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貴方の腕で抱き締めて

【 act9】



明かりを落としたベッドに二人で転がる。つってもまだ昼間みたいで、遮光カーテンから漏れる光が室内をくっきりと浮かび上がらせている。
捲簾は俺を抱いたまま、ずっと俺の髪を触ってる。さっきずっと食べてない俺を心配して食事の用意をしようかって聞いてくれたけど、吐いてからまだそんなに時間が経ってねぇから、食っても吐いちまいそうでいらないって言っといた。それに、今はあんま離れたく無い。
ぼんやりと室内を眺める。ホントは身体も精神も疲れてるし、寝てないから眠い。けど、目を閉じるとあの感触が甦るんだ。身体中を這い回る手だとか、拘束する腕だとか、口内を犯す熱だとか、身体を引き裂く肉塊だとか、胎内に注がれる液体だとか、―――あの瞬間の捲簾の背中とか。その度キモチ悪くなって、苦しくて、怖くて堪らなくなって、目を開けて捲簾を見てやっと少しだけ安心できた。でも、アレは夢じゃ無い。全部、現実なんだ……。
「なぁ、捲簾」
「ん?」
「……抱いてくんね?」
顔が見えないように捲簾の胸に額を擦り付けそう言うと、捲簾は俺の髪にキスを落として言った。
「駄ァ目」
「…………」
「お前自分の身体の状態わかってるか? だから、今日は駄目だ」
優しい声、優しい手、優しい言葉。だけど、きっとそれは言葉通りじゃない。優しい言葉に隠された裏の真実。ソレが本当。そりゃそうだ。こんな身体でンなこと言われたら、俺だってそう思うだろう。
―――触れたくなんか無いって。
処女厨じゃなくたって、他の男とヤりまくったヤツなんて、抱きたくなんて無いだろう。しかも絞まりもしないんじゃ、キモチ良くもねぇし楽しくも無い。今はまだ、多分捲簾も冷静になりきってないから触れてくれてるけど、きっと少し時間が経って落ち着けば、捲簾は俺に触れたくなくなるだけじゃなく、さっきの言葉だって撤回するだろう。
捲簾の手に顔を上げさせられて、視線が絡む。だから、俺は笑って見せた。大丈夫、解ってるって。なのに捲簾は、その顔を見て苦笑した。
「なんて顔してんだ」
「ん、大丈夫。解ってるから」
もう、十分だよ。
頬を撫でてくれる手に擦り寄りながらそう答えれば、大きなため息を吐かれてしまった。
「解ってねぇよ。俺がお前を今抱かないのはお前の身体が心配だからだっつーに」
「……うん」
それもウソじゃないってわかってるけど、それだけじゃないのも解るから。だって捲簾の雰囲気がいつもと違う。態度も言動もいつもと同じにしてるけど、雰囲気だけは違う。なんか、ピリピリしてる。
「捲簾、怒ってるだろ?」
言葉に少しだけ目を見開いた捲簾は、優しく苦笑した。
「お前にじゃねぇよ」
俺の額にキスを落とした捲簾が、悪戯を告白するみたいなカンジで俺に告げる。
「お前にじゃなく、自分に怒ってるんだ。お前をこんな目に合わせちまった俺自身に、凄く腹が立ってるし殺してやりたい」
殺してって。
そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも、気を使ってくれなくてもいいのに。責任感なんかで付き合うなんてさ、そんなの、絶対にイヤだから。
「……俺、平気だぜ? どうせ男だしさ、孕むわけでもねぇし」
こんなのケンカの傷と同じだから。
そう言った俺を、ぎゅっと、捲簾は抱き締めて背中を撫でてくれた。すごく優しい手で。
「馬鹿」
ボソリと呟くように告げられた言葉。貶すはずの言葉なのに、とても優しい、愛しいって感じの声音。
暖かい……。
言葉が、手が、腕が、胸が、暖かい。
どうしよう。なんか、変だ。
さっきの捲簾の言葉のせいかもしれない。
『俺の隣で誰よりも幸せに』って。
なんだろ、洗脳されちまったのかな。
だって、こんなの、オカシイ。
俺が、ホントに、捲簾に大切に思われている気がするなんて。
そんなこと無いハズなのに、有り得ないのは解ってるのに、………………信じたいなんて。
「っあのさ……もしも、俺が女で、あいつらに孕まされてたらどうしてた?」
「そりゃ、自分を責めて後悔しまくって、相手は取り敢えず再起不能にすっけど」
捲簾が笑って、じっと俺を見た。
「それだけで他はどうもしねぇよ。そんなことでお前を嫌いになんてならない」
澄んだ真っ直ぐな強い瞳。ウソも躊躇いも無い瞳。
……その言葉を信じても良い? 捲簾を、信じても良いの? 俺でも、……幸せになっていいんだって、なりたいって、願っても良いのかな……?
『アンタナンカイナケレバヨカッタノニ』
誰にも届かなかった手を、捲簾はちゃんと掴んでくれた。
全部知っていて、なのに俺の手を掴んでくれた。
だったら。
―――信じる
強くなる。
―――胸を張れるように
もう、逃げない。
―――アンタの隣で笑えるように
絶対幸せに、なるんだ。
足掻いて生きてやるよ。
「捲簾」
「ん?」
大きく息を吸って、俺は口端を上げて笑って見せた。
「証拠……欲しいかな」
その言葉に、捲簾は何かを言いかけ、けれど開いた口を閉じるってのを何度か繰り返したあと、深々とため息を吐いて仕方なさそうに笑った。
「あーもー、俺の負けだ。解ったよ。シよう」
掛け布団をベッドの下へと跳ね除けると、捲簾は身体を起こして俺の上に四つん這いになって、優しくキスをしてくれた。
「身体辛かったら言って」
キスの合間に囁かれた言葉。優しい言葉。俺の身体を心配してるんだろうけど、でも今は例え痛くても苦しくても止めてなんて欲しくない。
腕を回して捲簾を引き寄せ、離れてた身体を重ねる。口を開くと応えるように入ってきた舌に、軽く歯を立てて俺も応える。口ン中を舐め回そうとしてるソレを噛んで固定し舌先を触れ合わせるようにチロチロ舐めると、捲簾の表情が変わった。と、舌を噛んでいた歯の間に捲簾が指を突っ込んで舌を引き抜く。
「煽るな。ただでさえお前をメチャクチャに犯してぇの我慢してんのに」
獣みたいな顔で、捲簾が俺を見た。欲にギラつく、視線だけで犯すようなねっとりとした目。ヤバい、興奮する。その目で見られるだけでゾクゾクして勃ちそう。
口に突っ込まれた指が口内を撫で回す。今度はその指を舐め回して吸い上げると、ジャマすんなとでも言うように口をこじ開けられ指が増やされた。噛まないように口を大きく開けて、動き回る指に舌を這わせる。口端から飲み込めない唾液がこぼれた。
「……ハ、ンぅ」
捲簾の唇が耳朶に触れる。唇だけで上から下まで食むと、今度は舌で凹凸をなぞるように舐め回す。ゾクゾクと快感が背筋を這い上がる。
「け……ん、ん」
指を突っ込まれたままの口じゃ言葉も発せない。それでも勝手に出た言葉にならない声に、捲簾が笑う。その息がマトモに耳に吹き込まれて身体が跳ねた。
「お前、ホントここ弱いな」
言葉と共に舌が入り込んできてビクビク震える。何か訴えたい口を犯している指が、舌を捕まえて完全に言葉を奪う。
「あ、ッア、ア」
耳穴に舌を突っ込まれて舐め回される。ンなトコ汚いって思うのにもっとシて欲しいとも思う。
「ア、ハ……ァ、ア」
完全に溶けて身体に力が入らない。ただ捲簾に与えられる快感に身体を跳ねさせて声を零す。
快感に役にたたなくなってる口から指は抜かれないのに、舌は耳から抜かれてしまい、 思わず強請るように抱き寄せてる腕に力を込めると、今度は耳朶に歯を立てられた。甘噛みより強い力で何度も噛まれて、少し痛みを伴うソレがヨくって堪らない。噛みながら舐められるのも、噛んだトコを歯で引っ張られるのも、出来た噛み痕を舐められるのもヨ過ぎて知らず腰が揺れる。
「ふ、ア、ア、ッンあ、ア」
イイ。キモチイイ。もっと、もっとホシイ。もっとシて欲しい。
くっついている捲簾の身体に回した手で、捲簾の身体をまさぐる。肩胛骨、背筋、腰、ケツ……。身体をただ重ねてるだけじゃ足りなくて腰を押し付け快感を貪る。完全に勃ってるチンポを身体が勝手に捲簾に擦り付けてて、止められない。
「ッふあ、あ……ハ……?」
口内に突っ込まれてた指がやっと抜かれ口が自由になるのと一緒に身体を離されて、思わず不満気な目で捲簾を見つめると、捲簾は獲物を前にした獣みたいな顔で口端を吊り上げた。
「言ってみろよ」
舌舐めずりをするその顔のエロさに煽られて呼吸が上擦る。
「エロいオネダリ聞かせて」
無意識に揺れる腰が、もっともっとって、止まらない。オネダリすれば、シてくれる? 何でもシてくれる?
―――シてくれないとしても、もう我慢なんてできねぇけど。
捲簾の身体から剥がれた手を自分の下肢に持っていく。あぁ、いつものジーパンなんか穿いてなくて良かった。こんな震えてる手じゃボタンを外せないトコだった。パジャマと下着をまとめて掴んでズラす。脱いでしまいたいのは山々だが、今腰を上げながらパジャマを脱ぐなんて真似はできそうにない。そこまで身体に力入んね。もう面倒だからソコだけ出せればイイ。ガチガチに勃ってるチンポを掴んで引っ張り出し、パジャマの上は腹までめくりあげる。マジでソコだけ晒してる状態。だけどンなコト気にする余裕なんて無い。てか、ヤベ、手が勝手に動いてチンポ扱いてた。けどキモチヨくてコレ止まんね。捲簾が俺を見てるのに。先走りが溢れて手を動かす度にクチュクチュ音がする。気持ちイイ。でも、こんなオナニーみたいな生理的な快感じゃ足りない、脳天ブッ飛ぶくらいの快感が欲しい。一人じゃイけないトコまで、アンタと二人でイきたいから。
「捲簾、コレ、舐めて……」
ガチガチに勃って先走りでグチャグチャのチンポを舐めて欲しいと捲簾に強請る。扱きながら、示す。
「俺の勃起チンポ、舐めて」
唇を舐めて言ったその言葉に、捲簾は満足そうに笑った。
「いいぜ」
捲簾が身体を下に移動させ、俺の脚を跨いだまま蹲りチンポに顔を寄せる。パジャマを脱いでもいないから脚を開けないけど、そんなことを気にする様子も無く、捲簾はソコだけ露出されて俺の手に扱かれている先走りでドロドロのチンポに舌で触れた。
「ッ……!」
俺の指の間に舌を這わせて先走りを舐め取るようにしては、動いている手を邪魔だとでも言うかのように唇で食む。先っぽには触れずに竿の部分だけを舌が悪戯していく。それに押し退けられるように少しずつ手が外れていくと、晒された部分をまるで生き物のように舌が這って快感が腰から湧き上がる。
「ッは……ァ」
舐めてるだけだ。捲簾は舐めてるだけなのに、手で扱くより全然キモチイイ。思わず腰が揺れる。チンポを扱いていた手で、今度はシーツを掴む。腰振りたい。焦れる。緩やかすぎる快感に、頭がおかしくなりそうだ。
「ン……ッンン」
裏筋を舌で舐め上げられて腰が跳ねる。けど、閉じている足の上に捲簾が乗っている状態なせいで、実際はビクッとしただけに留まった。つか、腰振りたいのに振れないっつー。確かに舐めてっつったのは俺だけど、こんな、マジで舐めるだけとか、苦しすぎる。
「捲……簾、も……くわえてッ」
「しょうがねぇなぁ」
竿を横から食んだまま言うなッ。唇の動きがダイレクトにキて、たまんねぇ。呼吸が上擦ってゾクゾクするのが止まらない。動きたい。早く、もっとシて。もう、イきたい。もう、苦しいから。
捲簾の唇が竿を食みながら移動し、カリのエラにキスを落とす。チュ……と軽く吸ってから舌を這わせるように、そのままカリを舐め上げていく感触に快感がゾクリと背筋を駆け抜けた。
「ッ……!?」
ヤバ……。身体がスゲェ敏感になってる。
「ッア!!」
先っぽまで辿り着いた舌に尿道口を舐められてビクンと身体が跳ねた。ヤバい、コレヤバい。イく。舐められてるだけなのに、イきそう。
はくはくと呼吸を喘がせながら、下腹に力を入れて耐え、捲簾を止めようとシーツを掴んでいた手を伸ばす。捲簾の頭を押し退けようと髪に触れた瞬間、その小さな穴に舌を突っ込まれた。
「ッアアアアア!!!」
敏感な内部を舌で犯されて熱くなった身体を耐えきれない快感が駆け抜け、身体を思い切り跳ねさせて精液を勢い良く吐き出す。制御なんて効かないソレに、無意識に捲簾の髪を掴んだまま。
「ハ……ァ、ァ……ッふぁ」
ビクビクと身体が跳ねるのに合わせてドクドクと射精する。数度吐き出し、その勢いが弱まって、やっとマトモな思考が戻ってきて、そこで捲簾の髪を掴んでることに気付き慌てて手を離そうと顔を向けた、ら。
「……ッ悪ィ!」
パッと手を離したけど、イマサラってか…………うわ……。舐めてくれてた捲簾が、舐めてたせいっつか、舐めてただけだから当然ってか……。
捲簾が細められてた目を開くその動きにつられて、トロリと捲簾の頬を白い液体が伝った。口周りだけじゃなく、顔中に飛び散った……精液。ヤッべ……、思いっきり顔射しちゃった……。
ポタポタ垂れるソレに硬直してる俺の目の前で、捲簾の動きも止まってる。頭押さえられたあげくモロに顔射されたワケで、さすがに怒るかも……と内心冷や汗をだらだら垂らしてた俺を見ることも無く、捲簾は精液を拭いもせずおもむろに顔を伏せて項垂れた俺のチンポの先端にキスをした。
「ッン!」
尿道に残ってる精液を吸い上げられて腰が跳ねる。ナニ? なんで? 怒ってねぇの? そのまま何も出なくなるまで先っぽを吸った捲簾は、今度は自分の顔から俺の身体に垂れた精液を舐め始める。下腹から足の付け根までを舐め回されて萎えかけたチンポがピクリと震えた。そんなチンポのすぐそばで捲簾が今度は何か思案しているような顔で動きを止めた。なんだろ、何考えてンだ? てか、その位置で考え事しないでくれ。近い。チンポに近すぎる。
「お前さ、アイツらに回されたとき、もしかしてイってなかったりする?」
動きを再開した捲簾に顔についた精液を舐めながら聞かれて、一瞬何を言われたのか解らなくてキョトンとしてしまった。
「へ? あぁ、そうかも。全然気持ちヨく無かったし」
半分以上意識飛んでておぼろげだけど、気持ちヨくなかったのは確かで、んで多分イってはいない。つか、勃ちすらしなかった気がする。
「チンポはともかく、前立腺に当たったりとかしなかったのか?」
「当たったかもだけど……」
ナカをガンガン突かれまくったんだから、そりゃ当たりはしたんだろうけど。
「俺、多分捲簾以外にされても気持ち良くねぇから。ずっと気持ち悪いのしか感じてなかったし」
何されても、ずっと快感なんて感じなかった。触れる体温も、声も、全部嫌悪しか感じなかったから。
「……それじゃ尚更キツかったんじゃね?」
「別に……」
そりゃ、あの状況を楽しめたならその時は楽だろう。けど、そしたら別のトコロが苦しかっただろうよ。
「んじゃ」
捲簾の指が半勃ちのチンポに絡んで、亀頭にキスをされピクリと震える。
「空っぽになるまでイかせてやるな」
すごく優しい目で俺を見て、捲簾がチンポを口に含んだ。ためらうこと無く根本まで飲み込んで、緩く喉奥で絞めつけられて思わず仰け反る。
「ッア!」
やっと与えられた強い刺激、だけどイったばっかの身体にはキツ過ぎて身体が逃れようとのたうった。そんな俺の上で捲簾が身体を浮かせ、穿いたままだった俺のパジャマに手をかける。腰を片手で掴み俺の身体を持ち上げると、もう片方の手でパジャマと下着をまとめて引きずり下ろした。けどさすがに下までは下ろせず膝の辺りで止まったソレを、引き継いで自分で蹴り脱ぐ。やっと解放されて自由になった脚をすぐに捲簾に掴まれ、思い切り開かされた。股関節が痛いくらい広げられ、眉をひそめて捲簾を見ると、捲簾はくわえっぱなしだったチンポを口からズルリと出すトコだった。全部口から出して、今度はソレを舌で辿りながら顔が下りる。竿、玉、そして―――。
ぬるりとした感触がソコを舐めた。
「ッ!!! ヤメッ!」
すっと血の気が引いて、慌てて捲簾を引き剥がそうと頭を掴んだ。けど、焦る俺をよそに、捲簾はソコから離れてくれない。俺の、他のヤツらに散々突っ込まれて緩くなった、ケツの穴……。
「ヤメッ! ソコ汚いから!!」
「……何いってんの? お前風呂入ったばっかじゃん」
「じゃなくて……ッ」
唇を離さないまま話す捲簾の頭を押すのに、びくともしない。ンなトコ舐めんな。風呂とかそういう問題じゃない。
「ソコ、散々突っ込まれて、出されたし。だから、俺、汚いから、舐めないで。もう挿れて平気だから」
その言葉に捲簾の動きが止まった。だから、止めてくれたんだとホッとして捲簾を見た瞬間、そうじゃないって気付いた。
捲簾は何も言わずに、俺をすごい目で睨んでいた。その目に身体が硬直する。怒りを含んだ視線。今まで一度も俺に向けられたことの無いソレに、身体が勝手に後ずさろうとする。
―――怖い。純粋な、恐怖。
なんで? 何に? 俺に? 俺に、だよな。俺に怒ってる……よな。
思わず動揺して言葉を紡ぐ。
「あ……の、ひきつって痛いならローションとかで」
「もうお前黙れ」
言葉と同時に指を突っ込まれて身体が跳ねた。そして俺が何か言うより前に挿れられた指がバラバラに動き出す。
「ッア!?」
内壁を押すように擦っていく指に身体がビクビクとのたうつ。馴らしてないのにアッサリ入ったから油断した。コレ一本じゃない。指なのに、緩みきった入り口なのに拡げられてる感覚がある。てか、圧迫感すらあるって、何本挿れられてるんだ。
グリッと指に前立腺を押されて声も無く仰け反る。捲簾の口で刺激されて勃ってたチンポからトロリと先走りが零れて、それがまるで俺の理性が溶け出しているみたいで。ヤバい、トびそう。
「ヒッ!?」
驚きに上擦りかけてた吐息が詰まって喉が変な音を立てた。指で思い切り拡げられてるソコに濡れた感触。指の隙間を這っていく、舌の感触。
「ヤッ」
逃れようと身体を捩りかけた瞬間、またナカの指が前立腺を思い切り擦ってって勝手に身体が跳ねる。ナカをグチャグチャに掻き混ぜる指と、入り口を舐め回す舌に、やめさせたいのか強請りたいのかもう解らない。キモチイイ。腰が揺れてる。ナカピクピクしてる。
「ッぅ……、ッァ、ア」
痙攣し始めたナカを指が何度も擦って行く。前立腺をこれでもかってくらい押されて擦られて抉られて目の前が白くハレーションを起こす。その度に完全に勃ってるチンポからイッたときみたいに熱い液体が吹き出す。零れた液体が身体を伝って垂れてケツの穴まで濡らしていく。と、ソコを舐めていた捲簾がイキナリ入り口に唇を触れさせて、ソコをキツく吸い上げた。
「ッアアアア!!!」
ナカに入り込んでた空気や垂れてた先走りやソレに混じってた精液や腸液や、全部まとめて吸い上げられる壮絶な感覚に、ビクンと身体が跳ねる。ヤバイ、またイく。脚に思い切り力が入って硬直した瞬間、前立腺をメチャクチャに擦られて悲鳴を上げて仰け反った。
「ヒッ!!」
突き上げるように腰が浮いて触れられてもいないチンポから精液が吹き出す。腹から胸へかけて熱い液体がパタパタと降り注いて、それすらもヤバイくらいキモチイイ。
「ッ……! ッ……ア! ッア! ア! ……ハ…」
カクンと全身から力が抜けて、浮いてた腰がシーツに落ちた。全力疾走したときみたいに荒い呼吸が苦しくて必死に酸素を取り込む。
そんな俺のナカから捲簾はズルリと指を抜いて、もう一度入り口を舐めた。
「お前は汚なくなんかねぇよ」
ただでさえ拡がってたソコは、指でグチャグチャに掻き回されてたせいで相当拡がっているらしく、舌を突き入れる感覚じゃなくてベロリと舐め回す感じでぐるりと一周していったが、それどころじゃない俺には何の文句も発せない。胸を喘がせたまま半分飛びかけてる俺の太腿を撫でると、捲簾は身体を起こして、再び俺に覆い被さった。
腹に散ってる精液を指で塗り広げるように撫で上げ、ヌルヌルの指で乳首を摘む。
「ッア!」
当然精液で濡れた指で摘めるワケもなく、挟む指から乳首がヌルっと逃げる。その感触に身体がビクリと震えた。
「ッヤ……! ッ! ひぅ!」
何度も何度も繰り返されて、痛いほどの快感に吐き出したばかりのチンポが再び勃ち上がっていく。もうヤダ。キモチイイ。ヨすぎておかしくなる。けど、足りない。もっとホシイ。もう、このまま狂ってしまいたいから。
「け……れ…」
震える吐息で呼べば、気付いてくれた捲簾が動きを止めて俺を見てくれる。その身体を少しだけ押し返すと、捲簾が俺との身体の間に隙間を開けてくれた。そして思い出したように胸の上まで押しのけられてグシャグシャになってたパジャマを脱がしてくれる。だから、必死で俺も協力して腕を抜いて、そして膝を立てて脚を開いた。見上げた捲簾は上も下もまだ全部着たままで、全部脱いでんのは俺だけだったけど、ンなこともうどうでもいい。
そろりと手を下肢へと向ける。捲簾の視線がその手と共に降りていく。俺の身体を這っていく視線。どこを見てるかなんて解ってる。でも、止まらない。………違う。ホントは、見て欲しいんだ。
チンポを超えて、玉も超えて、その先に触れる。捲簾の視線を痛いほど感じる。それが、スッゲゾクゾクする。
開いた脚の間にそっと指で触れた。ぽっかり開いた入り口の感触。けど、それが今の俺の身体。意を決して指を進めれば、びっくりするほどアッサリと飲み込まれた。右手と左手の人差し指と中指、計4本が簡単に、大した圧迫感も無く。
マジすっげぇガバガバ……。こんなケツ捲簾に見られてるなんて……つーか、自分から見せてるとか、俺変態かもしんねぇ。
そう思うのに、なんでだろ。ゾクゾクしてたまらない。興奮してくのが止められない。もっと見て欲しい。そんで、……触れて欲しい。止まらない。
「捲簾、挿れて……」
ぐっと指先に力を入れて、ソコを拡げる。自分の指で、捲簾に内部の粘膜を見せつけるように、ココを犯して欲しいと強請るように。
「グチャグチャに犯して。アイツらに触れられたトコ、捲簾が全部上書きして。そんで、ナカに精液注ぎ込んで」
内壁がヒクヒクしてきた。早く。欲しくておかしくなる。
「捲簾の精液で、俺の中いっぱいにして?」
同じ狂うなら、アンタのくれる快楽でトびたいから。
俺の指先を見ていた捲簾の口元が歪む。
「もう止まんねぇぞ」
パンツをずらしただけで跳ね出てきたチンポを俺の指に擦り付け、捲簾は身体を倒して俺に触れるだけのキスをした。そして、拡げられたソコをゆっくりと満たしていく。
「ふぁ……ぁ……ぁ……」
入ってきた熱の熱さに腰が痺れる。こんなの、誰が相手だって変わらない、種の保存の本能からも外れている行為なのに。なのに、なんでだろ。スッゲ気持ちヨくて、満たされてる感じがして、泣きたいくらい、幸せで。
指を入り口から抜いて、縋るように捲簾の背中に回す。手に触れるTシャツが邪魔でたまらない。直接捲簾に触りたい。
もぞもぞと手を動かしてると、それに気付いた捲簾がTシャツを脱いでくれた。その胸に残る赤い痕。捲簾が、俺を好きでいてくれる証。絶対忘れない。消えちまっても、俺は忘れない。
少し離れてしまった捲簾の身体を抱き寄せて、舌を突き出しキスを強請る。動きにくいのは解ってるけど、全部捲簾に触れたくて堪らない。身体を重ね合わせるだけじゃなく、もっと深くまで溶けるくらい犯されたい。それに答えるように捲簾が少し伸び上がって舌を吸い込み唇を合わせた。そのせいで捲簾のチンポが最奥を抉ったあげく腰が浮いて苦しい体勢になったけど、それすらも快感に直結してしまい、勃ち上がったチンポが震えて捲簾の腹で擦れて更に気持ちヨくて、快感のループにハマって涙が零れた。
「ッ……ンッ……ふ…ン……ぅ」
吐息も嬌声もすべてを飲み込まれてくぐもった声だけが漏れる。口内を荒々しく犯されて頭の芯がぼんやりしてくる。溢れる二人分の唾液をコクコクと嚥下して、それでも飲み込み切れない分が零れて頬を濡らした。
ゆっくりとナカを揺さぶられて、ジワリと快感が湧き上がる。痒いところを掻いて貰えたような、でも足りない。もっと欲しい。もっと強くして。もっと、ヒドく犯して欲しい。
開いてただけの脚を伸ばして捲簾の腰に巻き付け、自ら腰を揺らして前立腺を擦り付け、チンポを捲簾の腹に擦り付ける。キモチイイ。先走りで腹がヌルヌルしてて滑りイイしあったけーし、ナカも奥までいっぱいで熱くてゴリゴリされてる。クッと舌を強めに噛まれて、ゾクゾクと恐怖じゃなく快感が走り抜けた。内壁の痙攣が止まんね。ヒクヒク小刻みに動くせいで、捲簾のチンポを自分でくわえこんでどんどん気持ちヨさが増していく。捲簾が腰を引いた時のチンポがゆっくり抜けていく感覚に皮膚が泡立つ。そしてまた奥まで犯されて、ヨすぎて頭が真っ白になる。
「……ッ!!! ッ!!!」
ビクビク身体が震える。けど、上の口も下の口も捲簾に塞がれてる状態で身体を重ねられているせいでマトモに快感を逃すことができない。だんだん激しくなっていく動きに、やらしい音が響き始め、耳からも犯されていく。ヤバイ。もうイく。イきそう。気持ちヨすぎて何も考えられない。もっとって、それしか考えらんない。
思い切り突き立てられる捲簾のチンポが指じゃ届かない奥の粘膜を思い切り抉っていく。前立腺はずっと硬い捲簾のチンポにゴリゴリ擦られっぱなしで敏感になりすぎて痛いくらいで。互いの腹の間のチンポもグチャグチャに揉まれててヤバイくらいイイ。乳首も汗でヌルヌルしてよく滑るせいで捲簾の身体に摩擦も無く擦り付けられてジンジンしてるし。声も、呼吸すら奪われて口内も犯されて、もう何がなんだか解らないくらい気持ちヨくて。
マジで狂う。気持ちヨすぎて、おかしくなる。でも、もっと欲しい。いっそ狂ってしまいたい。もう死んでもいい。
「ッ!!! ン!!! ン……ン!!!」
グチュっと、最奥を思い切り抉られた瞬間快感が弾けた。捲簾を跳ね除ける勢いで身体が跳ねて、腹の間のチンポから精液が吐き出される。汗でヌルヌル滑る指で必死に捲簾に縋り付く。と、捲簾がキツく俺を押さえつけて動きを止めた。
「……ッ」
内壁に熱い液体が叩きつけられる。その感覚にまた身体が跳ねて全身が硬直する。ナカを満たしていく精液に、なぜだかスゲェ満たされてる感じがして、ふっと息をついた瞬間、全身から一気に力が抜けた。
「ッハ…! ッァ! ハ! ハァ! ハァ!」
キスから開放されて、今度は必死に酸素を貪る。朦朧としてる、すでに限界間際の俺とは対照的にまだ余裕な捲簾はすぐに息が整ったようで、ナカでまだ結構硬い状態のチンポを抜かないまま身体を起こした。虚ろな目で呼吸を喘がせながらぼんやり見ている視線の先で、捲簾が俺のチンポを掴む。
「ッ!?」
イッたばっかで敏感なそれを握り、逆の手で先端をそっと撫でる。
「ヤ…ら!」
ただでさえ先端は敏感なのに、更にイッたばっかなせいで痛いくらい感じるそこを優しく撫で回されて腰が震える。感じすぎて苦しいのに身体に力なんて入らないし、まだナカに捲簾のチンポが入りっぱなしで身体を引くことすらできない。
「け、れ! ヤらッ! ヤ!」
必死に訴えるのに捲簾は全く聞いてはくれない。それどころか勃ち上がってくチンポを思い切り擦り始める。しかも竿じゃなく先端だけ。
「ヤ、何? ヤ……ッ!?」
ゾクリと何かが背筋を這い上がった。感じたことの無い感覚。
「何!? ヤ! 何コレ!?」
ゾクゾクという感覚が、捲簾が先端を弄る度に増していく。制御なんて効かない正体不明のそれにどうしていいか解らない。
「ヤら! ヤ! なんか、なんかクる!」
這い上がってく感覚は知らないけど、何かに似てる気がする。なんだっけ、コレ。精液が出そうなのにも似てるけど、そうじゃなくて、もっと近いのが……。
「ッ!? ヤダ!!」
近いモノの正体に気付いた瞬間すっと血の気が引いた。グリグリ弄られてるチンポの先から出るモノ……そんなの精液以外に1つしかない。
「ヤダ! ヤメろって! も、マジ止めて! ヤバイから!」
逃れようと必死に抵抗するけどもがくだけで捲簾を止めることすらできない。イきまくって身体の力が入らない上にナカに捲簾のチンポ入ってるし俺のチンポ思い切り弄られてるし。ヤバイ感じになってるのに捲簾は先端を手のひらで弄るのを止めてくれない。ぐりぐり柔らかい手のひらが押し付けられて程よい圧迫感と擦れる摩擦とにヤバイ感覚が一気に増す。
「ダメ! も、漏れる! 漏れるから!」
ヤバイ。マジで漏れる。こんなトコで繋がったまま漏らすとか冗談じゃない。冗談じゃないのに、なんで手を止めてくれないんだ!? パニックに陥る俺のチンポを思いっ切り捲簾が擦る。ヤバイって! もう、これ、無理!!!
「ヤッ! ダメッ! も……ヤダァッ!!!」
ビクンと身体が跳ねて、先端から何かが思い切り吹き出した。止めようと思っても止まらない熱い液体。当然精液は連射なんてできるわけがないんだから、他にそこから出るのはションベンしかねぇわけで……。
「……ッふ」
耐えきれずに涙が滲む。セックスの最中に漏らすとか……。過去お相手をしていただいた女で感じすぎて漏らすヤツも居たが、まさかこんなにいたたまれないものだとは……。
全部漏らしちまってからようやく捲簾がチンポから手を放してくれたが、今更っつーかなんつーか。てか、まだ繋がってるワケで、当然捲簾にもかかっちまってるワケで……。
「ゴメ……」
「ん?」
小さすぎて良く聞こえなかったのか、捲簾が身体を少し倒して俺を見た。俺の出した液体で濡れた指を舐めながら。
「ッ!!? 舐めんなンなモン!!!」
「へ?」
反射的に叫んだ俺に、捲簾がキョトンとした顔をする。そして、何かを思いついたようなたくらんでるような意地の悪い笑みを浮かべた。
「ンなモンってコレ?」
捲簾は俺の腹に残ってた液体を指で掬い、その指をおもむろに俺の口に突っ込んだ。
「ッ!!!?」
あまりの衝撃にフリーズして抵抗すらできない。ションベン漏らしたからって気持ちが萎えるとか行為を途中で止めるとかそこまでの反応はしないが、だからといって舐めたり飲んだりしたことは当然だが無い。しかも、相手のならまだしも自分のを……。
「バァカ。ちげぇよ」
呆然としている俺に捲簾が愉しそうに笑って言ったが、何を言われたか解らずぼんやりしたままでいると、捲簾は口から指を引き抜いてその指をまた舐めた。
「小便じゃねぇよ。潮だ、潮」
「潮…………?」
潮ってなんだっけ。えっと、確かセックスの最中、女が…………女が?
「潮!? って、あの!? なんで!?」
「やっぱお前知らなかったんだな。男でも出んのよ、潮は」
「は!?」
「イったあと亀頭を弄りまくると出んだよ。フツーに」
「…………」
フツーに出るかどうかは置いといて、フツーに知ってる知識なのかどうかがスッゲェ気になるんだけど!?
てか、ションベン漏らしたんじゃなくて良かったぁぁぁ!
「味も匂いも無いだろ?」
確かに匂いも無ければ口の中も不味くは無い。てか。
「…………マジビビった」
男も潮吹くなんて知らなかったせいで、絶対ションベン漏らしたって思ったもん。
脱力した俺の訴えに、捲簾は楽しそうに笑うと腰を揺すった。
「ン…」
「別に小便でも良かったんだけどな、俺は」
「は?」
「スカトロ好きでもねぇけど、お前のなら全然余裕で飲めるわ」
「ッ!!? 飲むな! ゼッテェ飲むな!!! ッア!」
必死に訴えた瞬間ナカを抉られてビクリと仰け反る。
「まぁそれは追々な」
腰を掴んで抽送を開始されて反論ができない。
追々ってなんだ!? ゼッテェヤダっつってんのに!
声が出せなくて涙目で捲簾を睨むと、脚を掴んで捲簾が身体を倒す。
「まだイけんだろ?」
キスと共に降ってきた言葉に小さく頷く。身体自体は結構キツい。ケド、なんつーか、もっと欲しいっていうか、もっとこうしていたい。触れたいし触れて欲しい。ずっとくっついていたい。身体を重ねてるだけじゃなくて、もっと近くで触れ合いたいから。だからもっとシたいってゆーか、捲簾が欲しい。
降ってきたキスに答えながら腕を回して捲簾を引き寄せると、それだけで暖かくて幸せでたまらない。
「捲簾」
思わず名前を呼ぶと、捲簾は微笑んで俺を見てくれた。
何を言いたかったわけでもなく、思わず名前を呼んでしまっただけだったけど、捲簾は何も言わずにまた俺にキスをしてくれた。何度も何度も重ねられる唇が、何より捲簾の気持ちを表している気がする。
「悟浄」
微笑んだままの捲簾が、1cmっていう距離で俺を呼んだ。キスで閉じていた瞳を開いて捲簾を見ると、捲簾は満足そうに笑った。
「愛してる」
言葉と共に降ってくる唇が吐息すら奪うかのように深く重ねられる。
俺も、愛してるよ。
言葉にならない代わりに腕に力を込める。
優しくて、大人で、でもちょっと変態かもしれないアンタが、俺も大好きだよ。
口内を深く犯されながら、催促するように腰を揺らすと、それに気付いた捲簾が動きを再開した。
大好きだから、捲簾がもっと欲しいから、だから今は二人で狂お?
骨の一本も残さないくらい、貪り尽くして欲しいから。



結局、ただでさえヤバかった身体は当然限界を超えて、俺が目を覚ましたのは……てか、意識を取り戻したのは次の昼だった。ションベンしたくなって目を覚ましたんだけど、ぼんやり起き上がろうとしたら起き上がることすらできなくってビビった。上半身はまだ動かせないこともねぇけど、腕はものすごく重いしダルいしで思い通りには動かねぇし、下半身に至っては思ってから実際に身体が動くまでに間がある。しかも腰が超痛い。ついでに身体中ギシギシしてる。
……けどションベンしてぇ。このままじゃフツーに情けないカンジで漏らす。
当然のように部屋に捲簾の姿は無い。でも一人で行くのは不可能だ。つーわけで、ダルい手を伸ばしてサイドボードの上のスマホで電話を掛けてみた。捲簾に。
『目ェ覚めた?』
1コール鳴り終わる前に出てくれてビックリした。
「覚めた。あのさぁ、トイレ連れてってくんね?」
『あぁ』
言葉と同時に部屋のドアが開いて捲簾が入ってくる。
「オハヨ」
そう言って俺のデコにキスしてから、捲簾は俺をそっとお姫様抱っこした。お姫様抱っこて。確かにションベンしてぇから下手な抱え方されたり手荒にされたら困るけど、なんで。つか、お姫様抱っこ率高くね? クセなの? しかも、同じような体格のヤツを抱えてんのに危うさの欠片もない。どんだけ鍛えてんだか。
トイレまで俺を運んでくれた捲簾は、便座に俺を下ろすとなぜか自分もその場にしゃがんだ。なんで? 出てけよ。
「しねぇの?」
不思議そうに聞くな。むしろ俺が聞きてぇよ。
「アンタやっぱスカトロ好きだろ……」
「イヤ、んなこと無かったんだけど何でだろうな。お前のは見てぇわ」
うーわ。
「出てけ、変態」
「ひっでぇの」
ジト目で見ると笑いながら捲簾はソレでも一応トイレから出ていってくれた。帰りのことがあるから外で待機はしてるみてぇだけど。
必死こいてパジャマと下着をズラしてションベンしてると、扉の向こうから捲簾がのんびり話しかけてきた。
「お前のバイト先には勝手にしばらく休むって連絡入れといた。あと八戒にも」
「あ、サンキュ」
「だからしばらくウチに居ればいいよ」
「…………ん。サンキュ」
服を直して水を流すと、その音で捲簾が扉を開けてまた俺を抱き上げてくれる。洗面所を経由してベッドに俺を下ろした捲簾は、すぐに部屋を出て、今度はイロイロ乗せた盆を持って戻ってきた。
「腹減ってるだろ? 一応消化の良いモノにしたけど、物足りないかもしれねぇから色々作ってみた」
一般家庭ではあまりお目にかかれないような妙にデカイ盆に、土鍋やら小鉢やらが乗っている。それを部屋に置かれていた簡易テーブルに置くと、捲簾はスポーツドリンクのペットボトルを開けてグラスに注ぎ俺に渡してくれた。普段は水かフレッシュジュースかコーヒーなのに珍しい。あ、でも飲み物見たら急に喉が渇いてきた。
思わず一気に飲み干すと、すぐに捲簾はお代わりを注いでくれる。
「一気に飲むよりゆっくりの方が吸収いいからな」
苦笑しながら言われてペースダウンすると、今度は捲簾は土鍋の蓋を開けた。ふわりと湯気とイイニオイが舞い上がる。
「店出てからだと、1日半くらい飲まず食わずだった計算になるからな」
1日半……。けど、最後半日以上は俺爆睡してたから、意外と誘拐されてた時間は短かったのかもしれない。助け出されたのは昼間で、ヤツが捲簾との待ち合わせ時刻に13時を指定してたからそれより前に捲簾は来たってことで、俺が店を出たのが午前2時過ぎだから、しょっぱなの意識失ってた時間もあったワケで、マジで捲簾物凄い早さで来てくれたんだな。
そんな捲簾は茶碗に土鍋の中身をよそって別の小さな盆に乗せ、小鉢と箸と木のスプーンも乗せて俺に渡してくれた。
「ただのオジヤだけどな。後、角煮とエビと青梗菜の中華炒め。食えるなら食え。無理はすんなよ」
「サンキュ」
持ってたグラスを置いてスプーンを取る。スッゲ旨そう。けど、あれ?
「コレオジヤっつーの? 雑炊じゃなくて?」
土鍋に入ってたそれを思わず一混ぜして聞くと、捲簾が笑った。
「雑炊の仲間なんだけどな。方言って説もあるし諸説諸々あるんだけど、こういう味噌とか醤油なんかで味付けされたのをオジヤっつーの」
「へぇ」
確かに掬ってみると色が付いている。ついでに卵も入ってる。あと野菜も。思い出したように空腹感が増し、早速口に入れるとふわりと広がる出汁と醤油の香り。旨っ! 原形をとどめるギリギリのトコまで煮込まれてる米が噛まなくても溶ける。飲み込むより早くスプーンで次を掬って一気に平らげると、捲簾が笑いながら茶碗を持ってってお代わりをよそってくれる。その僅かな時間すら我慢できずに角煮に手を伸ばす。オジヤが呼び水になったのか腹が減りまくって堪らない。大きめの角煮を箸で摘まみ丸ごと口に放り込むと、じわっと旨味が口内に広がった。肉の味とタレの味ととろける脂身の甘さが超絶旨い。こんな旨い角煮が食べれるなんて、俺今スッゲェ幸せ〜。
「ホレ」
捲簾がオジヤをよそった茶碗を差し出してくれたからそれを奪ってまた一気に平らげる。空腹に旨いメシって最強だと思うんだ。また捲簾に茶碗を渡し今度はエビと青梗菜を掴む。口に入れるとエビのプリプリした歯ごたえと青梗菜のシャキシャキとした食感に塩味の中華あんがトロリとしっかり絡んでてコレも旨ぁ!
また差し出された茶碗を持ってモグモグしながら幸せに浸っていたら、不意に頭を撫でられた。ので、口を動かしたまま視線だけで捲簾を見ると、捲簾はものすごく優しい目で微笑んでいた。
…………なんか、テレるんですけど!?
ごまかすように視線をメシに向けてひたすら箸を動かす。
「なぁ、悟浄。あのさ、ソレ」
ピンポーン。
捲簾が何かを言いかけた瞬間、チャイムの音が響いた。うわ、捲簾の家のチャイムの音って初めて聞いたわ。てか、来客なんて初めてだ。
「……ちょい待ってて」
ため息を吐いて部屋を出る捲簾を見送り、することも無いので食べることに集中する。したらあっという間に茶碗の中身は空になった。そもそも捲簾が少な目でよそってくれてたし、米もふやけて体積増してるから見た目より食えるんだよな。仕方ないからダルい身体を動かして簡易テーブルの土鍋をひっつかむ。もう大分冷めてて持てないほどじゃない。でも蓋してあっから中はほどよくホカホカ。勝手に土鍋の中身を茶碗によそって食べていたら、ドアが開いて捲簾が戻ってきた。けど、一人じゃなかった。
「こんにちは、悟浄。具合はどうです?」
「天蓬」
捲簾の後ろからひょっこりと天蓬が顔を出した。いつものニコニコ笑顔でひらひら手を振って室内に入ってきた天蓬は俺の手元の土鍋を見た途端声をあげた。
「あー! いいな! 捲簾のオジヤ僕も食べたいです!」
「ゴメン今ちょうど空になったトコ」
なんとなく奪われそうな予感を感じて慌てて最後の角煮も口に入れてしまうと、天蓬がガックリと肩を落とした。
「僕の角煮……」
「お前のじゃねぇよ」
呆れたようなツッコミを捲簾が入れる。てか、天蓬いつもリアクションデカイけど、コレまさか地だったりしねぇよな。サービス精神旺盛なだけだよな? 思わず二人をじっと見てると、そんなテンションの高い天蓬と対称的に、捲簾のテンションが妙に低いことに気付いた。普段は天蓬程じゃないにしても捲簾も結構テンション高いんだけどな。
首を傾げて複雑そうな顔をしてる捲簾を見てるとその後ろから見知ったヤツが部屋に入ってきた。
「…………八戒?」
「あ、悟浄。こんにちは」
知らない人間に囲まれて知らない家に邪魔してるって状況に戸惑った顔した八戒が、俺を見てホッとした顔になる。
「心配しました。貴方が居なかったらどうしようかって」
イヤ、そこは知り合いがいて良かったじゃなく俺の無事を喜ぶトコじゃね……? ちょっと複雑な気持ちになりつつ目の前の盆と土鍋を捲簾に渡すと、捲簾は簡易テーブルごとそれを部屋の隅に置いた。
そういや捲簾は八戒になんて連絡したんだろう。もしかしたら誘拐うんぬんは言ってなくて、捲簾の家にいるってだけしか言ってなかったのかも。ならこの八戒の態度も解らないではない。が、だったら八戒はここに来ないような気もする。
かといってストレートに聞いたら墓穴だよな。チラリと捲簾を見ると相変わらず捲簾は固い顔しているし。
「悟浄、身体は大丈夫なんですか?」
ベッドの側まで来た八戒が心配そうにそう聞いてくる。つーことは誘拐されたことは知ってるってことか。さすがに何されたかまでは捲簾も天蓬も言ってないだろうし。
「ん、平気。心配かけて悪ィな」
いつもの笑みを浮かべてそう言えば、八戒は俺をまじまじと見て目立つケガが無いのに安心したのかホッと息を吐いた。
「僕は別に……。まぁ、心配はしましたけど」
心配してくれたのか。……なんか、チョットくすぐったいかも。思わずテレ笑いを浮かべると、それを見て八戒も苦笑した。
と、意を決したように捲簾が口を開く。
「八戒」
途端に八戒の笑みがスッと冷ややかなものに変わる。笑顔だけど、笑ってるけど笑ってない、営業用ですらないヤツ。ヤバい、これマジギレしてる。
「……ああ、今回の一件は貴方の不手際でしたっけ」
止めたいけどどうしたら八戒をなだめられるのか解らなくて口端をひきつらせている俺の前で、捲簾がベッド脇まで来て膝をつく。そして両手をついて八戒に頭を下げた。
「今回の事は全部俺の責任だ。悪かった」
「…………」
「ちょ、捲簾のせいじゃ…」
「オマエは黙っとけ」
止めかけた俺に鋭く言って、捲簾は土下座したまま口を開いた。
「コイツをこんな目にあわせちまったのは全部俺のせいだ。謝って済む問題じゃないのは解ってる。なんでもする。責任は取る」
しばらく無言で床に土下座している捲簾を冷ややかに見下ろしていた八戒が、スッと笑みを消して捲簾を見下ろした。
「…………本当に何でもしてくださるんですか?」
「する。コイツと別れる以外なら何でもやる」
キッパリ言い切った言葉に、捲簾の覚悟と気持ちが見えた。
…………捲簾。
沈黙が落ちる。八戒の言葉を黙って待つ捲簾から八戒へ視線を向けると、八戒は冷え切った無表情のまま捲簾を見下ろしていた。天蓬はもちろん、俺も何も言えなくて黙って八戒の言葉を待つ。
長くて重い沈黙のあと、やっと八戒が口を開いた。
「じゃあ、一つだけ」
どんな無理難題を言うのか気が気じゃない俺の前で、八戒は静かに言った。
「悟浄を幸せにしてください」
「…………ぇ?」
びっくりして目を見開く俺の前で、八戒が捲簾をじっと見ている。
「僕が言いたいのはそれだけです」
俺を……幸せに……?
呆然とする俺の横で捲簾が顔を上げた。そしてひどく真面目な真剣そのもの顔で八戒をじっと見据える。
「約束する。絶対にコイツを幸せにする。……サンキュな、八戒」
そう言ってふわりと笑った捲簾の顔が、幸せなんだか悲しげなんだか解らないなんだか泣きそうな、胸をつかれるような笑顔で、何も言えなくなる。
「礼を言われることは何もしてませんよ」
ふいっと横を向いて八戒がそっけなく言うと、今まで黙っていた天蓬が八戒に後ろから抱きついて笑った。
「カッコいいですねぇ、八戒」
「うるさいです!」
…………あの八戒がペース乱されてる。天蓬すげぇ。
て、そうだ。俺まだ天蓬に礼言ってねぇや。
「天蓬もアリガトな。助けに来てくれて」
「いえいえ。どういたしまして」
楽しそうに笑いながら八戒から手を放した天蓬がベッドに寄ってくる。
「そういえば、悟浄。面白いことを教えてあげましょうか?」
「面白いこと?」
「貴方を助ける時、イキナリ捲簾だけ来たでしょう?」
「うん」
「あれね、本当は合図と同時に僕と捲簾が二人で突入の予定だったんです」
「ぇ?」
「ちょ、天」
「捲簾が貴方の場所を確認できたら、合図して、僕が玄関から、捲簾が貴方のところっていう手筈でね。なのに捲簾、貴方を見つけた途端僕に合図もしないで一人で特攻しちゃってね」
「え? え?」
びっくりして捲簾を見ると、捲簾に思い切り顔を背けられた。けどその頬がほんのり赤い。
「あの状況で合図なんかできるかっ」
ボソボソと言い訳のように吐き捨てた捲簾を見てクスクス笑いながら天蓬は俺の頭を撫でた。
「貴方が誘拐されてからの捲簾は見ものでしたね」
「天蓬! もう黙れ!」
「ハイハイ」
頬を赤くしながら怒鳴る捲簾に、天蓬が笑いながら肩をすくめる。
俺はもうどう反応していいのか解らなくて視線を彷徨わせた。
そんなに心配してくれたんだ……。
嬉しいやら申し訳無いやら恥ずかしいやら頭ン中ぐっちゃんぐっちゃんだ。
「あー…えっと……、あ、そいえば良く俺の居る場所解ったな。電話で相手の目星ついたとか?」
話題転換したくて思いついたことをそのまま口に出すと、少し落ち着いたらしい捲簾が立ち上がった。
「いや、声だけじゃ誰だかわかんねーよ。大体アイツ初対面だったし」
「え、じゃあなんで」
ぴしっと捲簾の動きが止まる。
「…………それはだな、あー……ケータイのGPS」
「電源落とされてたケド?」
「…………」
捲簾が黙ってしまった。珍しいな、捲簾がバレバレの嘘ついてごまかすの。もしかしてさっきの動揺がまだ残ってるんだろうか。
と、スススっと俺の方に近づいてきた天蓬が何でもないことのようにサラっと告げた。
「捲簾、貴方に黙って発信器つけてたんですよ」
「へ!?」
「ちょ! 天蓬!!」
焦った捲簾が天蓬を止めようと手を伸ばすが、天蓬はのらりくらりとそれを避けて意地悪そうに笑っている。
「あ、そういえば捲簾最近身の回りに注意って言ってたから、もしかしてあんなときの為に……」
「違いますよ。捲簾は単に貴方が何処に居るかだとか、誰と会ってるかだとか何を話してるかだとかを把握したかっ」
「まだ発信器しかつけてねぇよ!」
「………………捲簾」
「あ」
なんだろ……。天蓬がすごいのかなんなのか、……こんな捲簾初めて見たわ。今まで大人なカッコイイ面しか知らなかったからギャップがちょっと……、ちょっと……。
「イヤ、これはだな」
「嫌ですねぇ、所有欲の強い恋人って」
「天蓬!!!」
怒鳴られても一向に気にしない天蓬はベッドサイドの俺のスマホを持ち上げて、電源を繋ぐ穴の蓋を指差した。
「ちなみにコレがそうです」
「え、コレ? 初期パーツじゃねぇの? つか、こんなちっこいのが?」
「ウチの社特製の高性能さんですよ〜。これならまずバレないし携帯の電源を落とされても独立して動いているのでへっちゃらです」
「へぇ〜……」
すり替わってることにすら気付かなかったわ。色も同じだしカタチも同じ。つか、こんなモンすり替えられてるなんてそもそも思わないもんな。
しみじみソレを眺めていると、バツの悪そうな捲簾が頭を掻きながら口を開いた。
「黙って仕掛けて悪かった。すぐ外すから」
俺のそばまで来てスマホを受け取ろうと手を伸ばした捲簾は、なんかホントに、イタズラがバレたガキみたいな顔してて。それがなんだかものすごくかわいくて。
「べっつにいいよ」
「へ?」
「つけといてイイよ、発信機。捲簾がつけたいんならマイクとか録音器? なんかもつけていいぜ?」
出された手にスマホを乗せると、びっくりした顔をしてる捲簾の横から同じくびっくりした顔の八戒が俺に聞く。
「貴方本気ですか? そしたら家での会話も、女性とのアレコレも全部筒抜けになりますよ? というか、貴方束縛されるの嫌いだったじゃないですか」
「んー…」
確かに束縛されるのは嫌いだった。自分のモノみたいに言われんのもヤだったし、人間関係や行動を把握されんのは死んでもゴメンだった。でも。
「捲簾にならいっかなって」
笑ってそう言った俺に、八戒が唖然とする。
捲簾になら、別に構わないって思うんだ。
全部把握されても、束縛されても、なにされても、捲簾にされるなら嬉しいから。
だって、それは、それだけ俺を思っていてくれるってコトだから。
「あのさ、捲簾」
まだスマホを乗せられた姿勢のまま固まっている捲簾の指をそっと掴む。
「すぐには無理だろうけど、俺がんばるから。アンタを信じられるようにがんばるから。だから俺を捲簾の恋人でいさせて?」
上目遣いで小首を傾げて捲簾に聞くと、捲簾はさらにびっくりした顔をしてから、幸せそうに笑った。
「バァカ。何があったってお前は俺の恋人だよ。ぜってぇ離さないからな」
そっと手を伸ばし、捲簾が俺を抱き締める。身体が辛く無いように優しく抱き締められて、すごく暖かい気持ちが流れ込んでくるみたいだ。
「絶対幸せにするから。そんで、幸せになっても離さねぇからな」
囁きながら頭を撫でられて、すごく幸せな気持ちになって、胸が苦しくなって、それが溢れるようにホロリと涙が零れた。
八戒も天蓬も居るのに、捲簾に抱き締められてボロボロ泣いてるなんて恥ずかしいカモって思うけど、暖かい気持ちが止まらないように涙も全然止まらなくて、捲簾に縋り付く。
やっぱ、俺、アンタが大好きだ。
「なぁ、捲簾」
「ん?」
暖かいこの場所に、ずっと居させて欲しいから。ずっと一緒に居たいから。そんで、絶対二人で幸せになりたいから。

「なぁ、もっと、ぎゅってして」



-FIN-







花吹雪 二次創作 最遊記 貴方の腕で抱き締めて