00 衛星通信用145MHz/435MHz・2バンドクロスアンテナ 2013/5/8 de JA1CPA/中村
(JAMSATニューズレターN.278 無指向性円偏波アンテナ)
目次に戻る 説明を随時加筆しています。
(145MHz1/2λクロスダイポール/435MHz3/2λクロスハーモニック/エレメント位相式/435MHzインピーダンス
補正用エレメント付き)
今までの "まとめ" です
少し整理しました。2016/8/25
このアンテナを作りました。
・このアンテナは、マッチングケーブルや円偏波のための位相ケーブル等を使わずに、円偏波※※1 アンテナにして、
50Ωの同軸ケーブルを直接 接続できる欲張ったクロスダイポールアンテナです。
『このアンテナは、クロスするラジエーターの水平と垂直エレメントの長さを変えて、水平(垂直)エレメントを共振周波数より長くして誘導性にし
、垂直(水平)エレメントを共振周波数より短くして容量性にして、90°近い位相を作って円偏波にし、誘導性と容量性をほぼ同じ値にして目的
の周波数で共振させ、さらに水平と垂直エレメントの長さの差を付ける事によって結果的にインピーダンスが高くなる事が分かったので、この
性質を利用してクロスする部分のインピーダンスを高くし、クロスする2つのダイポールを並列に繫いで、50Ωにして同軸ケーブルを直接 接続
出来るようにしたアンテナです』
また、145/435MHzの2バンドで使うために435MHzにインピーダンス補正用エレメントをつけて435MHzのインピーダンスを50Ωにしています。
アマチュア衛星には、一般的にダイポ
ール又はモノポールが使われています。
このアンテナから出される電波は直線
偏波ですが、偏波は衛星の姿勢の変化
によって複雑に水平、垂直と変化しま
す。
この偏波が変化する電波を地上で受信
するためには、地上のアンテナを円偏
波にすると変化する偏波に関係なく良
好に受信出来と云われています。
アンテナを円偏波にするためには、ク
ロスするエレメントを90°位相差にす
る必要が有ります。
一般的には、クロスする一本のアンテナに1/4λ長の同軸ケーブルを付けて位相を遅らせる方法が使われます。
しかし、インピーダンスマッチングと、この位相ケーブルを同時に行うのは簡単ではありません。
ここでは、クロスダイポールを円偏波にするためにクロスする2本のエレメントの長を変えて位相差を作る方法で
行います。
すなわち1本のダイポールを共振周波数より長くして誘導性とし、クロスするもう一本のダイポールを共振周波数
より短くして容量性にして、それぞれ±45°とし、合わせて 90°近い位相にして円偏波にすると共に、誘導性と
容量性のリアクタンスを同じ値にしてクロスダイポールとして共振させ、さらに二本のダイポールの長さの差によ
ってインピーダンスが高くなる性質を利用して二本を並列接続して50Ωにするものです。
従って、50Ωの同軸ケーブルを直接接続することが出来ます。
設計的には大変ですが、一度寸法が決まってしまえばダイポールなので作るのは比較的簡単です。
JA9BOH/前川MOがモービル用にシングルバンドの145MHzと435MHzを作って、衛星通信で使っています。(2012/2月~)
この考え方のアンテナはかなり昔から有ったようですが、理論的根拠については、JH1GVY/森岡OMがホームページ
で公開しています。
1.クロスダイポールを2バンドで使えるか検討(MMANAによるシミュレーション)
一般的に1/2λダイポールは約3倍の周波数でも共振すると云われています。
衛星通信で使う周波数は145MHz及び3倍の435MHzで、どちらからが送信と受信になります。
そこでクロスダイポールの2本のエレメントの長さを変えて位相差を作り、円偏波とすると共に、3倍の周波数で
も使えるか検討しました。
145MHz 1/2λダイポールの給電点インピーダンスは約73Ω、145MHzの3倍の435MHzでは約105Ωとなると云われてい
ます。
シミュレーションで2本のダイポールをクロスして並列接続すると、合成インピーダンスは145MHzでは1/2の約37Ω
となります。
145MHzの3倍の周波数435MHzではインピーダンスは43Ωとなり、リアクタンスjXは-24Ωとなって3倍の共振周波数
はもっと高くなります。
リアクタンスjXがほぼ0となる共振周波数は446MHzで、インピーダンスは52Ωとなります。
その結果を纏めると図1になります。
図1
145.0MHzに共振させると446.6MHzにも共振する。
435.0MHzには共振していない。
一般に3倍の周波数で共振すると云われていますが、この場合は3.076倍になりました。
はたして、この状態で145MHz1/2λクロスダイポール/435MHz3/2λハーモニックアンテナとして使えるか疑問が残り
ます。
2.エレメント位相式の検討(MMANAによるシミュレーション)
共振周波数を一定にしてクロスする2本のエレメントの長を変えて、
145MHzで共振させながら、クロスするダイポールエレメントの長さの差を大きくして行くとインピーダンス
が高くなって行くと共に、3倍の共振周波数は低くなってきます。" きたー来たー!"不思議なアンテナ!です。
↓下のグラフ(図2)が、このアンテナが出来る重要ヒントになった。
図2
これからの検討は衛星通信バンド中心周波数145.9MHz及び436.5MHzで行います。
A 線ポイント(図2)
145.9MHzでクロスする2本のダイポールを同じ長さにすると、73Ωが2本パラ接続なので半分の37Ωになります。
一般的な145MHzクロスダイポールです。(青線)
この状態で、436.5MHでは、ほぼ3/2λハーモニック(高調波)アンテナになるのでインピーダンスは98Ωとなり2本
パラ接続なので半分の49Ωになります。(赤線)
位相は同相(ゼロ)で、145.9MHz水平方向のパターンはダイポールと同じ8字特性になります。
436.5MHz水平方向パターンはほぼ四つ葉になります。
A線ポイントの状態では、インピーダンスは436.5MHzは良いのですが145.9MHzのインピーダンスが低すぎます。
また偏波も直線偏波です。
B 線ポイント(図2)
2本のクロスするアンテナの長さに差を付けて、1本を共振周波数より長くして誘導性とし、もう1本を共振周波数
より短くして容量性にして、位相を付けて円偏波にしてゆくと145/435MHz共にインピーダンスが高くなります。
B線ポイント(図2)では、
145.9MHz, R=41.34Ω, jx=7.33Ω, SWR=1.25, Gain=5.20dB、地上高4m
436.5MHz, R=61.80Ω ,jX=-7.87Ω, SWR=1.29, Gain=5.23dB、地上高4m
145.9MHz/436.5MHz共に共振周波数よりも少しズレますが、妥協して何とか使える状態になります。
パターンは、かなり切れ込みが有り直線偏波に近く、多少楕円偏波になっている程度のようです。
完全に共振していませんが、ダイポールはインピーダンス変化がブロードなので、この状態で作ってしばらく使
っていましたが結構QSO(衛星通信)できました。
アンテナを回転しないで良いので手軽に出来ます。
このアンテナを作ったときのSWRは、145.9MHz,SWR=1.26, 436.5MHz,SWR=1.05 でした。
送受の分離はデュープレクサーを入れて行いました。
435MHzは、水平パターンの切れ込みのためか受信に変動があります。
145MHzと435MHzのインピーダンスをも少し50Ωに近づけ、リアクタンスももう少しゼロに近づけて、少しでも円偏
波にしたいところです。
なお、図2の位相角度目盛は、インピーダンスの抵抗成分とリアクタンス成分から想像した概略の値で、こんな
感じと思ってください。
3.435MHzインピーダンス調整用ディレクターの検討(MMANAによるシミュレーション)
C 線ポイント(図2)
A線、B線の欠点を少しでも解決したいと検討したのがC線ポイントです。
クロスする2本のダイポールの差をさらに大きくしました。145.9MHz/436.5MHz共に共振インピーダンスが
高くなると共に、3倍共振周波数は低くなってきました。(これが第1のミソの大発見?)
145.9MHzは、ほぼ50Ωになりましたが、436.5MHzは約100Ωです。
これを145MHzに影響させずに435MHzだけ50Ωにすれば良いことになります。
一般的にダイポールにインピーダンス補正用エレメントをラジエーターに接近して2エレメントにするとインピーダンスが低
くなります。
メーカー製の多エレメント八木アンテナでもラジエーターのすぐ近くにインピーダンス補正用エレメントを置いてインピーダ
ンスを補正しているものが有ります。(以下、補正用エレメントと書く)
この考え方で、435MHz1/2λ×0.9ぐらいのクロスエレメントをクロスダイポールに近づけていろいろ何百回?とMMA
NAでシミュレーションしました。
435MHz付近に共振したクロスエレメントを145MHzクロスダイポールに近づけると、435MHz帯だけインピー
ダンスが低くなって行きます。(これが2つ目のミソ?)
その距離が40mmになったところで50Ωとなりました。145MHz帯には影響しません。
その結果、145MHz/435MHz・2バンドクロスアンテナ(エレメント位相式、インピーダンス補正用エレメント
付き)が出来ました。
インピーダンスは145.9/436.5MHz共に50Ω近くになり、共振周波数もほぼ一致させることが出来ました。
シミュレーション結果は図3の通りです。
↓図3
下図の(435MHz調整用ディレクター付き)を(435MHzインピーダンス補正用エレメント付き)に変更します。
注)エレメント長は、同軸ケーブル半田付け点からエレメント先端までの長さの2倍です。
2013/8/24 ↑
↑↑145.9MHzはほぼ円偏波かな?(パターンの差は6dBです。3dB以内を円偏波と云っている)
↑↑436.5MHzは複雑な円偏波モドキ?