
オカバンゴデルタ
ジンバブエ編へ
Botswana
Oddball camp
一内の奥田名誉教授の強い推薦でオカバンゴを旅行先に加えたのだがここは最高だった。
午前中のraftingの興奮もさめないまま、ビクトリアフォールズからマウンに飛行機で飛び、午後4時ころ到着。
空港の目の前のオカバンゴツアーズアンドサファリというTravel agencyでツアーを組んでもらった。
ベースキャンプであるoddball campに行きと帰りで最低二泊はするのだが、ガイドの予約がネックになる。
とりあえず明日のday tourが一人だけ空いているがどうするというので、早く行くのにこしたことはないのでお願いした。
bush campについては現地で交渉しろとのことであった。そのまま、セスナで午後7時頃oddball campに到着。
oddball campは皆が食事をする大きなログハウスと備え付けの各自のテントからなる大きなcampで太陽光で発電もしており、温水シャワー、水洗トイレまである。
オーナーのpeterがつくとすぐに注意として、ログハウスから出るときは必ず左右動物がいないか確認し、
万一ライオン、ヒョウ、チーターにあったらじっとして絶対に逃げないこと、象、カバにあったら一目散に逃げること、と言われた。
また今日は昼間象がキャンプ内を歩き回っていたので、もし、夜テントで寝ているとき象がきたら音をたてずじっとしていなくなるのを待つように、とのことだった。
ようやくあわただしい1日が終わりようやく眠りについたが......
深夜午前3時頃、なにやらゆさゆさ木をゆすっている音で目を覚ます。
しかも私のテントの真上である。ノシノシという足音、パオ−という鳴き声、象であることは明らかだった。
その後、ボタボタという音をたてて我がテントの真近に糞をしていった。およそ30分程だったが緊張の時間が続き、象は去っていった。
これぞサファリ!あなどれじオカバンゴ!
かくして私のオカバンゴでの生活が始まった。
モコロツアー(day tour)
オカバンゴのツアーはモコロという丸木舟で奥地に入っていく。
最近は金持ちツアーでモーターボートで行くのもあるらしいが、私はこのモコロのスピードと風情がオカバンゴには合っていると思う。
翌朝、私はSigrid(Siggy)というドイツ人とオーストラリアの二人とともにモコロツアーに出かけた。
オカバンゴにはどんな動物がいるのか?と尋ねたら"Everything"という答えが返ってきた。
まさにその通り、モコロでデルタの奥地に入って行く間に 水牛、イボイノシシ、インパラ、象、カバ などが次々と現れた。
二時間程進んだ後、舟を着け陸に上がった。
あたりは、まさにサバンナ。季節は冬であり、冬枯れの木々と砂という荒涼とした大地が見渡す限り広がっている。
燃えるような夏のイメージしかなかった私にはとても不思議な感覚であった。我々はガイドについて歩を進めた。
インパラ、ツェツェべ、野牛、シマウマ、キリンなどの草食獣は我々を見つけると一斉に振り向き、我々の動きを伺う。
そして彼等にとってのDead Pointである150m位の距離に近づくと例外なく一斉に走り出す。
その一連の動きには、張り詰めた緊張感が感じられる。動物園のひとなつっこい動物の姿に慣れた私には新鮮であったが、これが本来の姿なのだ。
しかし、象は違う。傍若無人に木の皮を剥ぎ枝をゆする。今度は我々が象の様子を伺って緊張して進まなければならない。
野生においての力関係とは本来そういうものなのであった。
Bush Camp
Day tourにすっかり満足した私は、何とかbush tour に行きたいとpeterに交渉したところ、ラッキーなことに翌日、bush tourに行けることになった。
今回は、一泊何もないbushでキャンプすることになる。食料と水とテントを積み、昨日通ったルートを再びモコロで進んでいった。
風の強い日だった。アフリカだと言うのに長袖を着ていても肌寒い。川の流れが速いので川の中央を避け水草の繁る岸の近くを進んでいった。
「クロコダイル」と突然ガイドが言った。彼の指差す方向には寒いためかじっとしている、黒光りした巨体が横たわっていた。
10m位の距離にいたがピクリともしない。今我々を襲ってきたらひとたまりもないだろうと思い一人で興奮していたが、ガイドは平然とモコロを漕いでいった。
小一時間程して岸に上がった。風は相変わらず強く砂煙が上がっている。
本日のキャンプ地であるその場所は岸辺にあるbushで、過去に火を起こした形跡がある。傍らに立つ木々には象が皮を剥いだ跡が生々しい。
強風の下ようやくテントをはり、火をおこした。
「お茶を飲もう」と言うとガイドはおもむろに川の水を汲んできて、薄茶色に濁った川の水を沸かし始めた。
ミネラルウォーターは持ってきていたのだが、彼のあまりにもためらいの無い行動に圧倒され「ここは一発飲んでみるか」と腹をくくることにした。
oddballから持ってきたティーバックで紅茶を飲む。お世辞抜きでうまい。体の中にオカバンゴの水がしみわたって行くような感じである。
(後でoddballでお茶を飲んでたとき、ふとポットのお湯を見たらしっかり濁っていた。なんのことはない、もう既にオカバンゴの水は飲みまくっていたのだ)
簡単な食事をとった後、寒さと強風の為しばらくテントで休憩。昼寝をして3時頃、ようやく風がやんできたようだ。
「ヒロシ、ウォーキングだ」と言う声で我々はサバンナの散策に出かけた。
歩き出すやいなや、ライオンの足跡を発見した。昨日の夜ついたものだとのことである。
キャンプから20mのところだ。どうやら近くにいるらしい。なんととんでもないところにキャンプを張ったものだ。
しかし、これでウォーキングの目標は決定した。
ライオン、ヒョウは昼間は木の上にいて獲物を狙っていることが多いらしい。ガイドは広く見渡せる場所に来ると、bushの木の上を見ている。
「ノーライオン」と言うとまた、ライオンの足跡をたどりながら歩いていった。
二時間程歩く間wildebeest, Tsesebe, Red Lechwe などと遭遇しサファリツアーとしては十分なことをしているのだが、彼と私の頭にはライオンしかなかった。
だんだん夕暮れが近づき半分諦めかけたとき、ガイドの動きが突然早くなった。
何だ何だと思いながらついていくと、突然「ライオン!ライオン!」と言う。彼の指差す方向には、マメ粒のような生き物が確かに動いている。
だが、あまりにも遠く現地人のような優れた視力を持ち合わせていない私には、それがライオンであるかどうか判別できない。
湖の向こうであるためこれ以上近づくことも無理であった。しかし、キャリア17年の彼の勝ち誇ったような顔は嘘を言っているとは思えなかった。
お前はラッキーだと言われたが本当にラッキーかどうか分らない。ただ、とりあえず今日の目標を達したような気にはなった。
夜のための薪を拾ってキャンプに戻ったころにはもう日も暮れかけていた。
例によって濁った水を沸かし、夕食を食べる。
彼からもらったwildebeestの肉を食べながら、野生動物では何が一番うまいのかと聞くと「バファローだ」と言う答えが返ってきた。
「しかし、我々は野生動物を殺すことは出来ない。たまたま死んだのを食べているだけだ。」と言う。
パトロールに見つかると刑務所行きだそうだ。ライオンもヒョウも昔はもっと簡単に見れたらしい。
オカバンゴの観光化も進んでおり、この楽園がいつまで今のままいられるかも分らない。
そうこうするうち、あたりは真っ暗となり、広いサバンナに焚き火をかこんでガイドを二人きりである。遠くに聞こえる遠吠えはライオンだと言う。
自分の五感がとぎすまされ、内なる野生が取り戻されてくるのを感じた。
「人間だって昔は、野生動物だったのだ」というのが実感された、bushでの一晩だった。
翌朝は6時に起きて、ウォーキングに出かけた。肉食獣は夜行性であるため、早朝のウォーキングの方が見れる可能性が高いらしい。
「これは昨日の夜のものだ」というライオンの足跡をたどりながら、ガイドは少し興奮気味に歩みを進める。確かに足跡は生々しかった。
まだ新しい糞もあり期待が膨らむ。
そうこうするうち、突然「すわれ!」と彼が言った。
「ワイルドドッグだ」と示した方向から次々と野犬が現れた。1、2、3、、、と数えていくと全部で21匹いた。そして、我々に気づくと一斉にこちらを見てにらみ合いとなった。
「静かにして座っていれば大丈夫だ。」という言葉を信じてじっとしているが、気が気ではない。これだけの数の野犬に襲われたらひとたまりもないことは明らかであった。
5ー6分であったろうか。緊張の時間がすぎると、何事もなかったかのように野犬の群れは去っていった。その後を2―3匹の灰色の少し大きい動物がついていく。ハイエナである。自分達が奴等の餌食にならずにすんでよかったと思っていたら、ガイドは
「おまえはラッキーだ。4―5日いてもワイルドドッグにはなかなかお目にかかれない。」とのことであった。
結局、ライオンは見つけられなかったが、また一つ野生動物の世界をかいま見ることができ十分満足した。
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