10/02

 本日も250kmほぼ真っ直ぐ南下してLahrの街にやってきた。午後1時にならないと劇場スタッフが現れないと云う事で比較的ゆっくりやってきた。途中ジャスミンがマクドナルドのある一画に入ったので、時間に余裕もあるしマックでお昼かな?と思ったら道を間違えただけであった。劇場には12時半頃到着。30分も余裕が有るんだから昼ご飯食べさせてよ!夜食べられるかどうか分かんないんだからさあ!どうもドイツ人、特にこの業界の人間は昼を食べる習慣があまり無いらしい。ピーターもジャスミンもスイス以外で昼食を食べている所を見た事がない。あの昼食は、スイス人スタッフの習慣に付き合ったものなのかも知れない。嗚呼何て奴らだ、全く!

 昨日ジャスミン曰く「明日の劇場はもっと大きくて良い劇場よ。」昨日ピーター曰く「明日の劇場は幅も奥行きも高さも此処より少しだけ大きい」
 ジャスミンの言葉ではそこそこの劇場みたいだけど、ピーターの弁では少しマシなだけらしい。さてどちらでしょうか?
 ピーター正解!確かに全体的に一寸大きくてダンスエリアは確保できるが袖中などは少々苦しい。しかも袖幕がない、東西幕だけ!出入りしやすい様に東西幕を少し開けておくと客席から袖中が丸見えである。全く何てえ小屋だ!

 本日の不幸指数は昨日より10ポイントダウンの75ポイント、一昨日の95ポイントをピークに不幸指数は下がり傾向にあります。然し明後日不幸のぶり返しが予想されますので油断は出来ません。

 本日も緞帳は手引き。勿論自分でやらなければいけない。ドイツでは、緞帳の開閉は舞台監督の仕事なんだろうか?然し手引きはやめて貰いたいなあ。
 本日は本番中、第2部の途中で音響卓が「バツ!バツ!」と云う如何にも接触不良が接触したり離れたりする様な音がした。どうもミキサーのフェーダーに触ると出る!全く何て事ったい!ピーターの話ではアース関係らしい。ピーターは悪びれる様子もなく「この劇場だけだ。心配ない。」というようなことを云っている。本当かよ、インプットのOnOffボタンとMuteボタンの区別も付かない奴が!でもまあ代替えの機材がない以上暫くはこれで行くしか有るまい、私に選択の余地はないのだ。嗚呼哀号!

 舞台の受けは本日も最高に受けた。出来も舞台が広い分ダンサーも伸び伸び踊れていたし良かったと思う。それだけに音響のトラブルが悔しい。

 此処には書かないが照明だって不幸は相変わらず続いている。S曰く「普通の小屋に生きてえー!」

 ホテルへ帰る前にジャスミンが「何か食べたいか?」と聞くので「イエス」というと「マクドーナツで良いか?」という。勿論「イエス」と答えた。本日は温かい夕食に有り付けたのであった、マックのハンバーガーだけど。これが朝ご飯以来の固形物。一寸不幸かな。

 明日はホンの130km!余裕!でも劇場は午後1時にならないと入れない。チッ!

左上は、舞台から客席を見たの図。

右上は、客席後方から舞台を見た所。
 上2枚の写真でも判る様にこの劇場も客席が上下シンメトリーではない。見ている側にはあまり関係ないかも知れないが、舞台に立っている方からすると舞台のセンターが非常に判り辛く、自分の立っている位置関係がよく判らない。困ったものだ。
 何故過去の劇場の客席は、(私から見ると)無意味に仕切って有って丸で迷路の様になっている。思った様に行きたい席に行けない!


左の写真は劇場の入り口。“SAMURAI”のポスターも見える。

初公開!これが機材車だ!
これが今回の機材や衣装その他を運んでいるトラック。結構デカイでしょ。ギアは8速まである。
運転するのは勿論ピーターである。

トラックの横に立っている女性がジャスミン。
トラックのドアに書かれた文字。
一番上は差しあたり
「旅の一座」
辺りの意味であろう。

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10/03

 約130km北北東へ上がってMuhlackerの街にやってきた。街の読み方はドイツ人訛りで「三浦かー」と言ってみて下さい。大体合ってます。午後1時にならないと劇場スタッフが現れないと云う事で一寸早めについてランチを食べる事にした。日曜日でやっている店も少なかったが、中華料理屋に入って焼きそばを注文した。Sはチャーハン、ジャスミンは豆腐入りと野菜の炒め物。美味くも何ともなかったがこちらに来て以来初めての醤油味、私は別段気にしなかったがSは醤油とご飯に感慨深げであった。日本人と云うか亜細亜人はアミノ酸中毒らしいので醤油が切れると体調を崩したりするらしい。私はアルコール以外の物は大概暫く切れても大丈夫!だと思う。

 本日の劇場は、間口が広い!15mもある(日本では広い方ではない)!こちらに来てから特に此処2・3日の狭さからこの程度でも途轍もなく広い様な気がする。嗚呼無情!(「ああ、なさけない」と読んでね)
 然し奥行きは7m位で立っ端は低い(尺で申し訳ないけど)16尺位じゃないかなあ。小さめの歌舞伎の舞台を見ている様な感じ。

 照明的には、本日も前明かり使えず。奥行きがない上に空いているバトンの関係で4本のサスが4m位の間に入ってしまって、バトンを変えてる意味があまり無い。等々本日も色々ありました。
 音響的には、ノイズ乗りっぱなし!それも尋常じゃないレベルで。勿論調光ノイズもガンガン乗ってます。「みんなー!乗ってるかー!」「ブーーーー」「劇場のミキサーは途轍もなく古いテレフンケンだぜ!」「ヴェーーイーー!」「劇場のコネクターは見た事のない形だぜ!」「ウギョーーーー」「しかも途轍もなく古いぜ」「ヴォワーーーーンンーーー」
 舞台的には持ち込みのマットだけでは間口分引き切れない。但し劇場にあるわけではい。端はマット無しでした。袖幕の幅がない。何で間口があんなに有るのに袖幕はこんなに幅がないんだろう。客席が異様にワイドなせいもあって袖中は丸見えである。設計者の頭の中が見てみたい。深くは考えないタイプなんだろうなあ、きっと。
 本日も緞帳は手引きであったが、若者が「ピーターに何か手伝え。髭のあんちゃん(私ね)に聞いて云われた事をやれ。」と云われてやってきたので、緞帳を担当して貰った。一寸楽が出来ました。
 この劇場の最大の欠点は、何と言っても搬出入のし辛さ!搬入口は4階。トラックの着くのは1階。しかもトラック用のプラットホーム無し。トラックから一旦地面のレベルに降ろして、搬入用エレベーターで1階から4階まで上げて、エレベーターを降りた左側の搬入口から搬入。私たちが搬入・搬出をする訳ではないが時間掛かりすぎ。

 舞台自体は結構受けていた様だけど。そんなこんなの不幸な一日でした。

 今日は、明日から長距離移動が続くのでTechnicalDriverがもう一人来た。そりゃあそうだろう幾らピーターが頑丈でも身体が持つ筈がない。今迄持っていたのが不思議な位だ。然しジャスミンはどうやらずっと一人で運転するらしい。大丈夫なんだろうか?取りあえず明日は480km!北上致します。

 ジャスミンが早く寝ると云う事でホテルまではピーターのトラックで送って貰った。どうやらピーター達はそのまま北上していった様だ。ピーターは今迄もトラックの中で寝て移動していたらしい。恐ろしい事である。

 ホテルに入ってバーに行ったらやってなかった。部屋に戻ってミニバーのビールを呑もうと思ったら、メニューしかなくてミニバー自体はなかった!嗚呼、嗚呼、嗚呼何て不幸なの!いったいどうなってんだ!責任者出て来んかい!!

 本日の不幸指数は、昨日より15ポイントアップの90ポイント、一昨日の95ポイントをピークに不幸指数は下がり傾向にありましたが、ホテルのミニバーがメニューだけで実態がないなど予想外の展開から一気に上昇致しました。明日は尚、不幸のぶり返しが予想されますので油断は出来ません。


劇場の搬入口から見た街@

同じく搬入口から見た街A
客席後方から舞台を見た所
客席は広すぎてワンショットで撮れないので上手から下手方向です。
これがテレフンケンのミキサー!
ミュージアム行きの貴重な代物!
(正直一寸欲しい)

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10/04

 7時半出発予定の処を2分早く出た。途中ジャスミンのトイレ休憩以外ひた走る。ただただ走る。12時過ぎに480kmの北上を完了し、不幸の街Guterslorに着いた。
 昨日ランチを食べたい!と云ったので今日もランチが食べられる様にジャスミンが配慮してくれた。劇場入り口前に並ぶビストロの一軒でランチスペシャルのパスタ(一寸大きめのラビオリ)を食べた。塩っぱかった。ビールなしでは食べられない。と云うわけでビールも一杯。

 1時になって仕込み開始、劇場に入ったら前回と違いトラスが立っていた。「ゲッ!これから前のバラシ?」と思ったらそうではなく、トラスはそのまま使用。トラスの前面に緞帳が設置されているので前回よりも緞帳が約9尺客席側に出た。これで私は緞帳前でお客さんに見られながら仕事をしなくても済む様になった。間口は少々狭くなったが、袖は、その分広くなったのでダンサーの出・ハケには大変便利になった。
 然しこのトラスは、若干の問題を持っていた。舞台とセンターが合ってない!何と50cmもずれている!正しく謂えばバトン、舞台、トラスなど凡ての物のセンターがずれていてどれを基準に考えて良いか困った。結局ホリに出るシルエットが一番綺麗にバランスよく見える所で決めた。然しまあ何を考えてるんだか!客席の形状からセンターなんかあまり意味無いんだろうけど、全く困った物だ。

 ダンスが始まってからずっと客席は静かだった。前回は此処ではかなり受けていたので心配である。拍手も少ない様だし、前回とは全く客層が違うらしい。どうなるんだろうと思っていたら、カーテンコールでは、すごい拍手が来て受けているのが判った。落ち着いたお客さんだったのね。心配したが受けていて良かった。

 ピーターの話によるとこのツアーでの走行距離は6,400kmに達するそうだ。彼もこのスケジュールはクレイジーだ、と云っていた。同じ街に行くにしても、近い順に行けば大したこと無さそうなのにわざわざ何百qも走って又次の日に隣町に戻ってくる、と云ったスケジュールは何だ!全く!誰だこんなおかしなスケジュールを組んだ奴は。ピーター曰く「俺はトラックドライバーじゃない!照明家なんだ!!(`へ´)フンッ。」

 本日ホテルのバーはやっていないと云う事で、ジャスミンがアウトバーン沿いのガソリンスタンド(こちらではコンビニも兼ねている)に連れて行ってくれて、ビールとサンドウィッチを仕入れてホテルへ向かった。これで今日も何とかビールと簡単な夕食に有り付けた。ジャスミンに感謝。

 本日の不幸指数、トラスの導入など予想外の展開で10ポイントダウンの80ポイント。

 明日は廬森堡公国!明日はどっちだ!

昼食を撮ったオープンカフェから
劇場入り口を望む。

劇場入り口全景。
これを見ても変則な形で会う事が判る。
今回導入されたトラス。
勿論各袖中は黒幕を吊って確保する。
このお陰で上手下手各一つしかなかった
舞台への出ハケがそれぞれ2つ増えた。
舞台が少々狭くなったが
少しだけ使いやすくなった。

下手舞台側から客席。
この日は床にワックスを塗っていた。
見事に物が置いてある所をさけて
ワックス掛けをしていた。
結構いい加減、
と云うか
有る意味不可抗力の点に関して
決して努力しない合理主義か?

初公開!
今回のスペシャル・エフェクト!!
   (本当にそう呼ばれている)
携帯用散り花カゴ。ナイロンの網とベニヤで出来ていて大変軽量、軽過ぎるためガムテープを重り代わりにしてロープを引いた時の戻りを確保している。

桜のない季節に桜の名所に行った時に一寸飾れば花見気分が味わえる!大変な優れものである。

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10/05

 7時半出発。いざ南西へ450qルクセンブルグ公国へ。因みに今日公演のあるルクセンブルグの街Esch-Sur-Alzetteは、ピーターもちゃんと言えないらしい。

 12時頃にルクセンブルグの中心に到着、綺麗な街の写真を一寸だけ撮って18q公害にあるピーターも言えない街に向かう。途中マックでハンバーガーを買っていく。

 劇場は古いが久し振りに劇場らしい劇場にやってきた。そしたらいきなり照明に問題発覚。バトンの最大荷重が100s!と云う事で照明器材が吊り切れないので大幅にカットしなければならない。1サスの機材重量は150s有るらしいので3分の1をカットする事になった。何てこったい全く!

 劇場スタッフは今回の旅の中で今の処最悪で、friendlyじゃない!無駄話の話し声がやたらとデカイ!機材等の扱いが荒っぽい!(これが次の日に面倒を生む事に)
 私もSも苛々しながら場当たりを終えた。そこでさらに問題発生!何と緞帳が閉まらない!電動で開閉する筈なんだが、ボタンを押しても全く動かない。仕方がないのでピーターに「カーテンが閉まらない。」と云うと劇場スタッフもやってきて色々やっていたら閉まった。開閉を数回繰り返してもう大丈夫と云う事で開演を待った。もう此処で私の中には、祈る様な気持ちが芽生えていた。勿論ヤな予感もね。

 嫌な胸騒ぎ見事的中!
 客電を消して、さあ緞帳を開けるぞ!という時に緞帳動かずず!緞帳が閉まらないのは何とかしようもあるが、開かない事には何とも成らない。余程変わった演出ではない限り観客とダンサーの間に分厚い布を挟んだ儘上演するわけにはいかない事は、赤ん坊でも判る。擦った揉んだの挙げ句モーターを切り離して(万が一の時のために予め切り離せる様になっている)手引きで開けて開演した。手引きで開いて良かった。然し客席が暗くなってから3分以上は経っていたと思う。嗚呼今日も不幸の風が吹く。ひゅるるーひゅーーーー!

 何とか不思議な間の後幕を開けてみると結構な受けようである。取り敢えず良かった。

 明日は今回のTour最長距離の乗り打ち!と云う事でジャスミンは早めににホテルへ帰って寝ると云う事で、ホテルへはTaxiで来いとの事。タクシーはセカンド運転手のロッツが呼んで呉れるとの事であったが、呼んだタクシーが仲々来ないので、劇場スタッフの案内で歩いてホテルへ行く事になった。聞けばたった200m、なら最初から歩けば良かったが実際に歩いたら200mは不動産屋表示でもう少しあった。

 本日の不幸指数、劇場スッタフの悪さと緞帳の故障により90ポイント!

 本日はSと同室。ミニバーがなかったのでフロント横のカウンターでビール4杯。フロントには名古屋のNバレエ団のご子息H君にそっくりの男性が居た。

ルクセンブルグ中心街のViewPointから4枚。

舞台から客席。
此処しばらくの中では劇場らしいでしょ。

壁の色が結構凄い!
緞帳も同色!
綱場は3階ほどの高い差の処にある。 オーケストラピットの蹴込み部分。
カーテンが下がっているだけでその向こうは穴が空いている!
結構危険!

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10/06

 7時半ホテルを出発。昨日来た道を丸々450q戻って、さらに東北東に150q!計600q!今回のTour最長の乗り打ち!全く何考えてスケジュール組んでるんだか、因みに昨日ピーター達は8時間掛かったそうな、今日は何時間掛かるんだろう?交代で休んでいるとは言えタフな奴らである。

 ルクセンブルグは大変な渋滞で出るのに此処だけで1時間掛かって仕舞った。ジャスミンは疲労困憊のようで不機嫌!運転を代わってやりたいけどそうも行かないので助手席でウトウトしていた。これが代えって行けなかったかも知れない。彼女は僕に「寝ろ!」と云うんだけどね。

 途中バーガーキングで“ワッパー”を買って車中で食べながら14時到着。昨日の馬鹿不機嫌スタッフのせいもあるが劇場スタッフをフレンドリーに感じる。
 昨日の連中が荒っぽく扱ったせいで照明器材の色が無くなっていたりして不必要に仕込みに時間が掛かる、と共にSの苛々は大きくなる。全くルクセンブルグは大っ嫌いだ、と二人で思う。

 ダンサーのバスは、事故渋滞に巻き込まれて予定より遅めの16時半に到着。

 劇場の間口は8m。狭い!然しまあ奥行きが少々有るので何とか成る。舞台の、緞帳前が異様に広い。困ったモンだ。

 本番前に照明のSとの連絡用のワイヤレスインカムが突然使用不能になる!今日も今日とて不幸の風邪は吹き続く!ピーターが隠し持っていたトランシーバーで何とか乗り切る。嗚呼、何時になったら何事もなく開幕を迎えられるんだろうか?

 お土地柄か?割と醒めた客が多かったが、受ける連中には受けていた。まっ、そんなモンである。

 本日の不幸指数85Point。

客席と舞台。
結構狭い事がよく解る。
舞台の前の方の白い線で囲まれていて一段下がった所は緞帳前の全く使えない所、
もう1本奥にある線が緞帳ライン!
アクティングエリアの客席よりから客席まで約10尺

劇場入り口


入り口、さらにアップ
各部署に連絡を取る交換機。
舞台上手にある。
SIEMENS製。
舞台の上下にある集音マイク。
テレフンケン製に独自にパラボラを付けた物!

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