FATE


1.プロローグ(side:天蓬)


『自分が死ぬ事を知っている』

当たり前のことだと他人は言う。
人間なんだから、生きているんだから、そりゃあいつかは死ぬだろう。そんな事はみんな知っている、と。
だけど、それは本当にそうなんだろうか。
解ってないとは言わない。でも、本当にみんなそれを意識して生きているんだろうか。
僕は、自分が死ぬことを常に念頭に置き、むしろそこに向かって生きている。
だって僕は未来では死んでしまうから。
まぁ、誰だって最後は死ぬんだけど。
でも、その最後が、いつなのか解らずに生きている他人とはちょっと違うかもしれない。
僕に取って、その最後は近い未来。
28歳。
多分、あと半年くらい。
正確な日時までは解らないけれど、状況は解っている。
月が辺りを照らす路地裏、人影は僕とその人だけ、そして死因は絞殺。
時々僕は未来を確認する。
その、死の事実を、ただ確認する。
そして、その度、空っぽになる。
未来に変化は無い。
僕の時間はそこで終わる。
最初から解っていた事実。
人はいつか死ぬ。
それが僕はたまたま近かっただけの話。
そして、それを知ることができていただけの話。
だから、僕は、自分が死ぬ事を知っている。





花吹雪 二次創作 最遊記 FATE