し合い圧し合いで余計時間がかかるんですよ。何で、みんなもう少し頭使わないのかな?
 あとげんは子供達に良く「考えろ!」「頭使え!」といって注意するらしいのですが、その気持ち良く分かるよ。ほんとに考えろっておいらも言いたいですよ。

 あっという間にアスワン観光も終わりです。今回はルクソールの同じホテルで3泊にしてしまったためにアスワンに泊まることは出来ませんでしたが、アスワンに1泊ぐらいしても良かったなと少し後悔しました。そういえば、前アレキにいたNさんの奥さんも「ルクソールは人が駄目だけど、アスワンに来るとほっとするわよ」って言ってましたね。他の人も大体同意見でしたが、その気持ちが良く分かりました。ルクソールに比べるといいです、アスワン。好きです、アスワン

 空港までの道もタクシーの運転手との話で盛り上がってあっという間です。このタクシーの運転手さんもいい人でした。やはりヌビア人っていいです。顔付きも優しいし、親切でした。一緒に写真取ったから送ってあげたいけど、住所知らないからそれは出来そうにありません。ごめんなさい。

 アスワンを後にしてルクソールに着いたのは夜の7時15分です。
 早速飛行機を降りるとタクシーの運転手の呼び込みです。私たちはまだ体力もあったので、タクシーに乗ることを止めとりあえず歩いて空港の外に出ることにしました。だって、あまりに吹っかけてくるものですから…。しかし、空港の外までも遠そうです。途中で自転車をこいでいる空港職員らしき人に「空港の外はどこですか?」と聞くと「何で?」と聞かれました。「**こういう理由でタクシーに乗りたくないからバス乗り場を探してるんだ」というと「分かった、無料でバスに乗せてやるよ」といいます。バスなんてあるの?と思って話をしてみるとエジプトエアーの職員専用のバスが出るからそれに一緒に乗せてあげるとのこと。ルクソールでもいい人いるじゃん、救われたよ。バスが出るまでは1時間ほどあったのですが、折角の親切を無下にも出来ません。それにまた空港に戻って来た時タクシーの運転手もしつこく「乗れ、乗れ」といってきたのですが、その親切な紳士がその運転手までも排除してくれたのです、大声で喧嘩までしてくれて…。本当にありがとうございました。
 バスが来るとその紳士が「乗れ、乗れ」といってくれます。運転手は「降りろ!部外者以外は駄目だ!」といいますが、何とか宥めて乗せてもらいました。
 ということで帰りは無料でルクソール市内まで行けました。ありがとうございました。

 ルクソールは駄目だとばかり思っていましたが、いい人はどこにでもいるものです。先入観でルクソール人を悪くばかり思っていた私はまたちょっと反省です。

 さあ、明日は最終日ルクソール東岸です。
 今日も同じところで同じ焼き肉炒飯もどきを食べ、ビールを飲んでビリヤードをしてホテルに帰りました。明日はのんびり観光しようっと。

 アスワンの感想

 ルクソール東岸編に続く


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