Theater Reports Top
トップページへ戻る
Theater Report #66
    

16.Feb.02 19:30
 “The CRUCIBLE”
 今週の火・水曜日にリハーサルを見学させて頂いた作品です。サウンド・デザイナーのScott Myers氏、アシスタントのRobin、オペレーターのClayに感謝致します。

 宗教的因習への抵抗を扱った内容だと思う。アーサー・ミラー1953年の作品で、NYに来て最初に観たMUSICAL「Kiss Me Kate」をやっていたマーティン・ベック・シアターでこの年の1月に初演された。と資料にある。アーサー・ミラーなので邦訳も出ていると思う。然し私は読んだ事がないし、邦題も知らない。ご存じの方がいらっしゃいましたらお教え下さい。

 マチネに続いて重い話である、とリハーサルを観ていた時も今日見始めた時も思ったが、観ている内に実は喜劇ではないか?と言う疑問が湧いてきた。

 話の舞台は1692年のイースタン・マサチューセッツの小さな村。時代的には医学より呪術の方が権威があった時代というか、医学と呪術が分離していなかった時代の話である。
 兎に角大変な時代のトンでも村の話で、人形を持っていたら呪術による殺人犯にされそうになったり、自分が悪くない事を主張するために(そういう風に見えた)悪魔が乗りうつってる振りをしたり、神が乗りうつっている振りをしたり、大体話の始まりから病気の娘を直すためにエクソシスト(悪魔払い)を呼んで(尤もこの子は何かが乗りうつって空を飛ぼうとして怪我をしたらしいがその割には走り回ったりもする)悪魔払いをするのだがこれも少し笑わせてくれる。宗教観の違う私がそう思っているだけだと思っていたら、アメリカ人も結構大笑いしている奴が多い。もしやこれは喜劇なのか?話が進む内に結構みんな大笑いしていた。リハーサルを観ていた時も笑いを押し殺している奴はいたが、押し殺して笑っているので他の事を笑っているのかと思っていたんだが、どうやら古い宗教的因習や現代から考えれば時代錯誤の悪魔払いや呪術を笑っていたらしい。
 さて話は最終的に人殺しをしてもいないのに自分の宗教観を通して、古き因習に抗議するために死刑になっていく男をヒーローとして扱った感動のLastSceneを迎えるんだが、正面の壁がラストに轟音と共に崩れ落ちる所を観ていると「おお凄い!」という思いもするが同時に「ちゃんちゃん」という音も聞こえてきそうでどうもシリアスな宗教劇に見えなかった。
 大体50年前の宗教的作品を今上演してリアリティはあるのだろうか?果たして50年前でさえこのストーリーにリアリティはあったんだろうか?矢張り喜劇として書かれたんではなかろうか?見終わった印象は「金を掛けた大掛かりなモンティパイソンの出来損ない」という感じであった。もっとチープに作って、もう少し臭い演技をした方が笑えて良いように思う。演技自体は結構大仰なんだけど、リアリズムを求めすぎだと思う、もし喜劇であるならば。演技がリアリズムを求めているから重く難しい宗教劇に見えてしまうんだと思う。そうなのかも知れないけど。

 舞台装置、照明、音楽、音響凡てのスタッフは実にいい仕事をしていて、このもしかしたら喜劇かも知れない重厚な宗教劇を重厚で神聖なものに作り上げている。問題は台本と演出の意図である。この2つが謎を呼んでいるのである。

 私がBOXOFFICEに行った時には$85の一番端っこしか残ってない程売れていたし、Producerは客を入れる自信が大有りなんだろう音響操作を「客席を潰すのが勿体ない」と言う理由で客席でやる事を許さず、BackStageでやらせていた。音響さんは辛いのである。終演後Robinにあったらぼやいていた。然しこの舞台はO2Rを使用しているので非常にコンパクトで客席を5席潰せば音響Spaceは確保出来るのだが、その5席1Stageに付き$425の売り上げが落ちるので駄目だと言われたとの事であった。確か120StageOnlyだと思ったけどProducerは凡て満席の皮算用らしい。本当にそうなれば$51000なので確かに大きいが、果たしてそんなに上手く行くんだろうか?人気俳優(主演のLiam Neeson は登場した瞬間拍手が凄かったという人気俳優です)と名作、上手く行きそうではあるが本当に上手く行くんだろうか?脇も有名人気俳優女優で固めているみたいだけど、私には分からない。私には出来損ないのモンティパイソンにしか見えなかった。

 Robinはマイクの音が大き過ぎなかったかと気にしていた。「はい少し大きかったです。1階席では殆ど気にならなかったけど、1階席の音から判断すると2階席は少し大きかったように想像されます。」と言ってやりたかったが忙しそうだったので私の英語で無駄な時間を取らせなくても本人も分かっているんだからと黙って帰ってきた。
CRUCIBLE 仕込み図 & Photo
CRUCIBLE 仕込み図 & Photo