青天の霹靂


メルヘローズのエキュルからマドレン街道を進んだ先にあるジラフの港村。
エキュルに出現した木人兵から村を守るため、を大儀名分に、現在ヌメロスから戒厳令が敷かれている。
村人は村外に出ることはできなくなっていた。

ジラフの村で漁師を営んでいるバルカスは漁でとった魚をエキュルで売って生計を立てていた。
仕掛けた網の様子を見に灯台の近くを歩いていたときのこと。

ごん・・・

頭に感じた衝撃と共に意識が遠のき、バルカスの体は崩れ落ちた。

バルカスは頭をぶんぶん振って、飛びかけた意識をつなぎとめた。
ようやく視界がはっきりし、あたりを見回す。

「な、なんだこりゃ?」

自分が倒れていたところのまわりに大小さまざまな大きさの岩が転がっていた。
「誰がこんなところに岩を落としたんだ?
せっかく張った網に魚が入らないじゃないか。まったく・・・」
バルカスはぶつぶつ言いながら立ち上がる。

と、どこからかかすかに音が聞こえてきた。
どうやら琴の類の楽器の音のようである。

「どっかで聞いたような音だな・・・」
ごく最近どこかで聞いたはずなのだが、どうしても思い出せない。
首をひねって考え込んでいるバルカスの頭上で、耳を劈くようなとんでもない轟音が鳴り響いた。

ジジ・・・バリバリ・・ガラガラガラガラ!!!

「うわあああああ!」
まるで耳のそばに雷が落ちたかのような音に気を失いかける。

音が収まったときには、耳鳴りがしばらく収まらなかった。
「いったい何なんだ!?」

キーーーンという耳鳴りがやっとおさまり、空を見上げる。
雷雲は、というより文字通り雲ひとつない抜けるような青空であった。

「・・・いまの雷は空耳じゃないよな・・・」


続いて、軽快なピッコロの音がはっきりと聞こえた。
「これは・・・確かピッコロか?」

そのあと、遠くから、ずずずずずず・・・という低い地鳴りのような音が響いてきた。

「こ、これは・・・」
漁師であるバルカスにはその音の意味するところが一瞬にして理解され、顔面は蒼白になった。

津波がどちらから押し寄せてくるのか確かめようと
バルカスは四方を見渡すが、静かに凪いだ海以外には何も変化はなかった。

「津波じゃないのか?」

続いて、ごごごごご・・・・という水音が聞こえてきた。

どうも頭上から音がするようだと気がついたときには
走って逃げようとするも、ときすでに遅く、水に飲み込まれていた。
バルカスの体は、どちらが上か下かもわからないままに回転していた。

ざっばーーーん!
自分の家の前に投げ出されたバルカス。
波はバルカスを置き去りにしてさっさと消えてしまった。
後には水に濡れた跡すら残らない。
唯一バルカスだけが、そこに水が存在したことを証明していた。

バルカスの妻は、妙な物音におそるおそるドアを開けた。
すると、バルカスが家のドアの下で倒れていた。

「まあ・・・あなた、こんなとこで何やってるの?」
「うう・・・」
体中がぎしぎし言うが、何とか体を起こしたバルカスは呆然とした表情であった。
「俺にも何がなんだかよくわからないんだが・・・」


地上でこんなことが起きているとは露知らず、ジラフの灯台屋上では
フォルト、ウーナ、マクベインが共鳴魔法でブレガー、ネクロス相手に闘っていた。







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