145/435MHz2バンドクロスアンテナ (2Band X-ANT)     de JA1CPA/中村          2012/5/20
                                           目次に戻る      「3.検討その3」 2012/6/6
  
 このページの内容は再検討中です!(2012/6/13)                       

衛星通信用クロスダイポールは、JA9BOH/前川さんが145MHz用と435MHz用を作ってモービルから運用しFBにQSOしています。
当局は、昨年AO-7受信用として29.45MHzの短縮型クロスダイポール(X-DP)を作ってしばらく運用しました。
その時には3eleYagiと同等の性能を確認していましたが、クロス部分の構造が弱く台風でエレメントが飛んでしまいました。
今回のJA9BOH/前川さんの運用に触発されて、固定局用145MHz用と435MHz用クロスダイポール(X-DP)を試作し、いろいろ
検討をしました。
その間に、JA9BOH/前川さんやJH1GVY/森岡さんからいろいろ資料の提供やアドバイスを頂きました。
JH1GVY/森岡さんのホームページ(http://www003.upp.so-net.ne.jp/JH1GVY/x-dp.html)を理論的根拠として、シミュレーション
(MMANA & MMPC)していろいろ試作していました。

このクロスダイポールは、円偏波を作るための位相給電をエレメント長を変えて行っています。
すなわち1本のダイポールを共振周波数より長くして誘導性とし、もう一本のダイポールを共振周波数より短くして容量性にして
90°近い位相にして回転偏波にすると共に、誘導性と容量性のリアクタンスを同じにして共振させるものです。
この考え方のアンテナは、かなり昔から有ったようです。

サテライトで使う周波数の145MHz用及び435MHz用クロスダイポールを周波
数毎に別々に作っていましたが、ダイポールは3倍の高調波で共振するのは
広く知られているので、まてよmodoki魂で145MHzは3倍高調波の435MHzで
使えるのではないかと2Band(145/435MHz)で使えるクロスアンテナを検討し
ました。
まだ完成の域には達していないので、さらに検討しますが中間報告します。
エレメントの寸法やSWR等はMMANAでシミュレーションして検討しました。

1.検討その1
この145MHzのクロスダイポールは、435MHzでは、その3倍の高調波アンテナと
して動作するはずです。
一般的に3倍の高調波アンテナにするとインピーダンスは約2倍と高くなります。
合わせなければならない条件が多く、正確にはできませんが、若干エレメント長
を合わせ込んで、何とか使える状態にしました。

☆材料
@エレメント材料は、φ3真ちゅうパイプが軽く弾力性も有り一番使いやすいです
が価格が高くあまり売っていないのでチョット使いにくいかも。(450〜500円/m)
φ3真ちゅう棒はやや重い(約250円/m)、φ2真ちゅう棒
は軽いがややしなりすぎか。(約230円/m)
AM-Rコネクターは、絶縁物が白い樹脂が静電容量が少
なく(4.2pF)良いと思いますが、熱に弱いのでフランジ部
分にエレメントを直接半田付けする事は出来ません。
絶縁物が茶色の樹脂は静電容量がやや多い(5〜5.2pF)
が何とか使えると思います。
エレメントは、φ3とφ2が同じ長さですが帯域が広いので
差はほとんどありません。





☆加工
エレメントは、480mmに印を付けて、印から513mmで切断し、両端面を滑らかに仕上げる。
480mmの印の所から90°に曲げる。あまり鋭角に曲げるとエレメントが折れる場合が有るので内側1〜2R(1〜2mm半径)程度。
エレメントの半田付けは、A&C(短い)、B&C(長い)、が一直線になるようにする。絶対に間違えないように!

φ3圧着端子を90°に曲げてフラン     エレメントを半田付けする。     アクリルパイプ等の絶縁パイプで(φ6)
ジにネジ止めし、芯線との間隔を10mm      90°、平衡を確認する。        エレメントを固定する。
にする。                                                
 
半田付けした部分をアクリルラッカースプレー(透明クリヤー)で絶
縁防水する。(メーカーはニッペホームプロダック(株)「ニッペ」)
このアクリルラッカースプレーは435MHz帯でも高周波的に絶縁性
が良く、性能が変化しない。 また耐候性は約1年間アンテナの給
電部に使っているが変化していない。
M-Rコネクターのネジ部、芯線ピン部分にアクリルラッカースプレー
が塗布されないようにテープ等でしっかりと養生して2〜3回塗布、
乾燥、塗布、乾燥を繰り返す。

十文字に絶縁パイプでエレメントを固定する。
耐久性向上のために、ビニールテープの上を
タイラップで固定するとよい。

☆性能  145.9MHzはクロスダイポール、435MHzは3倍高調波クロスアンテナとして動作する。
 
 145.9MHz SWR 1.25〜1.1  帯域は広い

 435MHz SWR 1.6〜1.7  SWRはやや高い、帯域はやや狭い。 
測定は、同軸ケーブル5m長、M型コネクター付き5D-FBで、2階ベランダから3m離して行った。(較正していない)

☆衛星通信の構成

アンテナは、地上高4m。
クロスダイポール(アンテナ)とデュープレクサー(MX72
H等)間は5D-FB×10m、145/435MHzAMPとFT-847
間は5D-FB×35m(145MHz)、8D-FB×35m(435MHz)
145/435MHzAMP(プリアンプ)が回り込みをかなり抑
圧しているので、435MHz側のデュープレクサー(フイ
ルター)は、1個で良いかも。









☆QSO実績
VO-52,FO-29のビーコンは、ほぼAOS/LOSまで確認出来る。
2012/5/15
・FO-29(1057):tnxJA8FY,SSB,EL10,RS54
・FO-29(1241):tnxJA1GHV,SSB,EL50,RS56
・VO-52(1835):CQ・・・,MyRS:ピーク57,QSBが激しいのとCWの抑圧有り
2012/5/16
・AO-27(1333):tnxJA7OQZ,FM,EL35,R1〜5,S1〜7  VY QRM
・AO-7(1617):EL80〜55でSSBのダウンをハッキリと確認できた。(受信3eleYagi)
2012/5/17
・VO-52(0643):tnxJA2NLT,SSB,EL14 ,RS53
2012/5/19
このアンテナで各衛星のビーコンを受信していますが、ほぼAOSからLOSまで聞こえます。
九大の衛星も聞こえました。(2012/05/19 13:06〜)(tnxJE9PEL/1局のブログ、Object B設定、437.375MHz低め?)
PRISMより弱い感じです。10〜20秒の長いQSBが有りますが、このアンテナの指向性のためでしょうか、435MHz帯は1.5λの高調
波アンテナになっているのでパターンは変形四つ葉状態のようです。

☆ここまでの まとめ
VO/FO等のリニア衛星のビーコンは、ほぼAOS-LOSまで聞こえるのでCWでのQSOには十分使えます。
SSBについては、EL5〜10以上ならQSO可能ですが、受信がやや不足している感じです。
当局を呼んで戴いた局に失礼しているかもしれません。
FM衛星は、混信も有りかなり厳しい状況ですが、EL30以上なら可能性が有ります。
衛星通信を手軽に体験したい人、アンテナが回転出来ない人、モービルでCW運用する人等には簡単なアンテナです。
ローテーターの制御インターフェースの製作が不要なので、半田付けの苦手な人に良いと思います。
指向性が無いので、FM違法局対策は出来ませんが、ゲインが低いのでビームとあまり変わりません。
ビームアンテナに比べるとゲインが少ないのでDXは難しい。
CWはオーバーパワー局(ERP)が多いので、CWで運用する時はこのアンテナでお願いしたい。hi
もう少し435MHzのSWRを低くしたい。(検討中)    まだまだ終わりそうもありません!


2.検討その2      2012/5/28
☆ローディング方式の検討
給電点インピーダンス50Ωの145.9MHzクロスダイポール
は、約3倍の周波数でも共振します。
その時の共振周波数は、3倍より5%ぐらい高くななり、
インピーダンスは約2倍の100Ωになります。
共振周波数を低くして435.0MHzにするのと、インピーダン
スを下げて50Ωに近づけるためにローディングコイルを入
れました。
共振周波数を435.0MHzにするだけなら簡単ですが、インピ
ーダンスを50Ωにするにはエレメントをかなり短くする必要
が有ります。
145.9MHzにあまり影響しない範囲で検討しました。
コイルの挿入位置は下図の位置にします。

MMANAのシミュレーション結果は、(コイル:0.06μH)

周波数 R jX SWR Gain
145.9 54.92 -3.85 1.13 5.58
435.0 53.85 +7.29 1.17 5.15


☆寸法等
調整後の寸法、( )の数字は調整前の全長。
シミュレーションの寸法では、415MHz付近で共振した。

エレメント先端部


☆各部の写真

M-Rコネクター、2.4pF     コイルを巻く            コイルとその先のエレメント            クロス部分
 (テフロン)

☆特性
 

 
シミュレーション通りの寸法では、145.9MHzはほぼシミュレーション通り。 435.0MHzは415MHzに共振した。
エレメント尖端を切って(約15mm)周波数を高くして調整した。しかしまだインダクタンスが小さい模様。

435MHzは、結果(|Z|=66.6Ω、X=-10.8Ω)からシミュレーションすると、コイルのインダクタンスは0.053μHになっている模様。
もう少し調整する必要が有りますが、この状態でQSOしてみます。
AA-1000アナライザーは、測定に使うケーブルの尖端を50Ωで較正できます。(上記は435MHz±30MHzで較正して測定した)
☆QSO実績
2012/05/26 AO-7(1544):tnxJA0CAW,:チョット弱かったようです。
2012/05/26 VO-52(1833):JA2NLT局をCALLしましたが、此方のUPが弱い感じです。
2012/05/27 AO-7(0540):tnxJA0CAW,JH1BCL,:非常に良いコンディションでRS55/QSB。
性能は、「検討その1」と比較して、435MHz/145.9MHz共に変化は感じません。この方式は製作や調整が面倒なので、「検討その1」
が良いようです。
☆さらに、「検討その2」を、もう一本作りました。
寸法は同じですが、コイルを5Tと1T増やしました。
エレメント寸法を調整(前記よりさらに短くなった)して、結果は435.0MHzでSWR1.2とシミュレーションに近くなりましたが、145.9MHzの
共振周波数が150.3MHz、SWR1.3となってしまった。
ローディングコイル方式は、145.9MHzと435.0MHzを両立させる事は出来ない結論になりました。
ローディングコイル方式以外にトラップ式が有りますが、安定した共振LCを作るのはかなり難しい感じです。HF帯なら簡単なんですが。
HF帯のトラップ式は、18/24MHzで活躍中です。(詳細は、ここです)


3.検討その3  2Band X-ANTstk    2012/6/6
☆2Band X-ANTのスタック化の検討
ゲインをもう少し大きくしたい事と、低仰角でのゲイン改善の為に上下にスタックすることを検討しました。

MMANAでは、ゲイン145.9MHzで最大の上下スタック間隔1.2m、SWR145.9MHz1.49、435.0MHz1.46、ゲイン145.9MHz10.48dBi、
435.0MHz13.41dBiとなりました。ゲインは、シングルに比べて145.9MHzは4dB、435.0MHzは3dBアップしている。


MMANAでは、ゲインは435.0MHzで最大の上下スタック間隔0.5m、SWR435.0MHz1.26、145.9MHz1.33、ゲイン435.0MHz14.67dBi、
145.9MHz7.68dBiとなりました。SWRは435.0MHz/145.9MHz共に良くなる。ゲインは435.0MHzで4dBアップ、145.9MHzでは2dBアッ
プ程度か。


       145.9MHz(スタック間隔1.2m)                          435.0MHz(スタック間隔0.5m)
MMANAでは、145.9MHzは、60°付近の落ち込みが大きい。435.0MHzは、50〜60°付近の落ち込みが大きい。


 スタック(上下)間隔は、145.9MHzゲイン最大は1.2m        φ2真ちゅうパイプを使用した。スタック間隔 1.2mに設定
               435.0MHzゲイン最大は0.5m

Qマッチケーブルは、5C-FB(黒、75Ω)1221mm、M-Rコネクター(テフロン)、各尖端50Ωを付けてアナライザーで測定した。
145.9MHz、1/4λ×短縮率×3倍 = 435.0MHz、1/4λ×短縮率×9倍 = 1221mm。

エレメント、φ2真ちゅうパイプ(内径φ1)
曲げは、φ8パイプに当てて曲げる。
短いエレメント(484mm)に黒ペンで印を
付ける。
Qマッチケーブルの芯線と編組を曲げた
エレメントの内側に半田付けする。
φ6アクリルパイプで固定する。
ビニールテープで固定し、その上から
タイラップで固定する。
防水は、アクリルラッカースプレーで。

  
 
4mHに設置して、5D-FB×4.8m、435MHzは「較正」してして測定した。145.9MHzは1/2λ×6倍長で測定した。
145.9MHzは、シミュレーションが33.535+0.336、SWR1.49に対して実測は64.0-10.3、SWR1.36
435.0MHzは、シミュレーションが69.213-11.429、SWR1.46に対して実測は57.6-1.5、SWR1.15
となった。
シミュレーションと実測が、145.9MHzと435.0MHzで反対になった感じです。???(Qマッチだと良く有ること!hihi)

☆QSO実績  使って!どうかな?  
Horyu-2,HO-68,FO-29,等のビーコンを受信しましたが、EL20以下が強くなった感じです。
・AO-27(2012/6/5/1219):tnxJA2NLT,:混信の中から一瞬M5でした。(EL38付近)、此方のUPも厳しいです。

☆総合評価
良い順番は、
1.周波数毎(145.9MHz or 435.0MHz)に別々な1/2λクロスダイポール(円偏波)、
2.145.9MHz/435.0MHz 2バンド・クロス・スタック・アンテナ(145.9MHz円偏波、435MHz偏波不詳?)、
3.145.9MHz/435.0MHz 2バンド・クロス・アンテナ(シングル)(145.9MHz円偏波、435MHz偏波不詳?)、
です。
2バンドクロスアンテナは、特に435MHzの3/2λクロス高調波アンテナの水平面と垂直面のパターンの変動が大き
く円偏波になっていない感じで使いにくい。(信号のアップ/ダウンが激しい)
2バンドクロススタックアンテナは、EL20以下は少し良くなったが、シングルに比べて全体的にそれほど改善しな
い。(3dB程度のアップなので)
サテライトの電波は来る方向が一定なので、3/2λクロス高調波アンテナは、使いにくいアンテナです。
  再検討中です! 


                                                    
               おわり                         目次に戻る