那須野が原更新2019年1月6日)

晩秋の那須五峰(那須町千振) 厳冬の那須岳(那須町)

 那須野が原は、北に那須、西に高原、東に八溝の各山系に囲まれ、那珂川・蛇尾川・箒川の流れ(那珂川水系)に沿ってできた扇状地です。主に平地林と田畑・牧草地が混合して広がっているという、一見画一的な様相を呈しておりながら、実は様々な動植物の生息を許容してくれる多様性と複合性を有した環境であると言えます。その大きな要因は平地林の種類の多さだと思われます。コナラやクヌギを中心とした雑木林・アカマツが群生する林・スギやヒノキが植林された林・ハンノキなどの湿地林が、北部では牧草地を取り囲むように広がり、南部では田畑の間に点在しています。このような多種多様で構造的な組み合わせが、多くの生命を育んでいると言えそうです。全くの手つかずの原生林と原野ではなく、那須野が原の開拓という人為的な「手」が加わった結果としての「豊かな自然」であるわけです。つまり、那須野が原に住む私達(私達の祖先)は自然に「手」を加えながらも自然を損なわず、むしろある面では自然を豊かにさえしながら、うまく調和して生きてきたのではないでしょうか。現にまだ今でもその共生関係は持続していると思います。

 私達は10数年、この那須野が原にこだわりながら、鳥や獣の写真を撮り続けています。特にオオタカフクロウ、それに自動撮影装置を使ったけもの道の撮影に重点を置いています。仕事の都合上時間が制約されるという理由もありますが、オオタカとフクロウは、単に容姿容貌にひかれただけではなく、那須野が原の食物連鎖の頂点に君臨するもの(昼・夜という活動時間の差が両雄の並立を可能にします)として、言わば、那須の自然の豊かさの象徴として位置づけられると思っているからです。また、自動撮影装置の利用については、主に夜活動する野生動物の生態をできるだけ自然なままで警戒させずにとらえる方法として最も有効であると考えたからです。一般的には、オオタカやフクロウというと、滅多に見られない珍しい貴重な鳥というイメージがあるかもしれません。確かに貴重ではありますが、那須野が原においては、滅多に見られないわけではありません。少し注意して観察してもらえれば分かりますが、大田原の331号線の上でもオオタカは飛びますし、乃木神社近辺でもフクロウの声は聞こえます。那須野が原は、希少種オオタカが市街地の上でも飛ぶような所なのです。また、野生の動物達も案外私達の身の回りに息づいています。国道や県道でイタチなどが交通事故に遭っていたり、雪の降った蛇尾川の河川敷にノウサギの足跡がついていたりします。オオタカやフクロウといった猛禽類の繁殖をサポートできる環境や野生動物がしたたかに生きられる環境が、私達人間の生活環境と密着・融合して存在していると思われます。

晩冬の那須連山(那須町小深堀) 盛夏の那須連山(那須塩原市高林)

 このHPでお見せするオオタカやフクロウ、それに動物達の生態写真は、すべて那須野が原で撮ったものです。それも近年撮影した写真ばかりです。「灯台もと暗し」というように、自分の周りなどよく観察することなどないのかもしれません。本HPのつたない写真が、そういう「気づき」のきっかけになれば幸いと思います。

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